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2003年07月14日(月)
ズームイン、嘘!


共同通信の記事より。

【福岡市の福岡放送が、5月29日朝に放送された「ズームイン!!SUPER」の中で、スタッフの知人をホームレスの男性の親族と偽り出演させたとして、14日朝の同番組で謝罪した。
 同社によると、問題となったのは「ズームアイ」という特集コーナーで放送された同社制作の「赤ひげ先生奮闘記」。無償でホームレスの健康相談をしている福岡市の医師を紹介したもの。
 あるホームレスの男性が両親へのおわびの手紙を親族に託すシーンで、実際には親族に手紙の受け取りを断られていたため、スタッフの知人が親族に扮して撮影したという。
 職場内で指摘を受け、10日にディレクターがやらせを認めたため発覚。14日朝の同番組内で「一部に事実と異なった放送があった」と謝罪したという。】

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 この事件については、「まあ、そのくらいのことはやってるんだろうね。これってたぶん、『氷山の一角』だよなあ」と僕は思ったのですが。
実際、このくらいのことでは誰も驚かなくなってしまっているのではないでかなあ?
 この番組を僕は観ていないのですが、少なくとも出ている人が本当にそのホームレスの両親かなんて、面識のない僕にはまったく判断がつかないでしょうし。

 もう終わってしまった「ガチンコ」をはじめとして、「あいのり」など、ドキュメンタリー風バラエティの盛況で、メディアにおける「虚構」と「現実」は、限りなく境界不明瞭になってきている印象があります。
 実際、この番組中でのホームレスの人のような、メディアを利用しての「一方的な謝罪」や「一方的な善意」に対して、嫌悪感を示す家族たちは多いでしょうし(たぶん僕もそうです)、それに対して感動の場面を映像化するために身代わりを使うなんてことは、今回が初めてだとは思えません。
 ひょっとしたら、このくらいは「テレビの常識」だったではないでしょうか?

 そういえば、僕が大学時代に、部活の勧誘のために合格発表が行われている掲示板の前で待っていたら、某ローカルテレビ局の人たちが来て、「すみません、喜んでいる合格者が撮りたいんですけど、なにかやっていただけませんか?」と言ってきたのです。
 そこで、僕らは、(もちろんその年の合格者じゃない)大学の同級生を「バンザーイ!」と大歓声とともに胴上げし、それをカメラはとらえました。
 その映像は、その日の夕方に「歓喜の合格者たち」というテロップとともに、地域のお茶の間に流れたのです。

 まあ、そのくらいならたいしたことはない、と言えなくはないですし、僕だって「川口浩探検隊」や「ガチンコ」や「あいのり」に「やらせじゃないか!」とクレームの電話をかけようとは思いません。
 あれは、別に実害があるもんじゃないし(「あいのり」に影響されて、世界放浪の旅に出ちゃった若者とかはいそうですが)、バラエティである限りは、つまらないノンフィクションよりは、面白いフィクションのほうが、僕は好きです。
 
 でもね、こうやって、「嘘があってはいけない」はずのニュース番組に、ミスではなく、確信犯的な「ヤラセ」が横行している、ということは、製作者側が、「バラエティ」と「報道」の境界がわかっていない、ということなんですよね。
 その区別がしっかりできていれば、「ガチンコ」がヤラセだなんて、怒る人はもっと少なくなるんじゃないでしょうか?
 ヤラセをやってはいけないところでヤラセをやるから、逆にヤラセが演出として当然の状況でも、みんなそれが演出であることすらわからない。
 いくら視聴率を取るためとはいえ、ニュースであるかぎりは無視してはいけない掟があるはずです。
 この件自体はたいしたことじゃなくても、「他のニュースでも、同じような『ヤラセ』をやっているかも」というイメージを持たれるのは、致命的なことですよね。
 もう、誰も既にニュースで言っていることが100%の真実だなんて、考えていないとしても。

 お涙頂戴のニセ家族よりも、そのホームレスの人が一生懸命に書いた手紙を家族が「受け取りを拒否した」という冷徹な事実のほうが、はるかに僕の心には訴えかけることが多いんだけどなあ。

 しかし、いちばん迷惑をかけられたのは、「赤ひげ先生」だよね、きっと。