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2003年06月14日(土)
『ブラックジャック』の連載が終了したわけ


「ブラックジャック完全読本」(宝島社)の「BJ秘話」より。

【<『B.J』の連載が終了したわけ>
  あれだけ人気を博した『B.J』が連載を終了したのにはそれなりの理由がある。
 手塚治虫自身「本当はもう少し続けてもよかった」と言っている。だが、こうも言っているのだ。
 「あまりにも制限や制約の多さに、描きようがなくなってしまった」
 いろんな団体や組織から、これを描いてはいけない、あれは描いては困る、という抗議がいろいろきて、しまいにはB.Jは、ただのケガを治す救急医師みたいな立場になってしまい、病気はほとんど扱えなくなってしまったのだ。こうして、名作は終わりを告げたのである。】

〜〜〜〜〜〜〜

 この手の「制約」のために、数々の「名作」たちが、埋もれてきました。
 あるマンガの有名な話で、悪役が「4」の数字を指で出そうとしたら抗議が来て、結局、「パー」(つまり「5」ですね)を出しながら、「4」というセリフを言わせることになったとか。たぶん、指がない人に対する差別、だというのでしょうが、これでは、なぜこれで「4」なの?ということで、かえって変な印象を与えてしまうと思うのですが。

 もちろん、差別表現に対する規制や抗議のすべてが「言葉狩り」だとは思いませんし、中には、どうしてこんなことが書けるの?と思ってしまうような内容があるのも事実です。
 『B.J』はマンガですから、病気の症状もどうしても過剰に表現されてしまう部分もあるでしょうし、実際の患者さんからしてみれば、「私の病気のことをこんなにオドロオドロしく書くなんて!」と言いたくなった回もあったとは思うのですが。
 しかし、『B.J』が虫垂炎やカゼを治療したとしても、やっぱりドラマチックな話にはならないでしょうから、この作品では「病気」というのは、もうひとりの主役でもあるんですよね。
 手塚治虫自身に悪気がなくても、彼が実際に医師免許を持っているということもあり、周りからは過剰に反応されてしまう部分もあるんでしょう。
 僕だって、どうして風俗の人の客の悪口や塾の講師の生徒の悪口は許されて、医療関係者の普通の日記は許されないんだろう?と疑問に感じることはありますが、病気というのは、それだけデリケートな問題なのだろうなあ。
 もっとも、本来はむしろ、どんな業種でも「お客さんの悪口」なんてのは他人に後悔すべきではないと思いますけどね。
 そういう「理念」と「書きたいこと」のギャップは、誰にでもつきまとうもの。
 そういえば、ある作家が、「身内に恨まれるようになって、はじめて『小説家』と言える」なんていうことを言ったという話もありますし。
 
 ただ、こういう無差別な「言葉狩り」みたいなのも、少しは変わってきている部分もあるのかなあ、という気がします。
 現在放送中のドラマ「ブラックジャックによろしく」のNICU(小児救命病棟)編で、ダウン症の赤ちゃんの話があって、僕はそれをマンガで読んだときに、「これは、ドラマでは病名が架空のものになるか、設定が変えられるな」と予想していたのです。
 でも、ドラマでは病名も内容もほとんどそのままでした。
 「病名が差別」なんじゃなくて、「病名に対する差別意識」のほうが問題だという考えが、少しずつでも広がっていったらいいなあ、と僕は思っています。
 
 確かに、『B.J』は、ちょっとイキスギかな、と思うところはあるのだけれど。