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2003年02月07日(金)
「猟奇的な中学生たち」に捧ぐ。


時事通信の記事より。

【東京都世田谷区の公園で路上生活者とみられる男性が少年にナイフで刺されて死亡した事件で、傷害致死容疑で逮捕された同区内に住む私立中学校3年の男子生徒(15)が警視庁成城署の調べに対し、「男性に因縁を付けられた。もみ合いになり、怖かったので反射的に刺した」と供述していることが6日、分かった。
 少年は男性と面識がなかったと話しており、同署は少年が男性と口論の末、偶発的に刺した可能性があるとみて、死亡した60歳ぐらいの男性の身元の確認を急いでいる。】

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 まったく最近の中学生は恐ろしいねえ…なんて呟きが聞こえてきそうな記事です。ほんと、中学生が殺人事件を起こすような世の中、なんてねえ…

 と言いたいところなのですが、本当にそうなのでしょうか?
 この記事を読んで、僕は十数年前のことを思い出しました。
 それは確か、高校3年生の夏休みのこと。
 進学校の全寮制男子校に通っていた僕は、寮生活の息苦しさを逃れるため、博多の某有名予備校K塾の夏期講習に通うことにしたのです。
 それまで寮生活で世間の風に吹かれた経験の乏しい僕にとっては、その2週間は、まさに別世界。自由だなあ、と思う一方、人通りの多い道を歩くのにも緊張していたのです。

 そんなある日、予備校の帰りに、僕が天神駅の地下街をひとりで歩いていると、なんだか人相の悪い50代くらいの男が、僕の横にいきなりやってきて、「お前はさっき俺にぶつかっただろう!」とかいうようなことを聞き取りにくい声で言いながら、僕の横を身体をベッタリ密着させてついてくるのです。もちろん僕は、そんなこと気づいていませんでしたが。
 そのときはもう、僕は怖くて怖くて。

 大きな駅の昼間の地下街ですから、誰かなんとかしてくれてもよさそうなものなのですが、その場に大勢いた人々は、みんな僕の不幸に気がつかないのか無視。
 その男はポケットにずっと手を入れて僕にからんできていたのですが、ポケットの中に、何か凶器でも入っているんじゃないかと不安にもなりました。
 結局、なんとか隙をみて、走って逃げることができたのですが、そのあとしばらく体中が震えていたのをよく覚えています。
 それ以後の夏期講習では、2度とその駅は利用しませんでした。

 今から考えてみるとたいしたことではないのかもしれませんが、あのとき僕がナイフを持っていたら、その男を刺していたかもしれないなあ、とこの記事を読みながら思いました。
 刺す必要はない、逃げればいい、助けを呼べばいい、と言われるかもしれませんが、その場では、やらないと自分がやられる!というくらい切迫した気持ちにもなっていますし、この中学生の言っていることが事実とすれば、暗い中で誰も周りにいない状況で、そんな目に遭ったとしたら…
そして、もし自分の手にナイフがあったら…
相手をそれで刺すというのは、そんなに不自然なことじゃないでしょう?

そんな相手を刺しても結局は自分が損だ、というような予測ができないほど、中学生なんて未成熟なものだと僕は思うのです。
 ナイフなんて持ち歩くな、と言いたいところですが、今の世の中、家のチャイムが鳴ってドアを開ければ強盗に侵入され、固定電話に出ればキャッチセールス。拳銃くらい持ち歩きたくもなる心境は、理解できなくはないのです。

 本当は、可能であれば中学生は逃げればよかった。でも、それができないのが「未成年」なのではないでしょうか?
 何でも大人になってからの価値観で「すぐキレる中学生」と判断してしまうのは、あまりに早計なのではないでしょうか?

 この中学生の話が事実であれば、僕はこの「因縁をつけてきた」男の自己責任が大きいと思います。殺されても仕方がない、とまでは言えないとしても。
 「大人が子供に因縁をつける」ということは、とても恥ずかしいことでしょう。普通の子供は、大人が思っている以上に、きっと大人を怖がっているものです。

 もしこれを読んでいる中高生がいたら、よく覚えておいてください。
 面識のない君たちにいきなり因縁をつけてくるようなバカな大人に立ち向かうのは、本当の勇気じゃない。どうかどうか、争いを避ける勇気・逃げる勇気・助けを呼ぶ勇気を持ってください。
 そんなヤツの命と引き換えにするほど君たちの人生は軽いものじゃないはずだし、ほんとうの勇気を見せなくてはいけない場面が、これからきっとあるはずだから。