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2003年01月24日(金)
『犬屋敷の犬60匹安楽死』、その救いようのない教訓。


読売新聞の記事より

【京都府亀岡市で100匹近い犬を自宅で飼っていた1人暮らしの女性(57)が交通事故で重体になり、放置されていた犬のうち約60匹を大阪府内の動物愛護NPO(非営利組織)のスタッフが安楽死させていたことが、24日までにわかった。引き取り手のあった10匹程度を除く残り約30匹も同じ運命になる可能性がある。

 女性は先月8日、道路脇に停車中、追突されて頭を強く打ち、意識不明で入院した。NPOが世話することになったが、大半は自宅敷地内のプレハブ小屋に押し込められるか、敷地で放し飼いされていて、皮膚病を患うなどして回復の見込みもなかった。

 このため、引き取り手がない犬は、女性の長女の同意を得て安楽死が始まった。週2回、大阪府内の動物病院で5匹ずつ、「せめて人の腕の中で死なせてやりたい」と話すNPOスタッフに抱かれて息を引き取っている。

 女性は4年前から犬を飼い始め、数が増えて近隣住民から苦情が相次いだ。地元の保健所は3年前、女性に注意したが、「飼い方まで指導できない」として飼育実態などは調べていなかった。

 動物愛護法は、業者に多頭飼育の届け出を義務づけているが、愛玩(あいがん)目的の飼育は対象外。このため、指定区域で10匹以上の犬猫飼育を禁止する条例を制定した鳥取県のケースもある。】

〜〜〜〜〜〜〜

 なんとも、いたたまれない話です。
 この犬たちを飼っていた女性、たぶんこれまでも近所とのトラブルがいろいろあったと思われます。たぶんそのときは、「私の家で何を飼おうと、私の勝手!」とか「近所に迷惑なんてかけてない」とか「この犬たちは、私が面倒をみてなかったら死んでしまっている」とか言っていたんでしょうね。
 まあ、一番最後の科白は、確かにその通りかもしれません。

 僕の実家でも犬を飼っていたのですが、その犬が前に子犬を出産したことがあったのです。父親の見当はついたのですが、犬相手に認知訴訟を起こすわけにもいかず、うちの親は、その6匹の子犬たちの貰い手を、ほんとうに一生懸命探していたのを記憶しています。
 欲目もあったかもしれませんが、誰もが一目みたら欲しがるような可愛い仔犬たちだったので、「全部うちで飼おう」と子供たちは他所にあげることに反対していたのですが、今から考えると、もしあの犬たちが、一軒の家でみんな成犬になっていたら、恐ろしいことになっていたと思います。やっぱり、親は大人の判断をしたわけで。
 それにしても、テレビに出てくるような血統書つきでない犬の貰い手を探すというのは、非常に大変なことなのです。今の住宅事情や家庭環境(家に人がいなくなる時間が、昔に比べたら格段に長くなっているでしょうから)から考えても、それはやむを得ないことで。

 この記事を読んで、「犬たちがかわいそう」と僕も思いましたが、動物愛護NPOのスタッフも可哀相です。好きな動物を安楽死させるために、動物愛護団体に入ったわけでもないでしょうに。こんな嫌な仕事を無報酬でやっているわけですから、彼らも被害者といえるでしょうね。
 
 しかし、この飼い主だった女性も、自分の責任ではない不慮の事故で、重体になられているわけで…「犬飼うなら、事故に遭うな」とか「一人暮らしで、動物を飼うな」というのは、暴論でしょうし。
 100匹は、あんまりですが。
 もちろん、安楽死に同意した娘さんだって、母親の年齢からいけば30歳前後くらいだと思うのですが「犬100匹をひきとってください」といきなり言われれば、誰だって悶絶するでしょうし、どうしようもない。

 まあ、最大の被害者は、もちろんこの犬たちなのですが、ひょっとしたら、彼らもこの女性に飼われていなかったら、野良犬として、のたれ死んでいた可能性もあったでしょう。でも、僕が犬なら、自分の運命を弄んだ人間に「せめて人の腕の中で」なんて言われたくないと思います。僕なら腕に噛み付きまくりそう。
 「殺されるくらいなら外に出してくれ、野良犬になる!」というのが、本音なのでは。
 でも、人間サイドとしては、そうしてやれないのが現実。

 結局、人間というのはワガママな生き物で、ときに、こうして「どうしようもなく、ただ、いたたまれない出来事」を引き起こしてしまいます。

 この話から2つだけ学びうることがあるとすれば、まず、この飼い主が100匹も犬を飼うようになった元凶には捨て犬の存在があると思うので、ひとりひとりの飼い主のモラルの向上が必要だということ。
 
 そして、人間いつどうなるかわからないから、急に死んだとしても、極力他人に迷惑をかけないように、いつも身辺の最低限の整理はしておくべきだ、ということです。僕自身も、今死んだら困ることだらけなのですが…

 ああ、それにしても救いようのない話だ…

 メメント・モリ。