猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2016年01月04日(月) 杉原千畝 スギハラチウネ

TOHOシネマズ 15:25〜17:55 139分

 今年の冬はあったかいなあ。冬コミもそうだったけど、デパートとか人の多い室内に行くと暑いぐらい。もっと冬らしい冬をくれ。

 唐沢寿明主演の杉原千畝の映画を見に行こうかどうか迷っている。なんせ139分だもん。よっぽど面白くなきゃ私の膀胱と釣り合わないじゃないか(ボカ〜ン)。でもなんだか周囲の評判がいい。あと、長い映画なら休みの今じゃなきゃ行けない。というわけでえいこらと重い腰を上げて行ってきた。まあ確かに長かったが、ゆったりふかふかシートのプレミア2での鑑賞だったので苦もなし。

 「日本映画で主人公が杉原千畝か。まーたどうせ昔の日本人偉かった! 立派だった! 系の映画だろ」などというこちらの先入観など軽くぶち壊されましたよ! いやー、面白かった! 何せ冒頭からして列車内でソ連の諜報と追っかけっこですよ、これは意表を突かれた。そう、外交官の仕事というのは、諜報なのですね。時は第二次世界大戦真っ只中、日本にとってソ連とドイツの動きがどれほど重要かは言うまでもないこと。日本がどう動こうが欧州に影響を与える部分はそうないけど、欧州の動きは日本にダイレクトに影響する。そういうことを冒頭にもってくるとは、もうこの作り手の心意気について行くしかない。

 ま、実際の杉原氏があんなアクロバティックな活動までしていたかどうかはともかく、前半は007ばりのスリリングな情報争奪戦が描かれてて、ほんとにドキドキ楽しい。結構汚い手も使ったりもして、そういう部分もちゃんと描いているところがまたいい。諜報員の鑑よ。余談だが、映画のエンドロールで参考資料として白石仁章「諜報の天才 杉原千畝」が上がっていた。杉原千畝本として一番メジャーなのは奥様が書かれた「六千人の命のビザ」だけど、「諜報の天才〜」は本の題から推測するに、杉原千畝の諜報としての面を描いているのかな。読んでいないから何とも言えないが。しかしこうなると、杉原千畝がユダヤ人のビザの件について多くを語らなかったのは、彼の欧州での活動の大半がやばいことまみれだったからなのかな。その方が腑に落ちるというか。

 しかし人に言えないお仕事をしている一方で、理想主義者で、祖国への愛というだけではなく人間そのものに対する敬愛を持った男なんだ、という描写もあり、前者と後者が矛盾なく描かれているところがよいですよ。歴史上の偉人ってこういう風に描かないとって言う、お手本みたい。時々うっかり「唐沢寿明かっこいいじゃん」などと思っちゃったりなんかして。こういう描き方って近年の日本映画はあんまりうまくないんだよなーと思いつつ、後で確認したら、監督はチェリン・グラックという、日本育ちのアメリカ人であった。

 千畝の二面性のみならず、リトアニア人、ポーランド人、ドイツ人、ロシア人についても「ある面では被害者であり、別の面では加害者でもある」という描き方をしている。ユダヤ人ですら例外ではなく、千畝が助けたユダヤ人の一人が後に…という展開には、唸るしかなかった。もうこのスタッフで「アドルフに告ぐ」をやって欲しいぞ。

 当たり前だが終わったら真っ暗。大急ぎで帰って太鼓の散歩。晩御飯はすき焼き。



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