僕の、場所。
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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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食卓に並ぶ

「ごはんにしましょ」
「あ、ハイ」
「今日は二人で晩ご飯ね」
「兄さん今日も遅いの?」
「そうみたい。先に寝ててって電話があったの」
「母さんは明日帰って来るんだっけ…」
「ええ。いいわよね、湯布院」
「兄さんもたまにはメシくらい家で食えばいいのに」
「お仕事なんだから、仕方ないのよ」
「まあ、そうですけど」

「いただきます」
「いただきます」

「ね、さっき何の本読んでたの?」
「――ああ。いえ、つまらない小説ですよ」
「あの人と違って本読むのよね、偉いわー」
「偉くはないけど…兄さんは活字嫌いだから」
「そうみたいね。ふふ」
「………」
「あ、それ、どうかなっ? お義母さんに教わったのよ」
「兄さんの好物じゃん。ん、美味いですよ」
「良かったーっ」

「新しい学校、慣れた?」
「ええ、まあ」
「お友達、うちに連れて来ても大丈夫よ」
「――いえ、それは、やめときます」
「あら、どうして?」
「僕も年頃ですから」
「あらあら。難しいのね」
「…この鶏、もう一切れありますか」
「まだあるよ。たくさん食べてねー」

「ども」
「それ、気に入ってくれた?」
「義姉さんのレシピですよね。――美味いです」
「ふふ。ありがと」


夕暮れに並ぶ

「君の好きな人って、だれ」
「なんでそんなこと聞くの」
「興味があるから」
「僕に?相手に?」
「両方」

「教えてくれないの」
「うん」
「なんで」
「いろいろ迷惑かけるから」
「なんで」
「それ言うのも同じ」
「ね、それって」
「なに」
「私――、とかじゃないんだよね」

「…君だって言って欲しかった?」
「そうじゃ、ないけど」
「残念だね」
「それって、どっちの残念?」
「残念ながら君ではない、の残念」
「…残念」
「それは?」
「君が好きな人が私じゃないことが残念」

「じゃあ誰なの」
「君じゃない誰かだよ」
「じゃあ、どんな人なの」
「君みたいにかわいくはない」
「今の、ちゃんと分解して」
「君みたいにかわいい、ということはない」
「…その評価は嬉しいけど複雑ね。かわいい子はキライなの?」
「嫌いなんて言ってない」
「私に気を遣ってるの?」
「いや。かわいいかどうかは基準じゃないと言いたいだけ」

「ねえ」
「なに」
「君ってどうしてそうなのかな」
「そうって?」
「正直っていうか」
「正直は悪いことなのかな」
「良い悪い、じゃないよ」
「じゃあ何」
「嬉しいかどうかよ」
「僕が口に出すのは事実だけだ」
「口に出さない事実はそれ以上なのにね」
「うん」
「ねえ」
「なに」
「よく分かってるでしょ。君の事」
「そうだね。まるで僕みたいだ」

「君は私の好きな人に興味ないの?」
「ない」
「どうして」
「君になら興味はあっても、君が誰を好きだろうと関係ない」
「興味と、好意は、別だものね」
「違う。別じゃない。好意の程度に差があるだけだ」
「じゃあ私にも好意はあるのかな」
「僕は好意をもたない相手と話したりしない」
「そっか」
「うん」
「ありがとう」
「いえいえ」






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フォームからメールを下さった方、ありがとうございました。
しばらく放置プレイでご心配をお掛けしております。
近頃、人生どうにかなっていくものだということを学んでいます。
僕のくだらない呟きに今後ともお付き合い頂けると嬉しいです。


熱に浮かされたまま見た夢は
陶器のような 君の 気持ち良い手のひら
ふやけた視界に美しく
柔らかく微笑んで汗ばんだ頬を撫でる

細い指がもつれて僕の手をとり
軽く口付けた君は 愛しく貴い 僕の女神

ふわり と舞うカーテンの隙間から
遠くの救急車の喧騒が僕に届き
そうして僕は一人の自部屋
汗で貼り付くシャツを脱ぎ捨て
頭痛を顧みず 水を汲む

ひとり がこんな時に僕を包む
傾いた日差しの暖かさ
静かな部屋の優しさ
君がもういない僕の 悲しい今

もう一度会えるだろうか
淡い願いを抱いて また眠る


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