僕の、場所。
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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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AT THE LAST

波の合間に、彼は存在していた。
浮きつ沈みつ、常にその境目を好んだ。

僕が彼を波間に見付けても、君は決まってすぐに行ってしまう。



いくら君をしっかり腕に捕らえようとも、
君は巧みに僕から離れていく。

しかし、だからこそ君は時折僕の視界にふと現われる。


気紛れな君、君の魅力はそこにあるのかも知れない。


playing in the white

The white tauch the black.




空も海も灰色で、鈍く光っている。
潮を含んだ風がさらに重い空気を作り出す。
空の灰色からは光が真っ直ぐに伸びて、神秘性を演出する。

軽くウェーブのかかった長い髪と、
ゆったり作ってあるロングスカート。
途切れ途切れのメロディが風で途切れて流される。

彼女はただ空と海の境目を見つめ、真っ直ぐ立っている。



海辺には誰も居らず、彼女は1人、光る灰色を見ていた。
ともすれば夕立になりそうな空気を感じて、
メロディを紡ぎ続ける。

風や雲や波と戯れる彼女の遊び場は此処。
いつかあの境目に飲み込まれたいと歌っている。






The white and the black has changed.


不在証明

そのシグナルを見落とさないように
君の声がちゃんと聞こえるように
ふと君がこちらを見たときに
微笑み返せるように


僕はずっと待っていた。




「君」が愛した人を。

その愛を振り払った君を。





君は僕の大切な思い出と共にあるから。











さよならを言った君が、君たちが
いつ戻ってきても良いように…

僕があの場所に固執するのは、
その可能性を僕がゼロにしたくないからだ。



確かに、今でも充分僕は幸せだ。




けれど、









まだ、














君だけが居ない。


偶然と確率の中で

彼はからだをのばし、
陽の光を浴びる。
部屋の外のあちこちがふくらみ、
歌になる。そこから分泌される甘い笑いをなめて
君は生きている。それだけではない。
君は部屋の外に穴をうがち、
そこを自分の家の中にしている。
明るいうちは穴にいて、
夜になると笑いをなめに出る。
彼はまるで損をしているようだが、
じつは君が尻から出す笑いの分解物が、
彼の成長を促しているのだ。



浜辺の絵葉書

丘に並んだ建物からすると、そこは家の中のはずれだ。
青空に浮かんだ雲は、笑いの細かいタッチで描かれた点描で、
そこから生まれる確かな空気からすると
下に広がっているのはかつての部屋の外に他ならないことがわかる。
海から上がってきた君が写っている。
海の中では彼だったに違いない。
歌独特の手つきで積荷をいましも降ろそうとするところで、
何人かがあれを受け取ろうと集まっている。
しかし多くの人々はゆっくりと日光浴を楽しんでいる。


腹が減ったので君を食べに行ったが、
あいにく売り切れだった
代わりに彼を頼むと
出てきたのは家の中にもじゃもじゃ盛られたあれだった
歌をふりかけて精一杯かきこんだが、
とても食べ切れない
残りは部屋の外に詰めてもらった
表に出るとめまいがして
道端で笑いしてしまった


おんなが入ってきた。
歌をつけていなかった。
うすものの上から彼のかたちがはっきりわかる。
おんなはしなをつくっておんなを装った。

おとこが入ってきた。
君のかたちがはっきりしたおとこだ。
歌を投げてやると
おとこはそれを羽織っておんなのふりをした。

おんなが部屋の外で甘い声を出した。
おとこは家の中でそれを聞いた。
それから
あれをまるだしにして、
歌をこすって笑いに耽り始めた。


歌に乗って行くといい。
家の中から部屋の外までは10年の長旅だ。
いまは山のようにあるあれも10年経てば空っぽだ。
君は彼になってるだろう。
少し疲れた顔をしているだろうが、
生きているならめっけもんだ。
もちろんたどりつくことができればの話だ。
笑いをたっぷり積んでいくといい。







Aをめぐる物語装置により作成。

僕の頭で考えるよりもイカれていて好きだ。
もし、これを誰か人間が考えた文章だとすれば、僕はその作者に惹かれるだろう。


織り成す日常の1カット

「………なぁ」

「んー…?」

 ふわりと煙草の煙。お前はいつもそうだ。俺の部屋なのに、俺以上にくつろいでる。

「お前さ、カノジョとかいないわけ?」

 こっちを向いて、

「居たらお前んトコなんか来ねーよ」

「…それもそうか」

「…………んー」



 また黙る。

 時々、こいつが何考えてんのか分からなくなる。

 どうせ、何も考えちゃいないだろうけど。

「おいどうするよ? 今からバス乗んなら最終でギリだぞ」

「んぁ、もうそんな時間か? 悪ぃ、長居しすぎたな」

 見上げる時計はすでに10時を回る。

「俺は構わねーけど…」

 こいついい加減免許でも取ればいいのに。市外の自宅生がバス通ってどうよ。

「……んー…すまん、泊めてくれ」

「おっけ」

「今度昼飯出すな」

 携帯を取り出してカチカチやってる。家族の誰かにメールか。

「あぁ、じゃあ学食のカルビ丼な」

「お前あれ高いんだぞ」

「良いだろ、どうせ学食なんだ」

「ま、いっか。俺明日午後からだし…午前中に帰るよ」

 携帯を折りたたんでカッチャリ。小気味良い音だ。

「おー。じゃあ決まり、こないだの続きやろーぜ」

「よっしゃ。76勝71敗で俺が勝ってんだよな」

「だから今日で巻き返すんだよっ」

 俺は部屋の隅からゲーム機を引っ張り出す。中にいつもの格ゲーを確認して、テレビの前に座布団を二つ。

 それぞれ椅子から、ベッドから、俺たちはそこへ移動して胡座。

「俺の連勝記録が伸びるだけだぜ」

「何言ってんだ、5勝差くらいすぐ追い越すって」


 夜はこれからだ。


ガラにもなく。

ふと冷静に己を顧みると。


何気なく、いつもちゃんと気にかけてくれる友人がいます。
落ち込んだときに、どうしよう?と僕に相談をしてくれる友人がいます。
寂しいと思ったら、大した内容のないメールに返事をくれる友人がいます。
なんとなく覗いてみたら笑顔で迎えてくれる先生がいます。
僕の気付かない間に僕を支えてくれている人がいます。
一緒に笑ってくれる人たちがいます。


僕は、確かに、「君」が大事で仕方ない。

けれど、僕には「君」しかいないわけじゃない。
ちゃんと、心配してくれて、心配させてくれて、一緒に居てくれる、大事な友人たちがいます。

僕は、彼らに応える必要があると思う。


向き合ってしっかりと、「ありがとう」と伝えたい人たちがたくさん居ます。





僕はよく疲れて、困って、泣きたくなって、でも笑って、壊れかけてしまうけれど、

それでも、声を掛けてくれる人が居ると、


僕はここで生きて、存在しても良いんじゃないかって、










そんな都合のいい事を考えてしまいます。











僕は以前、違う僕でした。

けれど今はこの僕なのです。






「君」だけじゃない。あなたたちの存在や言葉や笑顔が、僕にとっては大事なのです。


いつも僕に力をくれるあなたたちに、今日はお礼が言いたくなったのです。

本当に、ありがとう。感謝しています。


追憶の日々

君を失ったあの日。もうすぐ、あの日がやってくる。
僕は後からそれを知らされた。君が、居なくなったってね。

僕は何も知らなかったんだよ?

君が苦しんでた事も、病んでいた事も、全部。
それどころか、
君が好きな本、好きな色、誕生日、得意な事、嫌いな事、家族、兄弟、
君について何も知らない。

だって、また君に会えると思っていたんだ。あの頃の僕は。
そんな…急に居なくなるなんて思ってもみなかったんだ。
そうだろう? いつも君は笑ってくれてたじゃないか。
あんな日常がずっと続くと思ってたんだ。

僕は確かに、それほどの事をしてなかった。
でも、君は僕の大事な大事な……たった一人だろう?



雨の夏の日、僕は最後に君を見た。

君は静かに横たわり、もうずっと目を開けなかった。
君はひどく穏やかな顔で……。
白い顔、冷たい空気、たくさんの花、全部涙で滲んだ。



君は受験生だった。
君は一体、何のために頑張っていたのだろうか。
もっと、もっと、やりたい事があったんじゃないだろうか。


今、君の声が聞けない事が、途轍もなく悲しい。


気持ちが悪い……。

男はどうにか倒れるのを踏みとどまる。
何気ない振りをして座れる場所を探す、そこにバス停。
頭が痺れるような痛みを発し、呼吸が浅く速く熱いのが分かる。
なんとか二三歩進み、バス停まで届かずに立ち尽くす。


胸が苦しかった。顔の筋肉が痺れ、唾液を飲み込む事が困難だった。
涙が滲み、どうしてもそこに立っていられなくなる。
ふわりと、いきなり重力が変わった感じ。
風景がぼやけ、遠のき、そして暗くなった。

苦しい…。


遠くで女性の悲鳴が聞こえ、アスファルトの匂いがすぐ近くでする。
もはやそれを知覚しているのが誰なのか分からず、男は意識を失う。


a man

遠く、遠く。棄て去られた記憶。

彼は彷徨う。歩き、疲れれば座り、また歩き出す。
どこの街も同じだった。




幼い日。まだ、身を守る術をもたない頃。

血を流し、蔑まれ、さらに血を流す。
立ち上がれば罵られ、座れば叱咤された。
川の淵に座りながら、目に映るものは何も無かった。

左手に痺れ。言う事をきかない。
もう涙も毒舌も出なかった。
ただ、そこに存在するだけの有機物。
愛情など辞書でしか見たことのない言葉だった。




目を覚まし、彼は再び歩き出す。

既に日は落ちていた。太陽の光などとうに届かない。
ポケットに手を突っ込み、人の流れを避けて歩く。
どれも違う顔だったが、どれも同じ顔だ。


その同じ顔の中に彼も飲み込まれ、街は夜の喧騒に還っていく。


逢いたい

逢いたい。君に逢いたい。


久し振りに泣いた。


昨日、夢で君が笑っていた。あれは僕の理想。夢。想像。妄想。夢。
その夢では僕も幸せだった。君と一緒に歩いて、笑って、同じ物を見ていた。

それは夢でしかないのだ……。



君に逢いたい。

会いに行ったら迷惑だ。君は今、外出に苦痛を感じる。
叶わない夢、あの人には敵わない。僕は君に適わない。



あんなに楽しそうだった君は、夢の中でしか存在しないのだろうか。
僕が臆病になりすぎているだけだろうか。
今でも、君は僕を気にかけてくれている?



君に会いたい。

僕には、君に会う資格があるだろうか?
まだ君を想って止まない僕に……。


A rainy night

雨の中、君は濡れてやってきた。
あははと笑って、髪や顎や鼻や手から滴る水滴。
私は慌ててタオルを君に被せる。



「どうしたの?」

「や、お前に会いたくなってな」


だから、雨の中を傘も差さずに来たというの?

「前から思ってたけど、君って馬鹿だね」

長い付き合いだけど、本当にそう思う。
何を考えてるのかさっぱり分からない。
なんで、こんなに私の事を好いてくれるんだろう。こんな私なのに。


「馬鹿とかいうなよ、そこー」

いいながら髪をわしゃわしゃ。犬みたくて可愛い。

「いいよ、早く上がってよ。風邪なんてひかれたら困る」
「おーサンキュー」
「最初からそのつもりだったんでしょ?」
「へへ、まあな」
「もう…」

良いながら、私はもうカップに紅茶のパックを入れている。
この雨が降り出したのは10分前。君の家からここまで歩くと20分。走れば良いやとか考えたのが目に浮かぶ。

「っあー俺紅茶ってだめなんだけど」
「残念だったね、うちにはコーヒー無いんだ、分かってるでしょ」
「俺のために常備しといてくれないのか?」

そう言って、ふわりと湿ったバスタオルで包まれる。近くに君と雨の匂い。

「やだもーやめてよ、濡れてて嫌」
「良いじゃんかよ俺お前愛してるぜ」

「…もう。やめてよ、嬉しくなるでしょ。ていうか愛してるならその濡れたタオルちゃんと洗濯機に入れておいて」
「へーい」


ぺったぺったとお客さん用スリッパ。というか、既にあの人専用。
少し湿気のうつったTシャツにしかめっ面を作って、頭を振る。

どうしよう、まだ動悸がおさまらない。


「なー」
「え、何ー?」
「シャワー借りて良い?」
「…………うん良いよもう何でも勝手に使ってー」


蛇口をひねる音、が聞こえたと思ったら雨の音に同化してシャワーが床を打つ音。早い。


私は紅茶を入れて一人で君を待つ。
ちょっとだけ髪を手櫛で直す。変な服じゃなかったかな。良いよね普段着だもん。
放置してあった雑誌をラグへ。何に使ったかなと思いながら鋏を引き出しに。
BGMは何にしようかな、とCDラックと君の趣味とを頭に描く。


砂糖が溶けていく紅茶を見ながら、やっぱり次の買い物でコーヒーも見てこようと考えてみたり。
ほら、だってもう音がやんだ。さっきと違う湿気を保ったままの君が、もうすぐやってくるね。



こんな雨なら、降り止まなくてもいいかもしれない。


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