団長のお言葉
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2003年12月13日(土) 踊る太刀魚捜査線

今の時代、どこもかしこも情報に満ち満ち溢れている。何が真実なのか、何が偽なのか、私達は知る羽目になった。情報源は某サイトのEメールだった。尼崎のB浜にて太刀魚がよく釣れているらしいとのコト。この情報を信じてヒロちゃんとオレとの二人での釣行となった。

 またまたサンバーをぶっ飛ばし、およそ1時間ぐらいでその町に到着。まず釣具屋でキビナゴを買い現地に向かった。現地の駐車場に到着。情報だと、ここから7から8分歩かなければならないらしい。我々は期待に胸を膨らまし、やや早足で海に向かった。

 ところどころ釣り人が歩いているのが見えた。ああ、こいつらも俺らと同じ場所で釣るのか、と暢気に構えていた。海が見えた。と同時に人の群れも見えた。なんじゃこりゃ。

 釣り場は波止状になっているのだが、そこにびっしりの人が奇妙なほど規則正しく並んでいた。それは四条の鴨川沿いのカップルの等間隔の法則を連想させられた。家族連れ、若者、おっさん、ヤンキー等ありとあらゆる人間の群れが釣っていた。日本人の釣り好きには脱帽した。オレは叫びだしたい気分になった。お前ら魚だったらスーパーかどっかで買えるだろ。何でイチイチ500円だしてキビナゴまで買って苦労して魚を捕りたがるのだ。

 自分本位の勝手な悪態を付きながら空いているところまでひたすら歩いた。確かに海まで7から8分。しかし釣るスペースがあるところまで7,8分どころか15分ぐらいかかった。汗だくになってヘロヘロだった。夕方寒くなるだろうと思い着込んだのが逆に仇となった。

 さて、やれやれ釣りを始める。仕掛けはテンヤ仕掛けと浮き釣りの2つ。浮き釣りを投げ、ほっといてもう一つの竿でテンヤをぶっ飛ばした。こうすることにより活性の悪い魚も掛かりの悪い魚も同時に釣ってしまおうって作戦だ。シュー、どっぼーん。隣の親父が暢気に浮き釣りしているにもかかわらず、テンヤで水面をシバきまくった。やや迷惑そうな親父の顔など気にも留めなかった。

 キャストしだしてから30分後に一発目が掛かった。少し小さいが、まずはアブれなし。更に調子に乗りテンヤを飛ばしまくった。隣の親父は呆れて帰ったようだ。大体1時間毎に一匹釣れた。ヒロちゃんはあたりのみで終わってしまった。結果オレ4匹、ヒロちゃん0匹。

 周りを見てみた。やはり釣果が悪かった様だ。アブれが続出していた。この結果では納得がいかない。それにヒロちゃんのシケた面を見ながら帰るのも気が進まない。晩飯を食べたあと、オレの独断で近くのN浜に行く。ここでもう一発揚げて快挙を成し遂げ、オレ超満足、ヒロちゃんのシケた面がニッコリだ。

 あたりが無かった。かすりもしなかった。無論ヒロちゃんも。こうしてオレ作戦は不発に終わり、ヒロちゃんのシケた面は度を越して生気が無くなっていた。さすがに悪いと思いややスピードを上げて帰路した。

 さて、この情報をもとにした釣りは釣り場にはいっぱい人が集まってくることを考慮しなければならない。そして良く釣れていると言う情報はホドホドに釣れるよ、と解釈した方がよい。つまり情報が送られてくる時点では釣れていたが情報を見て釣りに行ったのでは遅いということ。海は一日で状況がガラリと変わるのだ。まあ、何でもかんでも物事を鵜呑みにするなってぇコトですな。






2003年12月12日(金) 俺は今(浪漫シング調)

少し肌寒い。乗り場にうなだれた無言の数十人の男達が出迎えてくれた。彼らは船が来るのを待っているのだ。オレもそれに溶け込んだ。オレは今、尼崎にいる。船がやってきた。男達に紛れ船に乗った。やっぱり男達は座り込んで少しも会話を交わそうとはしなかった。ただ船が轟々と唸りをあげて我々の存在を滅していた。

 遠くの方に一本の線が見えた。船はそこに吸い込まれるように勢いを上げた。船が止まった。途轍もなくでかい防波堤だった。高ぶるエナジー。ワラワラとオヤジたちに紛れそこに降り立った。

 絶望的だった。力が尽きるとはこういうことなのか。朝、はまちのナブラに無視され昼には強風が吹き荒れた。不毛の昼間を過ごし水平線のずっと遠くを見ていた。

 大体3時ごろであろうか、隣の親父がテンヤ仕掛け(太刀魚釣りで使われるジグヘッド。ワームや生のドジョウをくくりつけ誘う方法。)で太刀魚を揚げた。この光景を目の当たりにしたオレは隣に習いテンヤ仕掛けをぶっ飛ばしたがバイトのみであった。

 バイトのみでも良かった。確かに太刀はヒットしている。何かが足りないのだ。テンヤをよく見ると頭にバイトが集中していることが歯型でわかった。

 俺は咄嗟に思った。アシストフック。これだ。オレはそれをテンヤの頭部にかました。そして一心不乱に投げまくる。次は掛かる。チューンされたテンヤには確かな自信があった。

 ある瞬間アドレナリンが身体に走った。のった。スィープフッキング。確かな手ごたえ。ドラグがキリキリと唸る。巻く巻く巻く。見事揚がったのは小ぶりながら美しい鏡のような太刀だった。

 太陽が傾き一日の終わりを告げようとしていた。しかしここから予想だにしなかったことが起こった。ワンキャストワンヒット。何が何だかわからない。オレは吼えまくった。

 私達、ダストは海は不毛だと言った。しかしこの一日でさらに海の雄大さに身をもって感じた。瞼を閉じればあのカツオのライズが蘇えった。



2003年12月07日(日) さらば 蛸ジグ

その日オレはヒロちゃんに電話をかけた。尼崎で今、蛸が釣れているらしいと誘いをかけた。まだまだケツの青いヒロちゃんは難なく騙せたがチャンコは誘っても無駄だということがわかっていた。

 彼はオレによって更に海嫌いになったからだ。俺が誘っても悪態を付かれるのがオチだ。こういうときは物腰の柔らかいヒロちゃんを使って彼を誘うべきだ。

 しかし結果は同じであった。彼いわく、「そんな確率の低い釣りは、せん。」とのことだった。ほほう、なるほど、冷静ではないか。ならば貴様が後悔するほどの結果をたたき出してやろうではないかと微笑えんでいた。

 夜中、サンバーをぶっ飛ばし我々の破滅の行進が幕を開けた。朝イチは太刀魚が釣れているのでテンヤで釣ってアブレだけは回避しようとした。しかし釣れん。なんぼやっても釣れん。竿を曲げたのは隣にいたオッサンのみだった。太刀がダメなら蛸があるとオレは昨日必死で作った仕掛けを取り出し、蛸釣りに望んだ。

 仕掛けは連蛸仕掛けだ。ようするに蛸ジグをサビキ状に道糸に何個もつけた仕掛けだ。これを岸壁ギリにつけ落とし込んで誘う按配だ。暫く誘っていたがウンともスンともあたりが無い。苛立ちは募るばかり。釣り方も雑になってきた。次の瞬間、フッと竿の重みが消えた。

 道糸が切れたのだ。オレは唖然とし、軽い脱力感を覚えた。何とか蛸ジグを救い出そうとメタルジグを投げたが、そのメタルジグも引っ掛けてしまった。蛸ジグ一個280円。それが6個繋がっていたので1680円。三股スイベル台280円。このロスで実に約2000円が海のゴミと化した。。がっくりしてヒロちゃんの所へ戻った。彼もオレと同じくして蛸ジグを無くしてしまったらしい。

 何としてでもアブレだけは回避せねばならぬ。オレはテクトロをしてシーバスを狙った。大体、どのくらい歩いただろうか。アタリもなくヒロちゃんの元へ戻った。オレは彼に呟いた。「アブレようか。」彼は寂しそうな笑みを浮かべため息をついた。気が付いたらドナドナを口ずさんでいた。


マグロ