diary/column “mayuge の視点
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『****』編集後記 2005年2月号

 創刊後、気が緩んだわけではないのですが、ガッツリ風邪をひきました。実は私、毎年四回規則正しくひいています。微妙な季節の変化に敏感。これもまた編集者の資質として、結構気に入っている私です。

2004年12月17日(金)

尊敬したいのよ

 今日もプロ野球の話。

 昨日書いた「球場という空間で野球を楽しむ」ことに無頓着な例が、まだある。

 球場で野球を観るとき、ほとんどの時間はバッテリーのあたりに視線を送っていることになる。だったら観客席は、そこに向かって設置されているべきもののはず。ところが横浜スタジアムの内野席では、椅子に対してまっすぐに座ると、外野フェンスが正面になったりする。つまり試合中はほとんど90度首を曲げていなくてはならないわけ。この設計、まったくもってナンセンス。

 こうして日本プロ野球に対する不平不満を言い出すと本当にきりがない。

 どうせまた宮城球場のファールゾーンは無闇に広いんだろうな。緊迫した場面で「外野ファールフライでスリーアウト」というのは演出上もよろしくないし、そもそも選手を近くに見られない。頼むから、観る側(買う側)の視点でモノを考えろよ。一般企業はみんなやってるよ、それ。

 どうせまたメガホンとラッパの騒音で、バットやグラブの快音が聞こえないんだろうな。どうして四六時中みんなで合わせて「応援」しなきゃならないの? 最近ではJリーグでも「みんなで一緒の応援」が行われている。嘆かわしい。なんとなくみんなで同じことをしてその連帯感がうれしいという、日本人独特の心理。「盆踊り」「パラパラ」「信号無視」と同じ。

 どうせまた選手たちは、オフにバラエティ番組でオチャラケちゃうんだろうな。「意外におもしろい人だ」「親しみやすい」という評価を狙って失敗し、「メジャーの選手のように尊敬できない」「頭が悪そう」という印象をもたれる結果になっている。自分の価値を、さらにはプロ野球選手という存在の価値を下げているのに、本人たちは一向に気づかない。

 いいですか、巨人の高橋投手。野茂や松井やイチローが、そんな姿を見せますか? 内輪だけでやってりゃいいんだよ、オチャラケは。ふざけた姿を見せて人気が出たのは、西武やヤクルトの黄金時代まで。今はもうそんな時代じゃないの。サッカーだって何だって、「このスポーツが大好きで、高いレベルのプレーをしたいんです、俺」という姿がスタンダードなの。観客はそういう姿に感動を覚えてるわけ。分かります?

 僕は球場に野球を観に行くたびに、「ああ、この人たちはこれだけ多くの人たちに感動を与えるんだから、年に2億円もらうにふさわしい」と感じる。田舎出身の「野球オンリー君」が出自だということで、服装や車のセンスが成金チックなのは許されるにしても、せめて意識だけは高く持っていてほしい。

 尊敬させてくれ、頼むから。

2004年12月08日(水)

「器(うつわ)」が料理を引き立てる

 新球団「楽天イーグルス」のホームフィールドとなる、宮城球場の改修工事が進んでいる。投じられる費用は約30億円だとか。球団のGMに就任したM・キーナート氏は「ディズニーランドのような球場」を目指しているという。ワクワクする球場という意味では、大いに結構だと思う。
 ところが、残念なニュースを耳にした。内外野ともに「人工芝」が張られるらしいのだ。正直、これにはがっかりした。ああ、「あの」感動は宮城にはないのかと。
 シアトルのセーフコフィールドに初めて行ったときのことだ。チケットのバーコードをピッとやってもらって(マーケティング上のデータベースとなるので、日本のような「もぎり」ではないのだ)、はやる気持ちを抑えながら階段を上がった。すると目に飛び込んできたのは、この世のものとは思えないような「荘厳な緑の空間」だった。これが総天然芝の球場か。全身が震えた。
 僕らはプロスポーツに、いろんなものを期待する。夢、感動、興奮、爽快感。これらはつまり、「非日常」ということなんだろうと僕は理解している。僕らは日常で様々な「現実」を目の当たりにする。その多くはため息とともにあったりする。旅行、映画、宝くじ――。おおよそ娯楽と名のつくものは、その「現実」からいっとき目を逸らして、非日常に身をゆだねるためにある。だから僕らは金を払うのだ。僕はシアトルで、その「非日常」を確かに感じた。少々大袈裟だが、この美しい芝生を見るためだけにお金を払ってもいいとさえ思った。
 そもそも自然の緑というのは人間に優しいものらしい。目が疲れた時には遠くの緑(木々)を見ると良いといわれるくらいだし、そういえば晴れた日のゴルフ場は歩くだけでも気持ちがいい(スコアが悪くても)。つまり球場という空間では、この「緑」が商売上の武器になりうるのだと僕は言いたい。
 もちろんプロ野球ファンの頭のなかには、緑に対して金を払うという感覚はないだろう。俺はプレーに金を払っている、漠然とそう思っているはずだ。当然、選手や監督は高いレベルのパフォーマンスを見せる義務がある。何故なら彼らは「プロ」なのだから。それはあくまで当然のこととしておきたい。「あの空間にまた身を置いてみたい」と思わせるには、空間の演出、つまり「緑」が重要な役割を握っていると僕は思うのだ。
 前述の楽天GMは、球場に併設して「公園」をつくろうとしているらしい。しかし果たして、隣に公園があるから、遊園地があるからという理由で、野球を観に行くだろうか。とあるテレビ番組で「プロ野球の観客を増やすにはどうしたらよいか」と問われたつんく♂氏が、「ハロプロのコンサートをやったらどうか」というような話をしていた。試合の間にアイドルが歌を歌うからといって、野球ファンは球場に通い続けるのか。そういうことじゃないだろうと嘆かわしくなる。「球場という空間で野球を楽しむ」ということに最大限の魅力を感じてもらわなければ、ファンの足が球場に向かい続けることはない。
 この「球場という空間で野球を楽しむ」ことの一つの要素として、天然芝がいま潜在的に求められている気がする。今はもう人工芝を見てワクワクする時代ではない。

2004年12月07日(火)

みなさんのおかげです。ホントに。

 今日は定期購読のお願いに、以前勤めていた広告会社を訪れました。会う人、会う人、「おおー、久し振りー!」とあたたかく迎えてもらって、かなり感激。4年前「会社を辞めてどうするの? 博報堂? 電通?」と聞かれ、「ちょっと旅に……」と答えたのを思い出します。今日も、多くの人のなかで僕は「旅人」という認識のままでした(笑)。

 雑誌をやっているという話をすると、広告会社だけに皆さん「広告の営業?」と聞いてきます(笑)。広告を積極的に取りにくい内容の雑誌だけに、今日はどちらかというと「販売営業」(本職は編集なんだけど……)。「何でも屋」になりつつあります。それはちょっと不安。

 今日改めて思ったのは、「人情」。こんなどうしようもない男のために、喜んだり励ましたり、お祝いしたりしてくれる人がいるというのは、本当に泣けてきます。「元気そうだな。創刊? それはめでたい。よし、ついて来い」と、社内の各セクションに「定期購読申し込み用紙」を配って歩いてくれた元上司。行く先々で話を聞いてくれる先輩、後輩。この人たちあっての自分なんだと、つくづく思います。

 いやなことは当然日々ありますが、皆さんに支えられて今日も生きてゆけます。いつか恩返しができますように。

2004年12月01日(水)

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