大学教員の日記

2001年11月20日(火)  有難い手紙

 NHK番組の感想は、引き続き届いています。
 大部分は私の知人、あるいは教職関係者からです。ところが、一通、市内の方
ら頂いたものがありました。Mさんという74歳の女性です。読んでいるうちにグッとこみ上げるものがありました。

 突然此の手紙を出します事をお許し下さいませ。
 私はA小学校の地区に住む74才のおばあちゃんです。
 この度みやこ広報の中に、「コマーシャル制作」に挑戦したと云うことに、アッ全国放送だと思い、どんな出来栄えなのだろうと凄く興味を持ちました。

※宮古の広報は2万世帯に配布されるとのこと。しかも放送直前だったのでその効果が大きかったようです。(岩手日報の番組紹介も同様でした。)

 8チャンネルの45分間、目を凝らして見ました。
 ・浄土ヶ浜チーム、一回目の雨の中、大変な挑戦でしたね。
 ・鮭チーム、魚菜市場のお客さんがインタビューに無視で残念
 ・うに染めチーム、段取りがうまくいかず、同じ色だけで大丈夫かな?
 3チーム共、良い出来にするために2度も挑戦して、2回目は最高の出来でした。テレビにむかい、心から大拍手をしました。

※おうちで一生懸命にテレビをご覧になっている姿を想像しました。いつの間にか、子供たちの応援団になってくださっていたのですね。

 先生の熱心な指導に生徒さんたちが皆頑張りましたね。先生も子供さんたちも、とても目が輝いて、最後まで頑張り、感動いたしました。
 又、田川さん、太田さん、その他諸々の方々の優しさ、親身に協力して下さったことに感謝出来る人間になってほしいと思います。勿論、それが出来る人ばかりだと信じています。

※ここの部分に、とても共感をしました。今回の番組の主役は子供たちです。しかし、もちろん自分たちだけで番組ができたわけではありません。いや、それどころか、学習する段階でたくさんの方々の協力を本当に頂いておりました。
 たとえば、ウニ染めの田川さんは、1年で最も忙しい時期でした。あちこちに出品する時期が重なっていたからです。そんな中、「宮古の子供たちのためだから」と時間を割いてくださったのです。ロケ中から、子供たちにそのことは何回も話していました。そして、今回の番組の放送直後にも、私は「今回の番組で、君たちにわかってほしいこと……それは、多くの人たちの力でできたということです。NHKの皆さん、田川さん、太田さん、高浜小の他の先生方、その他宮古にいろいろな人にお世話になりました。その人たちに感謝の気持ちを持ってほしい。」と話しました。 今回のお手紙は、全く私の考えと同じです。そこに共感したのです。

 私達の子供の頃は戦争の渦の中で生活し、18才の時、強制的に学徒動員で戦争に使う部品を作る工場で働きました。本当に悲しい思い出だけです。皆さんの様にあんなにきれいな輝いた目をしたことが私達にあっただろうか?この度、つくづく感じました。皆さんが良い経験をされたことに平和で良かったと思いました。

※確かに平和だからこそ、子供たちも十分に今回のような学習ができる。改めて平和の有り難さを噛み締めました。同時に私事ながら、私自身の親の姿とダブらせて手紙を読んでいました。Mさんよりは年下ですが、同じ昭和一ケタ生まれの私の父母からも大変だった子供時代の話を聞いておりました。

 本当に良い出来栄えを見せて頂き、心より感謝申し上げます。
 今後も健康で何事にも頑張って下さいませ。
                                     かしこ
 佐藤先生と5年生の皆様江

 Mさんのお便りは、本当に丁重で心のこもったものでした。私は感激してしまい、何度も何度も繰り返しでお手紙を読みました。

 そして、「すぐにお礼の言葉を言わなければ…」と思いました。いてもたってもいられない……そんな気持ちでした。住所を頼りに電話番号を探しました。
 ありました。
 気持ちを落ちつけて電話をしました。
 幸い、ご本人が電話に出られました。

「佐藤先生ですか。本当に今回は、いい番組を見せてもらいました。」
「子供たちの番組での頑張りぶりが嬉しくて、初めてテレビを見て投稿してみました。」

 「テレビ番組を見てのお手紙は初めて」……この事実に驚きました。つまり、今までにないくらい、感銘を受けたというのです。
 一つのテレビ番組が、今まで全く縁がなかった人と人を結びつける。それも「共感」という心を持って。改めてメディアの力の大きさを感じました。
 Mさんからは、大変だった子供時代のお話、お孫さんのお話、宮古が大好きだったといったお話をお聞きしました。
 終わりに私から、お願いをしました。
「本当に、お手紙をありがとうございました。子供たちには、もちろん紹介いたしますが、その他にお願いがあります。この手紙を、学級通信で紹介させてほしいのです。」
「どうぞ、どうぞ。私のでよければ……」
 改めて、感謝の気持ちを述べて電話を切りました。

 子供たちにさっそく手紙を読んで聞かせました。
 子供たちも「感謝することの大切さ」を改めて感じました。
 私にとっても、子供たちにとっても本当に有り難い手紙でした。



2001年11月18日(日)  視聴者の番組感想

 番組放送直後から、番組についてのメールが届き始めた。(正確に言えば、
放送中から)メールの威力は本当に大きいと実感。許可を得たものを紹介をする。末尾は感想を送ってくださった方の都道府県名である。

★実践,ご苦労様でした。先生の学級の子ども達の表情が良かったですね。なかなかの芸達者のお子さんもおられたようで,私の学級の子ども達と重ねてみてしまいました。意外と,人数も少なく。私の学級と同じような環境で取り組んでいらっしゃるのだなあと思いました。私も番組に関わらせていただき,メディア・リテラシーをどのように子ども達に伝えていけばいいのかが,少しずつ見えてきたとこです。先生の実践は,参考になります。ありがとうございました。(鳥取県)

★本日の番組、拝見しました。予想通りというか予想以上というか、素晴らしい番組になったと思います。当初の話し合いで、子どもたちの成長が目に見える形にしたいということがあったわけですが、子どもたちのCMは見違えるほどよくなりましたね。裏ではいろいろなご苦労があったとは思いますが、番組として見事にまとまっていたと思います。番組には明示されていませんが、いくつか重要な点があったように思います。たとえば、子どもたちが作ったCMでは、効果音やテロップはいっさい使われていませんでした。これは、編集機を使わずにダビングだけでもできる範囲で作ると言うことを意図されたのだと思います。そういうようなポイントがもっとあると思いますので、もしよろしければ教えてください。この特集番組のホームページができるのであれば、補足情報として載せていただきたいです。この番組がきっかけとなってメディアリテラシーの授業に取り組む学校が増えるといいですね。これからまだ反響があると思いますので、ぜひ教えてください。また、自分たちが出ている番組を見た子どもたちの感想も知りたいです。(千葉県)

★テレビ、見ました!すごいです。とにかく、子ども達がよかった。子ども達が生き生きしていた。45分があっという間に過ぎました。録画しておいたので、2回見ました。御苦労様でした。本当に、拍手、拍手、拍手です。昨日は、テレビ放映の時間、どうしても自習にしなければならない状況でして、クラスの子ども達の自習課題はテレビの視聴でした。月曜日に、テレビを見た感想を集め、そちらに送ろうと思います。子ども達の姿を見て、我がクラスの子ども達が何を感じ取ってくれたのか楽しみです。 このテレビ番組は、きっと子ども達の「一生の宝物」ですよね。佐藤先生が、とても羨ましく感じられる、まさに、そんな子ども達ですね。では、簡単ですが、番組の感想まで。(京都府)

★教育テレビ見ましたよ。よく出来ていました。特に1回目と2回目のCMの違いには、びっくりしました。浄土が浜チームの寸劇、うに染めチームのクイズ、さけチームのインタビューとそれぞれ特徴のあるCMでした。まとめの授業もよかったです。各チームの矛盾点を突き、深く考えさせる。すばらしいまとめでした。(岩手県)

★番組を楽しく拝見しました.最初のインタビューでは,子供たちの不安さが伝わりました.しかし,徐々に「宮古の良さをどうやって伝えようか」,伝えなければ,という意欲に変わって来たのが分かりました.佐藤先生の,忍耐強い,指導のたまものなのでしょう.今回だけでは,自ら考える力やメディアリテラシーは,備わるわけでないことは佐藤先生も言われていましたが,明らかに今後,子供たちが学びを続ける上での貴重なきっかけになったことは確かです.あらためて佐藤先生の取り組みに敬意を表し,今後の取り組みがますます輝くことを期待します.子供たちへのねぎらいと今後の活躍を込めてエールを送ります.
 祝結成「ちびっこ 宮古の応援団」!!!(青森県)

★今日の午前中、佐藤先生のテレビを拝見しました。本格的なCM作り、何回もやり直して完成に近づけるという、とても面白い試みだと思いました。ちょうど、中高MMに「総合学習の目標(こうあったら良いな)と教師の役割」を書いたばかりです。「本格的な結果を意識し、感情を揺さぶるような体験の準備、腑に落ちるまでの内省の時間、インタラクティブな授業、子供達自身のものも含めたフィードバックの活性化」というようなことを書きました。佐藤先生の総合学習は、私たちが考えている総合学習のイメージにピッタリでした。(東京都)

★全体を通して子どもが練り上げていく姿がとても印象的でした。日頃の授業でも考える活動を取り入れているからでしょうね。子どもがとてもよく育っていますね。人に伝えること、自分の伝えたいことをよりよく伝える・・・このことは単に表現力のみならず、思考力、コミュニケーション力など総合的に力を育成できるものだなぁーと思いました。CMを作成する手順についてはどういうところから仕入れたのでしょうか?取材からキャッチコピーなどプロの手順をふんでいるように思えました。また、授業の最後に子どもに質問を投げかけていましたね。子どもに映像や情報は必ずしも真実を伝えているとは限らないこと、そのために情報を鵜呑みにすることなく見極めていく必要があることなどに気づかせていたと思います。(秋田県)

★何より子供たちの表情がよく、先生の素晴らしい学級経営がうかがわれました。放送する側の意図もあるのでしょうがそうした点をぬきにしても、伝わってくるものがありました。実は、一昨年ですが、本校の職員も地域の宣伝ビデオ作りに挑戦した事がありました。校内授業研究としてもとりあげました。その時のことと比べようもないのですが、大きく違うのが、「撮影を二回する」という点です。この過程を組み込むかどうかが実は大きなポイントだなと改めて考えました。メディアリテラシーという、先生のもう一つのねらいの部分も終末の段階でポイントよく語られ、まとめとしてぴりっとしていました。HPに入り、子供たちの感想をのぞきましたが短いながら、的確な言葉で語られている事にもうひとつびっくりしました。今後とも、いい実践を期待しております。(秋田県)



2001年11月17日(土)  番組視聴直後の子供たちの感想

 興奮気味に見た子供たち。 番組感想も一気でした。

★NHKのみなさんから、いろいろと教えてもらったことを思い出しました。たとえば、カメラの使い方など、とても勉強になりました。これから使うことがあったら、このテクを使いたいです。

★日出さん、あかねさんに解説してもらってうれしかったです。アイスを食べたことを思い出してうれしかったです。

★NHKに撮影されて本当によかった。それから、みんなのCMをうまく編集されていて、とてもおもしろく仕上がっていました。

★今回番組を見て、調べたり、聞き込みをすることがすごく必要だと改めて学びました。自分のチームがうまくいってよかったです。
 
★うまく編集してあって、すごいと思いました。特にうつる所がすごいと思いました。さけ汁を食べているのは写っているのに、ウニラーメンはうつらなかったのが不思議です。

★番組がとてもおもしろかったです。それにみんなとてもがんばっているシーンが多かったので、5年生はとてもいい学年だとみんなにわかったと思います。日出さんの服がハデでした。あかねちゃん、サイコー。
 
★いいCMができるか本当はわからなかったけど、全部の場面がいい感じだったので、とてもよかったです。それと日出さんとあかねちゃんのナレーターがとてもよかったです。

★CM制作のことがよく分かったので、努力が実ったなと思いました。ありがとうございました。この勉強を通じて、いろんな勉強があったので、いい勉強になりました。

★テレビを見て、あらためていい作品ができたなあと思いました。あとこの勉強をして、「協力すればいい作品ができる」ということを学びました。これからも、総合について勉強していきたいです。
 
★テレビを見て私はみんないいCMができたと思いました。それに、浄土ヶ浜チームは雨の日にもがんばっていました。

★テレビを見て、やっぱり最初のと比べて2回目の方が、わかりやすくよかったです。それに日出さんの説明で、こうした方がいい所がわかりました。

★話し合いの時のことも写っていたし、いろんな忘れた映像もあったので、なつかしかったです。みんなの取材でことわられていてもがんばっていることは、「努力は実る」ということだと思いました。
 
★ぼくたちのがんばりをよくあそこまで、まとめていてすごいと思いました。特に、苦労などがよくまとまっていて、よかったです。
 
★うまく編集されていた。みんなのがんばりが伝わってきた。特に撮影シーンのところがよかった。

★CMを作るにはいろいろな苦労があったことを思い出しました。いろいろな人の協力があり、CMや番組ができることを改めてわかりました。



2001年11月06日(火)  番組告知

 次のように番組が告知された。

■今、話題のメディアリテラシー教育。
 岩手県宮古市立高浜小学校の5年生15名(担任・佐藤正寿)が、この秋、CM制作を通じてメディアのしくみを学ぶ学習に取り組みました。
 テーマは「宮古の自慢CMを作ろう」。街角インタビュー、ターゲット決め、取材、計画作り、撮影練習と子供たちは初めてのCM作りに挑戦していきます。しかし、初めてできたCMは相互批評で不満足な結果に。
 壁にぶちあたった子供たちは、再度CM作りにチャレンジします。

■番組ナビゲーターは、NHK教育番組『体験!メディアのABC』のレギュラー出演者でもある女優の大沢あかねさんとNHK解説委員の中谷日出さん。子供たちの学習について補足説明を行い、「メディアリテラシーって何?」という疑問にわかりやすく答えています。
  ▽「体験!メディアのABC」

■番組の放送については次の通りです。

  ▽番組名 NHK・民放連共同企画 『テレビと子ども』
   「コマーシャル制作に挑戦!
        〜つくってわかったメディアのしくみ〜」
  ▽放送日:2001年11月17日(土)
       10:30〜11:14(NHK教育テレビ)



2001年11月05日(月)  スタジオ収録見学記

 ロケが終わってから2週間。
 番組のスタジオ収録というので、お願いをして見学をさせてもらった。
 具体的な見学の様子は下の学級通信の通りである。

 それよりも何よりも、NHKスタッフの皆様の厚いおもてなしに感動をした。
 「笑顔での対応」「元気の出るあいさつ」「さりげない心遣い」…全てである。ロケ中にも幾分か気付いたのであるが、NHK本社で改めて強烈に感じた。そのような心遣いがあってこその番組づくりなのだ。
 学校ではあれほどの対応はできない。いや、少なくても自分はできていない。ぜひ学んでいきたいとこであった。

★学級通信から

★昨日、NHKのスタジオ見学に立ち会ってきました。
 今回の番組についての案内役の二人がスタジオでコメントを述べるところに立ち会うものです。
 コメントを述べるのは合計で7〜8分ほど。わずかそれだけの時間なのですが、収録は一日かかります。

★NHKに行って最初に、プロデューサーさんに、仮編集をしたビデオを見せてもらいました。合計すると二十時間以上になったビデオを、 わずか37分に編集をしたものです。
 ほとんどが授業場面です。街角インタビュー、キャッチコピー作り、取材……ほんの1ヶ月前のことですが、ずい分懐かしく感じられました。
 中には私自身が付き添えなかったロケのところもあります。話は聞いていましたが、見るのは初めてです。「こんなふうになっていたんだ!」と新鮮な気持ちで見ました。

★私がビデオで一番心配だったのが、写らない子がいないのではないか……ということでした。「番組の構成上、一つのグループに話を絞る場合もありえる」という話を聞いていたからです。
 でも、その心配はありませんでした。今回は、3つのグループとも見せ所や苦労のしたところがあり、それぞれを追っていったからです。必ず何らかの形でどの子も数回は写っていました。(もちろん、「アップ」 や「しゃべっている回数」などは違います。この点は『番組』なので、仕方ありません。)
 しかも、最初に作ったCMも、それを踏まえて作った完成作も全て流すようです。

★NHKスタッフとの打ち合わせで、案内役のシナリオを拝見しました。
 シナリオには子供たちのことに関わっていろいろなセリフが書かれていました。たとえば……

 この番組(「体験!メディアのABC」を楽しみに見ているのが、岩手県宮古市立高浜小学校の5年生。今回、みんなはコマ―シャルの制作にチャレンジすることになりました。

 ここのシーンは子供たちが、「テレビに食い入るように見ている」「撮影リハーサルをしている」シーンが写ります。「なるほど」と思いながら見ていました。
 シナリオの打ち合わせで意外と思ったのが、未完成の部分があったところです。たとえば、「子供たちのCM作品を見ての感想」といったところでは、実際に作品を見て、案内役のお二人が感想を述べ、それをもとに言うセリフをみんなで考えていました。
 「案内役の人の感性を大切にする」ということがわかりました。書かれていシナリオを全てそのまま言うものだと思っていた私にとっては、まさに意外でした。
 また、一字一句もみんなで吟味していました。この点はやはり「放送」だなあと思いました。多くの人が見るわけですから、間違いのない言葉遣いが必要ということです。このことを知ることによって、これからの番組を見る目が少し変わりました。

★打ち合わせは1時間半ほどで終わり。いよいよスタジオ収録です。
 これは、社会科の5年生の授業にも関わりがあるので、私としてはぜひ見ておきたいものでした。
 といってもスタジオ収録の本番がすぐには始まりません。「カメラリハーサル」「カメラマン・ディレクター・調整室での確認」「出演者リハーサル」といったことを20分ぐらいしていました。わずか1・2分のシーンなのですが、それくらい入念に行っているのです。
 しかも出演者は二人だけなのに、収録に携わっている人は20名ほど。番組作りには実に多くの人が必要ということが、よくわかりました。
 
★そして「本番、行きま〜す」というSディレクターの声。(Sディレクターは宮古ロケの時には子供たちの「いいお兄さん」という感じでしたが、この時は本当のプロディレクターでした。当たり前ですね。)
 出演者がNGを出し「自分だけではないんだ」とホッとしたり、カメラワークの細かさに感心したり、メイクさんがこまめに出演者の髪や化粧を直すのを初めて知ったりと、その様子を詳しく見ることができました。
 「番組作り」の裏側を知るとともに、改めて今回の番組放映がとても楽しみになりました。


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