TOI,TOI,TOI!


2003年03月27日(木) オーディション

ミュンヘンでオーディションを受けてきた。
バイエルン放送響の、オーケスターアカデミー生の募集。
結果は、×。
一次通過を目指していたが、それもかなわず。
やはりオーディションで選ばれるということは、そんなに簡単なことではないと、身にしみて感じてきた。
ほぼどこのオケでも、一次の課題曲はモーツァルト。
これを、たくさんの人に認めてもらえる演奏をするのは、
ものすごく難しい。やっぱりめちゃくちゃ難しい。

何かを意識して、それをやりすぎてはいけない。
何かを意識して、ほかの何かが足りなくなってもだめ。
バランスが大事。
だからといって、注意深く地味な演奏をしても、選んではもらえない。

終わったあとに、自分がなぜ選ばれなかったのか、
審査員(=オケの団員)の人に聞くことができるんだけど、
ためになることを具体的に言ってもらったので、
弾いた甲斐があった、やってよかった、と思った。
自分の先生だけではなく、ほかのいろんな人から客観的な意見を聞ける機会というのも、大事なんだなと感じた。

まず、首席の男の人とたくさん話したあと、もう一人女の人が来てくれて二人でそれぞれ意見を言ってくれた。
お礼を言って帰ろうとしたら、また別の女性の方が私の名前を呼びながら通路を追いかけて来てくれたのには驚いた。この方もたくさん意見を言ってくださった。
首席の人は、まず一言目に、「君の演奏は私の好みだ」と言ってくれたので、嬉しくなってニヤけた。女の人も、楽しんでいるのがいい、と言ってくれた。
その拍、その小節、その音、を何か意識して何かやったことによって、全体の流れを壊してはいけない。これを3人からいろんな言い方で指摘された。
問題点は、ほかにもいっぱい。趣味の問題も含めて、ためになる助言をいくつももらえた。


翌日、ミュンヘンフィルの公開ゲネプロを聞いた。
あらためて、このレベルと自分との距離をしっかりと感じた。
弦も管も、一人残らず全員が、何年前とか何十年前とかにオーディションを受けて、大勢の中から選ばれた人達なんだと、
そんなことを考えたりした。
すごく普通にやってるように見えるけど、出てくる音は普通じゃなく素晴らしい。

Nという人が身近な存在すぎて、よく分かってなかったかもしれない。今まで。
ちゃんと現実を見ながら、残りの学生生活の限られた時間を使ってやれるだけやってみよう、と思う。
就職活動は、そのあとで集中的にやろう。今はそういう心境。


2003年03月17日(月) マライケ20歳

マライケのおすすめドイツ映画、その2。
『Jenseits der Stille』を2人で観た。
本当に、いい映画だった。

マライケ宅には、大量のビデオがあって、
その多くはテレビの放送を録画したもの。
気に入った映画は、何度も何度も観るそうで、
この前のと今回の2本は、それぞれ10回は観てる、とのこと。
ほとんど覚えている。ので、隣でいろいろ解説してくれる。

映画がほとんど終わりに近づいたころ、
時計の針が深夜0時になったのを確認した私は、
ふいに横に座っているマライケの方に振り向いた。
そして、思いっきり抱きしめた。
「お誕生日おめでとう。マライケ。」


翌朝。素晴らしい天気。
朝食のあと、ふたりで歩いてスーパーとパン屋へ。おつかい。
帰ってきて、しばらく部屋でしゃべっていた。
しばらくして両親に呼ばれ、
居間へ。両親からのプレゼントを開ける会。
大量の本、とCD。クリスマスと同じ。
大好きな歌手のバルトリのことを書いた本。大好きなヘッセの『音楽』という本。
絵や写真がカラーでいっぱい入った辞典(音楽や世界史や医学用語など多方面)。
あと、数冊。
そして、あとCDを一枚、フランクフルトのCD屋に取り寄せてあるそうだ。
プレゼントする側のご両親も、マライケが本当に喜んでいるのを見て、
本当に幸せそうだった。

そのあと、お母さんお手製、ほうれん草のラザニアをいただく。
ほうれん草は、マライケも私も好物。
めちゃくちゃおいしかった。満腹。
そのあと地下の練習室で一時間だけ、と練習させてもらう。
そのあいだマライケは、さっそくもらった本を読んでいたはず。
そしてそのあとは、これも母お手製、木苺のケーキ。

電車でフランクフルトへ。閉店間近のCD屋に寄る。
プレゼントのCDは、彼女が今やってるブラームスのソナタ。
パールマンとバレンボイム。
私は、サウンドトラックのコーナーへマライケを連れていった。
Jenseits der StilleのサントラCDを見つけたので、これをプレゼントしたいんだけど、欲しい?と聞く。
前から欲しかった、とマライケ。
この映画は音楽も最高、と言ってたもんね。

プレゼントって、する方もこんなにうれしい。
むしろ、こっちがうれしい。

そしてウチへ。
ユーディットと、あとひとり男子(クラリネット吹きセバスティアン。ちょびっと天狗。だけどいい奴)と4人でパーティ。
今は学校が休みなので、みんな実家に帰ってたり旅行したりしてるのね。
学校が始まったらみんな招待してパーティすると言ってるけど、どうなることやら。
ユーディットがシャンパンを持参。
マライケは家にあったワインとピスタチオを持参。
私はチーズとクラッカーを出し、アボカド巻き寿司を作った。好評。


ところで、
オーディションを控えている。
10日後にひとつ、それから、多分5月と7月に一つずつ。
倍率すごいし、レベルも相当高いものなのだが、ダメ元で挑戦。


2003年03月11日(火) ベンヤミン

2週間ぐらい前のことになるけど、少し体調を崩していた。

ヨハネスの誕生日パーティで、全く食べずにお酒を飲んだ。
これくらいなら・・・と思ってるうちに簡単に酔っ払った。
ドイツ人と同じペースで飲んじゃいけない。彼らはめちゃくちゃ強い。

次の日は、仕事。疲れ気味だったものの、どこも痛いところもなく、普通。
仕事の内容は、お城のパーティで2時間弾く、というもの。カルテット。
まず、クリストフの運転で酔った。彼の運転はひどい。
次に、演奏する広間は、煙草の煙とパイプの煙で充満していた。

翌日。
何を食べても、全部戻す。
激しい胃痛と、頭痛。
よりによってこういうときに暖房がつかない。寒くて震えて我慢が出来なかったので、大家さんを呼んだ。
そのあとは、行きたかった友達のコンサートにいくのもあきらめ、ひたすら寝ていた。
次の日、だいぶましになってたけど夕方までベットの中にいた。しかしもう寝すぎて寝れないのですごくつまらない。
マライケが電話をくれて、クロンベルクのマライケの家にいくことにした。
両親はスキーと温泉旅行で留守だし、うちは暖かいし、必要なものは何でもあるから、というわけで。

結局、そのまま3泊した。

ビデオをいろいろ見せてくれたんだけど、その中で面白かったのが、
ドイツ映画『Ein Mann fur jede Tonart』
主演女優、Katja Riemannが最高。マライケのお気に入り。
私のドイツ語力で、十分楽しめる内容。おすすめです。
マライケは、アメリカの映画は好きじゃなくて、ドイツやフランスの映画が好きらしい。
私が今まで見てきた映画って、考えてみるとアメリカ映画ばっかりかも。


ドイツの子供は、み〜んなこれを聞いて育ってる(マライケ談)という、
『Benjamin Blumchen』
カセットテープで、一つのテープに一話吹きこまれている。
全部で100話を超えるらしい。
で、マライケは60ぐらい持ってるのだ。これを。
対象5歳以上。いまでも彼女はこれがだーーーい好きだそうなのだ。ベンヤミン愛してる、だそうなのだ。
確かにめちゃめちゃ面白い。
貸して、と言ったら、キャーと喜んでいた。
これも、これもおすすめ、これもおもしろい、と言いながらどんどん増えていく・・・とりあえず10本借りた。

ベンヤミンという、世界でただ一頭の『しゃべれる象』が主人公。
木の上のベンヤミン、ベンヤミンと学校、ベンヤミン郵便やさんになる、ベンヤミン月に行く、ベンヤミンサッカー選手になる・・・・などなど。

で、今、毎日、これ聞いてます。
語学の教材に、絶対使えると思うんだけどなあ、これ。

一人でも聞いてるけど、マライケと一緒に聞く時もあって、
そのときはしょっちゅうテープを止めて、知らない単語を丁寧に解説してくれる。
日頃一緒にいるので、この単語は知らないだろう、っていう見当をつけてくる。さすが。

マライケと知り合ってから、ドイツ語を話すのが楽しくなって、今でもそれが続いている。語学の上達のためにも、持つべきものは友達だと、改めて思う今日この頃。

一方のマライケも、ものすごーい勢いで日本語を覚えている。若いからどんどん入っていくんだね。うらやましい。
しかも、とある知人から、使い終わった日本語教材(英語)をもらい、それで覚えてきては披露してくれる。
これが、またビジネス編とかいうやつなので、ウケる。

オハヨーゴザイマス。
ドナタデスカ?
Sumithデス。
カシコマリマシタ。
チェックアウトハナンジデスカ?
コレハナンデスカ?
ウイスキーデス。

など・・・。おもしろすぎ。
こないだその教材のテープを聞いたら、微妙に関西なまりの男の人がしゃべってた。


私が教えた、実用編。

いただきます。
(ましゅ。になっちゃう)
おいしー。
ごちそーさま。

げんき?
ひさしぶり。

じゃあね。
またね。

わかめ
(彼女の好物なので教えたら、音が気に入ってそれ以来忘れないらしい)

ほんと。
ほんと?
(私の口癖らしく、勝手に覚えた)

あ〜ユキちゃ〜ん、げんき〜?ひさしぶり〜!!
(音、リズム付きで、丸暗記させた)

など。
こっちもすっかり楽しんでいる。


2003年03月05日(水) リニュ

今日は、歩いてたら暑くなってマフラーを外した。

春になったかな。ようやく。


弓の毛を久々に替えた。
もうこれ以上は無理。限界。というところまできてたので。
そして、楽器も見てもらった。
もともとあちこちに問題があるのは分かっていたのだが、やっと重い腰を上げたというわけ。お金かかるのよね。

ちなみに、
Geigenbauer G・Groth(Wiesbaden)
という人です。古賀君見てるかな。
信頼のおける人です。
なぜなら私の信頼してる人が信頼してるから。

一つは糸巻き箱の問題。

この部分は、私が使う前にこの楽器を使ってた人達が、何度も何度も修理しているんだけど、それがあんまりいい修理じゃなくて、
年月が経って、あちこちはがれてきてしまっているという、そういう状態。

前にこちらでほかの人に見せたときと同じことを言われた。
「3年以内には、完全に修理するべきだ」

でも今、修理する時間がないのなら(1ヶ月以上は楽器を預けることになる)、こういう方法もある、とGroth。

糸巻きの穴を、内側から補強して小さくするという。なるほど。
これで何年かしのげる、という。

時間より何より、経済的に余裕がないことの方が問題なので、それを正直に話し、これを完全に修理するとすごいお金がかかることも知っている、と言い、
その方法で修理してもらうことにした。


二つ目は、はがれ、ヒビ。

糸巻き箱の問題と違って、こっちは音に関係する問題なので、
お金がかかるとか言ってられない。
いつかしなくてはいけないのだから、今することにした。
「開ける」という方法じゃなく、外から(ニスをかけたり)なんとかしてくれるらしい。

3つ目は、魂柱。

なんだか、本来あるべき場所じゃないとこに立ってるらしい。
う〜む。
これは完全に予定外だったけど、この際だから彼を信じることにした。
小さい音が出しやすくなる、という彼の殺し文句(?)に負けた。


弓の毛も合わせて、全部で541ユーロ。
Grothは、500ユーロでいいと言ってくれた。

というわけで、今私の楽器はリニューアル中です。
入院期間は10日。
今は、Grothのとこの楽器を借り中。


変わるんだろうなあ。楽しみ。


  
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