−最後の切り札−

INDEX − past

 2004年01月18日(日)  Bus Stop




まだ今年になって日も浅い。

新年早々、私はあるものと引き換えにあるものを失った。失ったと言うよりは、自分で葬った。が正しい。
握っていたそれはとても大切なものだった。捨ててしまう選択は辛いものだったが、もう見えない所へ。
その投げ捨てた腕の勢いで、新しい何か・・・おそらく強く美しいものを手繰り寄せることを選んだ。


扉のないバスに乗っている。

最後部に座って車内を見ている。扉がなく私は降りられはしないのに、同乗者は目まぐるしく変わり、
外の景色も勢いよく止まることなく流れて去っていく。時に窓に肘をつき、溜息混じりにそれを見ている。
心を奪われ暖かい涙が浮かぶような場所さえ、走るべき道の脇の小石でしかないようで、
もう少し見ていたい、もう一度見てみたい。と思っても、戻ることも止まることもできないようだ。


バスを運転しているのは他の誰でもない。

ひょっとしたらハンドルを握りアクセルを踏み、ブレーキを踏まずにいるのは私自身かもしれない。
そう降りられないこのバスもいつか止まる日が来るだろう。その時にはあの墓地に・・・



切り札と引き換えに、暗闇の中でひどく残酷に葬ったものへと、花を手向けに。





DejaVu  − MAIL

My追加