水野の図書室
Diary目次過去を読む未来を読む
皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2020年05月20日(水) 荻原浩『いつか来た道』

独自の価値観と美意識を押し付ける母親から逃れて、家を出た私。
弟に、いま会わないと後悔すると促されて、16年ぶりに家を訪れます。

そこで私が見たものは──。

高齢の家族がいる人にとっては、他人事じゃないですねぇ。
庭の様子でピンときましたが、あまりにも切なく苦しい。

このお母さん、娘のことを愛していたんですよ。
厳しくあたってきたわけも、今では理解できるようになった娘。

16年前には戻れないけれど、お母さんはまだ生きている。
今からでも遅くはありません。
一緒に過ごす時間を持ってほしい。

誰かが言っていました。
親孝行を難しく考えることはないのです。
一緒にみかんを食べればよいと。


2020年05月11日(月) 荻原浩『海の見える理髪店』

荻原浩「海の見える理髪店」(集英社文庫)は家族をテーマにした6編の短編集。
喪失と希望が軸なので、重い話の中にも明るい光が差します。

最初は表題作『海の見える理髪店』。
これは、2016年の直木賞受賞作品ですね。

評判を聞いてわざわざ遠くの海辺の理髪店を訪ねる「僕」。
店主は饒舌でこれまでの人生を語り出します。

こんなおしゃべりな店主、いないわよ〜と思いながら、僕と店主だけの理髪店をそっと覗いているような気分になっていきます。
ゾワッとする告白があり、最後に、あ〜やはり、と。

何かを失いながら、それでも、悲しんでばかりはいられないのが人生。
言いたいことすべてを言葉にする必要もありません。
言わないことが相手への思いやりになることもあります。

表題作で満足しましたが、あと5編あります。


水野はるか |MAIL
Myエンピツ追加

My追加