水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2018年03月14日(水) 荻原浩『上海租界の魔術師』

人生の悲哀がギュっと詰まっているような『上海租界の魔術師』。
何度も読み返しては、せつない気持ちになります。

かつて上海でマジシャンをしていた祖父の人生を、孫娘が祖父との思い出話から振り返ります。
祖父のお葬式だというのに、親戚のおじさんは大声で騒ぎ、おばさんたちは可笑しそうに笑う……あぁ、その光景が目に浮かぶよう。
なぜか、お葬式では皆、明るいのです。

孫娘は母親を幼稚園時代に亡くし、中学二年の三学期に不登校になり…と、幼くして寂しさと孤独を知っています。
そんな境遇の孫娘だからこそ、長い間、父親と交流のなかった祖父への思いや、祖父から孫娘への慈愛に満ちたまなざしが感じられて、じわじわきます。

そういえば、私が子どもの頃、TVのマジックショーでもBGMは「オリーブの首飾り」でした。
マジックって聞くだけで、心がざわついたものです。


2018年03月01日(木) 荻原浩『トンネル鏡』

荻原浩「月の上の観覧車」(新潮文庫)を読んでいます。
過去は取り戻せない。
生きていくことは何かを失い、何かを得ること。
人生いろいろの八編。

最初は『トンネル鏡』。
新幹線とトンネルの描写が秀逸です。
そう、まさに鏡のような窓に映る自分の顔。

主人公は18歳で大学進学を機に上京し、そのまま東京に就職。
結婚して、故郷でひとり暮らしをしている母親を呼び寄せ、
みんなで仲良く暮らしていくつもりでしたが──。

救いなのは、主人公が母親を大切にしていること。
まぁ、それが、お嫁さんには、んもぉ!となるわけです。



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