水野の図書室
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実りの秋になりました。皆さまも体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年06月23日(木) 北森鴻『根付け供養』

クッーーしびれました!北森鴻の本にオビをつけるなら、「しびれる!」です。
得意ジャンルは、民俗学者の蓮丈那智(れんじょうなち)が、神事や信仰について
教えてくれながら謎を解く民俗学ミステリーだと思っていたら、『根付け供養』で
見せてくれたのはキリッとした骨董ミステリー。民俗学も骨董もミステリープラス
カルチャーで、読んだあとは、どちらも特別な充足感があります。

『根付け供養』は、江戸時代の根付け職人の秘密をめぐるミステリー。指物職人と
若い骨董屋の駆引きに、ドキドキドキドッキドキで一気に進みます。ベタ誉めは
どうかなと思いながらも、ホント、文章に惚れ惚れ。姿勢が美しい文章なんです。
なんだか、生意気なこと言って……(苦笑)

あ、根付けって、知ってます?元々は、印籠や煙草入れといった提げ物を帯に
垂らすときの滑り止めで、芸術品クラスになると、かなりのお値段らしいです。

「零時の犯罪予報」(講談社文庫)、七つ目の作品『根付け供養』、良かった〜♪


2005年06月21日(火) 姫野カオルコ『探偵物語』

モヤモヤが残ります。謎が解決したらスッキリするはずなのに、知らなくてもいい
ことを知ってしまってモヤモヤ。こういうミステリーもあるんですね。
日記内をモヤモヤ検索したらありました、他にも。有栖川有栖『201号室の災厄』、
森真沙子『笑うウサギ』、海月ルイ『鉄輪』……そうそう、モヤモヤなんですよ。

『探偵物語』は、あるOLの素行調査を依頼された私立探偵が、尾行調査をしていく
うちに、彼女の思いがけない面を知ってしまうというお話。彼女が美人だからか、
探偵が仕事以上に彼女にのめりこんでいくのが、可笑しかったり怖かったり。。
まあ、一番怖いのは、彼女なんですが、、別れの理由を知りたいと、調査を依頼
してきた男にも、不思議な怖さが漂い、誰もがミステリアスですね。

ラストは唖然、そしてモヤモヤ。疲れているとき読むと、疲れます。


2005年06月19日(日) 池井戸潤『銀行狐』

面白いのに紹介するのが難しい小説が時々あります。『銀行狐』みたいな小説。

何が難しいって、池井戸潤は元銀行マン。これを読んで、銀行の内情がわかった
なんて思ったら、小説ではなくなるし、全くのフィクションとも思えない緻密さ
は、やはり、元銀行マンだからこそ書ける部分を持ち合わせていたからで……。

自分の知らない世界を覗けるのは楽しいものですが、見せる方は大変ですよね。
元銀行マンが書いたから読み応えがあると言うのは簡単ですけれど、銀行マン
なら誰もが書けるわけじゃなく、池井戸潤は小説家だから書けるんです。
そこを押えておかないと、ふーん、銀行って、こうなんだーーで終わってしまう。
元銀行マンというのを、一時的にでも忘れて読むと良いのかもしれません。
純粋に小説として楽しむためにも。

狐が手紙を書く銀行ミステリー、読んでみて下さい。余計な先入観念は持たずに。


2005年06月11日(土) 若竹七海『殺しても死なない』

殺しても死なない=ダイハードですが、映画の「ダイハード」と違ってアクション
ものではありません。元警察官だった作家のところに、推理作家志望の男から
『完全犯罪』というタイトルの小説が送られてきます。小説に完全犯罪としての
不備はないかというもので、何度か添削してやってるうちに、これが現実の殺人
計画になっていくというお話。

完全犯罪を扱った小説は今までいろいろ読んできましたが、結論から言って、、
不可能ですよ、完全犯罪なんて。どんなに綿密な企てでも、それは自分の頭の
中だけで構築されたものですから、思わぬことで、それも本当に些細なことで
簡単にくずれてしまうものです。

『殺しても死なない』で怖かったのは、殺人計画より、見知らぬ男から郵便物が
届くことです。世の中の作家達の中にも、熱烈ファンレターならともかく、添削
してほしい小説を送ってこられる方もいらっしゃるんでしょうね。

多忙を理由に断わればいいのに、評論家と知り合いだみたいなひとことで、
しぶしぶ小説を添削してやる人間味あふれる主人公が、いざとなると、鋭い
推理力で頼もしく変身するのは、ある意味「ダイハード」でもあります。


2005年06月05日(日) 五條瑛『地底に咲く花』

これは以前、ミステリーアンソロジー「紅迷宮」(祥伝社文庫)で読みましたね。
(2004.1.12記)五條瑛─ごじょうあきら、作家になる前は防衛庁で働いていた
女性なんです。関係ないけど、ゴルゴ13が頭の中をピュインとよぎりました。
ごじょう─ゴルゴ、似てませんか?ど、どんな方だろう・・五條瑛さま・・
会ってみたい〜、きっとクールで、理路整然とお話される素敵な方に違いない。
会いたい作家ベストテン(今、考えました!笑)入りです。^^

『地底に咲く花』は、建築現場の日雇い作業員と風俗嬢の出会いと別れに
入国管理法が絡む、ちょっと変わった社会派ミステリー。
主人公、安二の仕事仲間である金満(かねみつ)が、いい脇役っぷりを発揮
して、豊富な人生経験から得た、いいこと言うんですよ〜。うんうん、同感。。

去年読んだときとは、少し違う読後感です。益々惹かれます。五條瑛さま。
『地底に咲く花』というタイトルも、強い印象を残します。地底に花は咲かない、
はずなのにね。藤堂志津子の『乾いた雨』を思い出しました。こういう、エッ?
と思わせるタイトルの作品は、期待を裏切りません。
(藤堂志津子『乾いた雨』「贅沢な恋人たち」収録、幻冬舎文庫、2002.4.17記)


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