水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年05月29日(日) 法月綸太郎『都市伝説パズル』

都市伝説というと、最近は、「ケータイがつながらない時は、振るとつながる」
なんて聞きますが、この作品が見つめる都市伝説は、もっと古典的なもの。
「電気をつけなくて命拾いしたな」・・そう、あれです。恐い話のあれ!
そんな都市伝説に見立てた殺人事件をめぐって、作者と同じ名前の推理作家、
法月綸太郎と父親である法月警視が推理を競い合います。

隙を見せない畳み掛けていくような文章に、こちらが追い詰められていくよう。
推理作家になるには、頭脳明晰じゃないとムリなわけで、こういう質の高い
作品を読むときは、読み手の方も、頭スッキリ状態じゃないといけませんね。
そして、謎が解明されたとき、パズルはカチッと完成し・・。

2002年の第55回日本推理作家協会賞受賞作でしたか。納得!
名推理に惚れ惚れ。。ですが、犯人の心情を思うと、少し悲しくもあり。。

都市伝説ものなら、恩田陸の『魔術師』(「象と耳鳴り」収録、祥伝社文庫、
2003.5.22記)も、面白いですよ。


2005年05月21日(土) 高野和明『六時間後に君は死ぬ』

これがミステリーというのを読みたくなって選んだのが、日本推理作家協会編
「零時の犯罪予報」ミステリー傑作選46(講談社文庫)です。

(本によって、ミステリーだったり、ミステリィだったりするのは、短編と短篇
の違いくらい曖昧で、少々困惑します。日記の方も、ミステリーとミステリィが
混在しておりますが、特に意味はありません。)

オビのコピーが、強気ですね〜挑発されて買いました。素直なんですよ。(笑)
でも、先入観念は持たずに読むことに。ベストセラーを読むと、期待しすぎて
ガックリくること多いので。そんなことありませんか?

前置きが長くなってしまいましたが、10人の作家のミステリー短編集の始まりは
高野和明『六時間後に君は死ぬ』。人の未来がわかるという謎の青年に声を
掛けられ、「六時間後に君は死ぬ」と予言された元デート嬢は──。

時限サスペンスならではの緊張感に、六時間後という設定が効いてます。
六時間後なら、回避できる方法をギリギリ見つけられるはず!
出会いはファンタジー、整然とミステリー&サスペンス、ラストは綺麗ですね。

画像を追っていくような感覚は、アメリカで映画の演出・編集を学び、帰国後
脚本家として活躍中という高野和明の著者紹介を読んだから?それだけでは
なさそうです。


2005年05月08日(日) 永井するみ『ビスケット』

あたたかい想いに包まれました。

知鶴は、リフォームを希望する家を訪ねます。70代の夫婦がふたりで暮らす
家は、築35年。バリアフリーにして、手すりをつけて・・と考える夫人に対して
ご主人は……。

使い勝手が多少悪くても、長年住み慣れた家と、お互いの性格に嫌な面を
見ても、思いやりいたわりあう老夫婦には、どこか通じるものを感じます。
夫に甲斐甲斐しく尽くすことが生きがいのような妻と、頑固な夫。どこにでも
いそうな老夫婦だからこそ、ふたりの気持ちが胸に迫り、じーーーん。

ミステリィあり、老夫婦の愛情物語あり、知鶴の成長も見え、読みごたえが
たっぷり。インテリア・コーディネーターという仕事の大変さ、やりがい、喜び
も伝わってきます。

連作短編集「ランチタイム・ブルー」(集英社文庫)の最後を飾る『ビスケット』、
とても良かったです。森クンの立場もはっきりしてきました。
永井するみ様 続きをぜひ、お願いします。ぜひ!


2005年05月05日(木) 永井するみ『ウイークエンド・ハウス』

別荘で何かが起きる──。
別荘に集まる男と女たちに漂う空気は、キラキラとゴージャスで、めくるめく
ような淫靡さで……とくると、森瑤子の濃厚な世界になります。

永井するみは、清純派(なつかしい響き)なので、めくるめくは、ありません。
森瑤子なら、情熱の嵐吹きまくる激しい描写に移るところで、永井するみは、
恋人たちに、あとはおまかせ状態にしちゃうんですよ〜。
ラブシーンを書くのが照れ照れで、恋愛小説が書けないと悩んでいる人には、
ものすごーく参考になると思います。あ、こういう方法があるのか!ってね。

おっと、すみません。『ウイークエンド・ハウス』のことを話すんでした。
知鶴と森クンは、上司の広瀬さんが週末を過ごす蓼科の家に誘われます。
ウイークエンド・ハウスで何が起きるか・・それは、読んでのお楽しみ!
ハラハラした分、ほのぼのします。森クンが、“いいひと”から、一歩前進し、
頼もしくなりました。


2005年05月03日(火) 永井するみ『ムービング』

『ビルト・イン』に登場した営業の森クンが、予想の上をいくスピードで、知鶴に
接近してきました。いえ、電話したのは知鶴の方からですが。引っ越すことに
した知鶴は、不動産やで保証人が必要と言われ、森クンに頼むんです。
賃貸とはいえ、保証人ですよ!覚悟はいいの?森クン!

ふたりで物件を見に行き、偶然、その部屋から引っ越す女性と会ったことで、
森クンは──。

親切なのか、おせっかいなのか、嫉妬なのか、心配なのか、好意なのか恋心
なのか、スパイスは多種多様。いろんな気持ちが入り混じり、気持ちが乱れる
ほど、どんどん相手を意識していくものなんですね。

雨降って地固まる・・恋愛シーンでは、雨降らすのは自分というのも面白い。
降らせすぎには注意が必要ですけれど。

殺人の二文字がなくても、しっかりミステリィしてます。and 恋のはじまり♪は、
ほろにがくも甘いビターチョコ。


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