水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2004年04月27日(火) 服部まゆみ『葡萄酒の色』

軽井沢のある別荘に転がり込んできた画家が、そこに集う男女の平穏な日々に
小さな波紋を──。

んー、なんとか読み終えました。ストーリーは面白いんですが、読むのに疲れます。
会話がまどろっこしくて、スラスラ咀嚼できないのです。上流社会の人々は、
いつもこんなふうにお話をなさるのかしら?もう少し、気楽にお話していただかないと
わたくしも、いささか、困りますのよ。そうじゃなくて?そうそう、ご存知かしら…
と、こんな感じ。

ふぅー、この2-3行くらいで、ぐったりするくらいなので、上流社会ものは向いてない
ということですね。なぜか、安心しました。

作品に戻ると、画家があまり魅力的に思えないのが残念。
いえ、わたしが魅力に気づかないだけなのかも。。口下手で無口な画家が、
いつの間にか、美人と密会する仲になる、そのプロセスはどこに?どこに?
これも、わたしが気づいてないだけかもです。
もう一度読めばわかるかもしれませんが・・。


2004年04月26日(月) 篠田節子『ピジョン・ブラッド』

篠田節子というと、長編のイメージですけど、短編もいいですよ。
他に、宮部みゆきもそう。長編も短編も引き締まっていて素晴らしいです。
すぐ読み終わる短編より、じっくり楽しめる長編が好き、という人がいるけれど、
短編だって、楽しめます。ずっーーと心から離れない作品もたくさん。
もちろん、壮大なスケールで活躍する主人公の波乱万丈人生を追いかける
長編も大好きですが・・。要は、長さじゃないんですよね。

短編のシチュエーションの多くは男女の別れ(だと思います)。
篠田節子の描く恋の終わりは・・想いがあふれすぎて重過ぎるくらい。
自分から離れていく年下の恋人を引き戻そうとする『ピジョン・ブラッド』は、
こんな終わりは嫌だなあと思いながらも、どこか胸騒ぎを呼びます。

待ち暮らすだけの恋なんて、息詰まりそう。
男と女と鳩だけが彩る小さな世界は、不気味な余韻を残します。
最後の最後、そそそんな!のどんでん返しが哀しい・・。


2004年04月19日(月) 新津きよみ『彼女に流れる静かな時間』

ポストカプセル郵便をテーマにした怖ーいお話。
新津きよみらしく、女の怨念たっぷりで、短い割に読み応えは十分すぎるほど。

ポストカプセル郵便というのは、'85年に、つくば科学万博を記念して郵政省が企画した
もので、16年間郵便局で保管した手紙を、21世紀のお正月に配達したものです。
16年ぶりに届いた手紙を、ニュースで見たような記憶がありますけど、んー、
どうなんでしょうか?そんなサービスを申し込んだあとで、後悔した人はいなかったん
でしょうか?16年の間には、いろいろ変化がありますよね。住所や仕事や、、
一番肝心なとこは、人間関係かな。人の気持ちも微妙に変わるでしょうし。。

16年の時を経て、主人公の平穏な暮らしに飛び込んできた女友達からの手紙。
新津きよみが描く女友達って、どうしていつもこんなふうに底知れぬ恐ろしさを
秘めているのか、、このゾクゾク感はドクトク(独特)で、オトク(お得)な感じ。

ゾクゾク・ドクトク・オトク ゾクゾク・ドクトク・オトク──呪詛の言葉のよう。
『彼女に流れる静かな時間』、タイトルにナットク(納得)←しつこい?笑





2004年04月15日(木) 鷺沢萠さん、ご冥福をお祈りいたします。

軽快なエッセイが好きでした。公式HPの日記が、これまた面白くて。。


2年前、'02年の読書初めは、鷺沢萠さんの楽しいエッセイ集『途方もない放課後』でした。
続いて在日韓国人三世を主人公にした『君はこの国を好きか』『ほんとうの夏』を
読んで、鷺沢さん自身、クォーターという関りの中で描いた在日韓国人の葛藤や苦悶は
鷺沢さんだからこそ、書けたのだと思いました。

鷺沢さんが『君はこの国を好きか』を書いてから7年。
サッカー・ワールドカップの日韓共催、韓国映画・ドラマのヒットで、韓国は随分近くなりました。
NHKハングル語講座のテキストが売切れになるほどのブームを、『君はこの国を好きか』の
アミやジョンヒは予想していたでしょうか。その後のアミに会いたいと思っても、もうアミには
永遠に会えなくなってしまいました。

どれほど言葉を尽くしても、死んだ人には届かない。
溢れる想いを抱えていても、死んでしまったら、誰にも伝えられないのです。

突発的な出来事だと言ってしまうのは、あまりに寂しくて、悲しくて、やりきれなくて。




鷺沢萠さん、心よりご冥福をお祈りいたします。


2004年04月14日(水) 明野照葉『恋歌』

「結婚するとき、この人は運命の人だと思った?」と、何人かに聞いたら、どうしたの?
と怪訝な顔された後、結婚式や新居や引越しの準備でバタバタしちゃって、運命だなんて、
考えるヒマなかったわよーと、笑われました。ちょっと期待はずれ。。

うーん、みんな(といっても5人ですが)そうなのか・・。あなたは運命の人、死ぬまで一緒、
な〜んて、思わないのかな。誰かひとりでも、困難を乗り越えて運命の人と結ばれた話を
聞きたかったんですけど。結婚を反対された人もいなくて(みんな晩婚だからかも)。
つまんないな。。で、もしダンナさまが死んだら?って聞いたら、全員、同じ答えでした。
“気ままなひとり暮らししたいな〜恋愛はしてたいけど“だって!ええ、同感です。笑

『恋歌』── お互い運命の人だと信じて結婚したふたり。なのに、妻には、もっと強力な
運命の人があらわれて……。

この夫が悩むことに、運命的な出会いを得たあとでも、人は恋に落ちるものなのか、、
というのがあるんですけど、、、落ちるんじゃないでしょうか・・なんとなく、そう思います。
落ちないこともあれば、落ちることもある。と言う方が近いかな。。夫婦の関係に、僅かな
隙間が生じたときを狙って、次の運命が始まるような気がします。
運命の人って、さだめではなくて、自分が創りだしていくものかもしれないですね。

あ、運命、運命って口にする女性を妻にするには、相当の覚悟が必要ですよ。
何をしても、運命ですから。浮気をしても、運命の恋なの、なんて言われかねません。


2004年04月11日(日) 森真沙子『かもめ』

ヒッチハイク(←なんだか古語のような気がしますが、、)で、一人旅をしていた
女性が── 。(あわわ、ストーリー紹介が短すぎ!書き出すと長くなるので、
早めに切り上げました。笑)

路傍で手をあげて車を止める人を、一度も見たことないんですが、そういう人
いるんでしょうか。。いたら、嫌ですね、というか、危険でしょ!
長距離トラックは狙い目だとか、乗用車は誘惑してくるからダメだとか、、。
んもーー、主人公の考えること、することに、苛立ちが増すばかり。。
自分の都合のいいように自分で決めたルールなんて、甘い×甘い。。
誘う気持ちがなかったら、自分が誘いに乗ることはないのですよ。

楽しいはずの一人旅が、忌わしいものとなった主人公と、主人公が現場に
再び戻る日をじっと待っていたある女の対決が、凄まじいです。

最初から最後まで、緊張したまま。・・つ、疲れました。
読み終えて、ホッとできるかと思ったら、とんでもないラストが!
この続きを想像すると、、こーわーいーよーーーー!!

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桜が満開です。
今年は今年の桜が咲くように あなたの春も あたらしく。


2004年04月08日(木) 永井するみ『カラフル』

女友達が殺されて・・というお話。

事件が起きた後、部屋から持ち出されたある物が、犯人に結びついていく
過程が丁寧に描かれています。丁寧でも、説明し過ぎないバランスの良さが、
いい感じ。嘗て、『瑠璃光寺』が創元推理短編賞の最終候補作品になったとき、
北村薫と宮部みゆきに、「詳しく説明しすぎ」と評された永井するみ、『カラフル』
では、読者が知りたいことには、「訊かなかった」と巧く回避しています。
「訊かなかった」── 単純だけど、侵入を拒みつつ興味を引く言葉です。



・・男の人って、どうして若い女の子が好きなの?あ、唐突な質問でした?
それとも、愚問?好きになった相手が、たまたま若かった、というケースも
あるでしょうし、その子の若さゆえのひたむきな想いに引っ張られた、なんて
ケースもあるかもしれないし、、、、まあ、いろいろですよね。

「どうしてあんな子供がいいの?」というセリフが、なぜか頭から離れません。


2004年04月04日(日) 宮部みゆき『おたすけぶち』

予定通り、「緋迷宮」(祥伝社文庫)に飛び込みました!これも10編のアンソロジー。
スタートは宮部みゆきです。ウフッ、ふれしいぃ〜♪(←ふふっ+うれしい)

『おたすけぶち』というタイトルから時代小説かと思ったら、ぜんぜん違う、、
ちょっと変わった、少しヒネリが効いたミステリーホラーなのです。
山道の途中にある事故多発地帯のカーブ。運転を誤ると、そう、車は深い淵に・・。
地元の人たちが“おたすけ淵”と呼ぶ場所に、とんでもない秘密が!

山道での車の事故=スピード出し過ぎ、と考えるのは、あまりに短絡的ですよね。
でも、ほとんどの人は、事故のニュースを耳にした時に、その原因をスピードと
結びつけるのではないでしょうか。。思い込みで、事故を完結させようとする気が
します。

日本のどこかに、ありそうな気がしてくる『おたすけぶち』。
怖い結末を知ったら、山道の運転に臆病になるかも。


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