水野の図書室
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実りの秋になりました。皆さまも体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2003年10月31日(金) 田辺聖子『荷造りはもうすませて』

これは、少々ややこしい人間関係です。
元妻が再婚に破れて、義母と子供たちが暮らす家に戻ってきた時、新しい妻と
別世帯で新しい生活を始めていた男は──。

結婚生活を大切にしてくれる夫に感謝しつつも、元妻と子供たちに会いに行く
夫にやり場のない寂しさむなしさを感じる妻・・つ、つらすぎます〜。

わたしなら耐えられません・・たぶん。
なんだか取り残されたような妻の気持ちがわかるような気がします。
子供たちにとっては、父であり母であり・・本来の家族なんですから。
家族が揃う姿を外から想像する妻は、妻であっても比重は愛人みたいで、
婚姻届の紙切れ一枚でつながれた、あやうい存在。

結構重いテーマを関西弁の会話が救ってくれてます。普段使わない言葉で
読むと、ワンクッションおいた感じで。ということは、関西弁の人にとっては、
他人事とは思えない、身にぎゅんぎゅん迫るものがあるかもしれません。

そうそう、荷造り、って意味深ですよね。
『お茶があつくてのめません』的な、肩の力を抜いたタイトルセンスの良さは
田辺聖子の魅力のひとつと受け止めてます。


2003年10月30日(木) 田辺聖子『それだけのこと』

友達以上、恋人未満な人はいますか?
少し距離をおいてつきあえる関係って、いいですよね〜。

毎日会おうなんて言われないし、日曜をあけておくこともないし。。
で、情報交換兼ねて美味しいものを食べたい時は、すぐ誘える。
待ちあわせは19時半が暗黙の約束なので、「今夜あそこの鴨鍋ど?」「了解」
ってな感じでメールの短いこと!先約ある場合は断わっても No hay bronca.
断わる理由を伝えなくても、極端な話「今日×明日○」で可。

食べて飲んで意見しあって励ましあって、ワリカンで店を出る。
ワリカンは重要ポイント。万一、「奢ってやるよ」と言われたら「サンキュ♪」で
小銭をサッと気前良く(笑)供出。そのため財布には、いつも小銭がスタンバイ。

店を出たら、「おやすみなさーい」とくるりと背を向ける。ここ最大のポイント。
うっかり、「これから、どこか行く?」なんて、間違っても口にしてはいけない。
【ニュースステーション】に間にあわなくても、【NEWS 23】には帰宅。
話がどんなに尽きなくても、【きょうの出来事】には絶対帰宅。これ鉄則なり。
お互いズケズケ批判しても、機密は洩らさず、くちびる寄せず。
うーん、、ある意味濃密ですねー。
居心地の良さを続けるためには、いろいろ思いめぐらさなくちゃいけません。
お互い、妻(夫)や恋人のワルクチを言わないとか。これがキーポイントかも。

あん、前置きがすっごく長くなってしまいました。
『それだけのこと』── 仕事人間の夫をもつ人妻と年下の男の微妙な関係。
ふたりだけでお祭り?ドライブ?それは、まずいでしょ〜とつっこみどころありすぎ
だけど、そっかー、いいんじゃないと思ってしまう不思議ワールド。
妙な明るさが楽しいです。


2003年10月29日(水) 田辺聖子『恋の棺』

かかか、官能的ですぅ〜。(すっごく照れてますぅ。うふん)

この作品、以前にも読んでます。山田詠美セレクション・せつない話を集めた
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)に収録されてました。(2002.9.22記)
覚えてますよー、覚えてますとも。19歳の甥と29歳の叔母の恋物語。

約1年ぶりにまた読んで・・・・・ん?以前とは少し違う印象です。
去年読んだ時は、甥と叔母という関係に生理的な嫌悪感を持ちました。
今度は、、嫌悪感は拭えないものの、余裕を感じさせる叔母にすごいなぁ〜
なんて。。あはっ。。オトナの女の熟れたニオイがプンプンします。
はふぅ〜むせかえりそう。行間から立ち昇るフェロモン・・くく苦しー、息苦しいー。

官能的といっても、攻撃的な文章ではなく、ゆるゆる効いてくる漢方の処方箋。
叔母が甥をどんなふうに考えているのか1行で見せる書き出しは、巧いですね。

こんなことになって、甥はストーカーと化すのでは・・。
なんて、胸騒ぎも。嗚呼、妄想が妄想を呼びます。


2003年10月28日(火) 田辺聖子『うすうす知ってた』

これもなかなか面白い設定です。
結婚を夢見る姉と、実際結婚に向けて着実にすすむ妹。
妹が婚約者を家に連れてくる事になり、姉は嬉しく恥ずかしく……。

姉思いの妹、妹思いの姉、明るい母、ちょっと気がきく妹の婚約者のキャスト
四人のキャラがしっかり。それぞれの顔も姿もはっきりして、3D読書感覚。
(読んでるんだけど、ドラマ見てるみたいな感じなのです)

で、特筆すべきは妹の下半身描写!──いやん×きゃん×刺激的。。
田辺聖子って、気さくなおばさん風の顔写真からは想像できない言葉をたくさん
投げてくるんです。どぎまぎしちゃったじゃないですか!
それほど興奮するシーンじゃないのに。いやはや、落ち着け落ち着け。

感情移入はいつの間にか姉の方に。
がんばれ!お姉ちゃん!
結婚に憧れる前に、素敵な恋をする方がいいですよー♪


2003年10月24日(金) 田辺聖子『お茶が熱くてのめません』

けやき通りは秋も深まり、燃えるような美しさです。朝晩肌寒くなりました。
晩秋の気配に人恋しくて、せつない恋物語を本屋さんで探すこと十分。
こんなときは、田辺聖子でしょう。と、「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫)を発見!
まもなく公開の映画「ジョゼと虎と魚たち」の原作です。犬童一心監督、渡辺あや
脚本、妻夫木聡&池脇千鶴主演、音楽・くるり、です。観る前に読んでおくのも
いいですよ。

表題作の他に八編も収録の贅沢さ!この一冊で読書タイムがキラリ度アップ
間違いなしの予感です。

最初の作品は『お茶が熱くてのめません』。
七年ぶりに会った昔の恋人。事業に失敗し妻子に出て行かれた男と対照的に、
女は独身のまま、脚本家としての道を歩み始めていました。面変わりして老けた
昔の恋人が女に話したことは──。

はぁ〜@@、そ、そんなぁ〜、男としてダメダメですねー。引いちゃいますよ。
昔の恋人には、それなりに素敵に歳を重ねていてほしいです。仕事が順調で
なくても(ビジョンがあれば)、離婚していても(恋をしていたら)、知性と色気が
漂うんじゃないでしょうか。

かつて愛した女を目の前にして、呼び方に戸惑う男心と、愛した男だからこそ
その心模様がわかってしまい、もどかしい女心が絶妙に絡み合って、こちらも
せつなくてせつなくて。。。苦手な大阪弁のセリフも、田辺聖子の手にかかると、
不思議としっくりきて、人間味あふれる憎めない男ができあがりました。

何を言いたいのかわからなかったタイトルは、読み終えて振り返れば、これほど
ぴったりなタイトルはなく、どうしていいのかわからない女の心情そのもの。
そして、胸の奥をチクリと刺す痛みは心地良く・・。


2003年10月20日(月) 多島斗志之『お蝶ごろし』

多島斗志之の短編集「追憶列車」(角川文庫)最後を締めるのは、『お蝶ごろし』。
清水の次郎長の三人目の妻、お蝶が男女のもつれから殺されるお話です。
書き出しで、すぐに殺されたことがわかって、その時がどんなふうにやってくるか、
もードキドキしっぱなし。

時代モノは苦手なんですが、(漢字がつらくて、日本史より世界史派だった。笑)
なぜかスルスルと立ち止まらずに読めました。『お蝶ごろし』に限らず、どの作品も
読みやすいですね。なぜ、こんなに読みやすいのかとふと考えて、はっとしたのは、
ムダがないからなんですね。あん、またエラソーに、堪忍してくだしゃんせ。

ムダがないので、『追憶列車』や『虜囚の寺』は、短かすぎると思ってしまうんじゃ
ござんせんでしょうか。まあ、読んでおくんなせえ。時に、電子文をくださる方が
おって、「読んだ気になります」とおっしゃられますが、なんだか変でござんす。
読んでおくんなせえ、読んでおくんなせえ。


  ───あわわ、、すっかりお蝶さんになりきってしまったようで・・。

明日、電話に「へい、水野でござんす」と言ってしまいそうで怖いよー、親分っ!


2003年10月17日(金) 多島斗志之『虜囚の寺』

昨日は『追憶列車』に乗り、第二次世界大戦末期の仏独国境へ行って来ました。
今日は『虜囚の寺』で、日露戦争時の四国松山、道後温泉が舞台です。
あん・・ページ捲った途端にベルリンから松山。き、きついわ・・。
時差があるんですよ〜。本の中にも。すぐに順応できないのです。
で、ちょっと心の用意を。
  ・
  ・
ほほっ──う、当時の松山にはロシアの捕虜があふれていたんですね─。
人口三万の町に、捕虜が二千人以上も収容されていたなんて!
知りませんでしたっ!ハーグ条約(戦争の捕虜を人道的に扱うっていう約束ね)
のおかげで、捕虜たちは護衛の兵に引率されて、町を出歩き、道後温泉へも
行っていたなんて!知ってた?なんだか興味しんしんモードになるでしょ?

収容所として使われていたのは、ほうぼうの寺。うーん、不思議な情景です。。。
そして、四国は島。脱走して船で海へ漕ぎ出せば、沖を通る外国の貨物船に
救出されるかもしれません。ロシアの中尉、セルビン(小川で魚を捕る時に使う
入口に返しのついたビン、セルビンと同じ名前なのは皮肉ね)は逃亡しようと──。

あーん、これも短い、短すぎる、短編じゃなくて長編にしてくださいまし── !!

道後温泉で働く娘と捕虜のはかないふれあい(はかなすぎる・・・しくしく)に、
収容所の所長と捕虜の緊張感漂うふれあい、じゃなくて、カケヒキやら、ロシア
から捕虜になった父親に会いに来た母娘、(戦争中にこんなことがあったの?)
と主軸以外に盛りだくさん。長編にしてほしい短編ランキング(今、考えた。笑)
に入れたいです。

他に、長編にしてほしい短編小説といったら、
瀬名秀明『Gene』 (「ゆがんだ闇」、角川ホラー文庫収録、2002.01.21記)と、
真保裕一『盗聴』(「盗聴」、講談社文庫表題作、2002.04.21記)がすぐ浮かびます。

ぜひぜひ長編に─!


2003年10月16日(木) 多島斗志之『追憶列車』

いきなり、時代は第二次世界大戦末期へ。フランスに滞在していた日本人
たちが、大使館からの指示で全員ベルリンへと逃げることになり、撤退する
ドイツ軍の軍用列車でパリを脱出します。

タイトルからおわかりのように、当時を回想する形で物語は始まります。
50年前、15歳の少年だった主人公が出会った少女は16歳。
普段なら一昼夜で着くはずのパリ─ベルリン間ですが、スピットファイアの
銃撃、爆撃された線路の補修、機関車の故障などで、停車ばかり。
少女に抱いた少年の淡い恋心は──。

邦人の疎開という珍しい題材に驚きつつ、一気に読んだら・・あっという間に
ベルリン到着。短い、短すぎる、短編では描ききれない何かがあるんです。

≪≪多島さま───、長編にして〜〜〜、お願いしますっ!!≫≫

同じ列車に、やっと追いついて乗り込んだところで、ハイ到着と放り出され
た感じ。まだ降りたくないのにぃぃ〜。←困った客だ。


2003年10月12日(日) 多島斗志之『預け物』

はふぅ〜、読み終えて疲れましたー。短いストーリーなんですが、くるくる
変わる場面についていくのが、大変です。
主婦が、友人に預けていた物を取りに行くと、その友人は急死していて、
肝心な物は人の手から手へ渡っていたのです。
主婦が必死になって預け物を探す、その訳は──。

スリリングと言えば、スリリングですが、うーむ、いまいち・・・・です。
いくら小説の世界でも、こんなに次々に預け物を知る人と会えるなんて!
面白いを通り越して、面白いが薄まっていきました。
ほら、美味しい物をたくさん食べ過ぎると、美味しいが薄くなっていき、
おなかが苦しいになるでしょ? そんな状態なんです。

面白いが薄まっていくと・・疲れた、と、なりがち。
作者は、もっともっともぉーーーっと、面白くしようと、いろいろいろいろぉ
考えたんだと思います。なのに、盛りだくさんすぎたようで、、。
控えめなら、読者に物足りないと言われ、過ぎれば、疲れたと言われ、
小説って、難しいですね。同じ作品でも、読んだ時期によって面白さも
違うし、以前は少しも面白くなかったものが、エッ!こんなに面白かったの?
なんてこともあります。

次は表題作、『追憶列車』。タイトルはわたし好み♪


2003年10月10日(金) 多島斗志之『マリア観音』

川島誠の次は多島斗志之・・ん?島つながり?No, No, 単なる偶然です。
「追憶列車」(角川文庫)を選んだのは、文庫本のオビに掴ったから。
○○氏絶賛!タイプだと引いてしまうわたしにとって、こういうオビは
いい感じ♪「スリリング」と「エモーショナル」の文字に胸躍り、いつもなら
最初の1ページは読むのに、試着、じゃなく試読なしで買ってしまいました。

で、家に帰ってからゆっくり読み始めたところです。
5編の短編集の初めは『マリア観音』。ある主婦が自分に近づく謎の女の
姿を追っていくと──。と、いうお話。妻の帰宅が遅い=浮気、と考える
夫に、いきなりカックンときました。笑。あひゃ、わかりやすい夫です。

今どきの妻は、浮気よりもっと楽しいことで帰宅が遅くなるのですよ〜。
夫が考えるほど、妻は浮気なんてしてません、って。(面倒だもん♪)
ジムとかエステとかプールとかフラメンコとか、フランス語教室とか小説の
書き方講座とか選挙の出口調査員アルバイトの説明会とかで、遅くなるの
ですよ〜。(かなり特殊な妻かも)

読後感はエモーショナル。スリリングはちょっと物足りないかな。
でも、まずまずの好感触。作品を温めてるのは、優しい夫のようです。


2003年10月04日(土) 川島誠『消える。』

「セカンド・ショット」(角川文庫)の最後の作品になりました。
9月から、いつもバッグに入れていたので、なんだかすごーく、読み込んで
いるような充実感があって、うーん、読書の秋ですね〜。しみじみ。。
最近、読むペースが減速していくばかりですが、じっくり読むのも大切よ。
しゃっくりしながら読むのは大変だけど。(ぐふ、言って疲れた。あぅぅ。)


『消える。』は、主人公の“ぼく”が、何やらブツブツ呟いております。
運動会や算数の話から、小学生のようですね〜。
饒舌な小学生です。特にストーリーはなく、ブツブツブツブツ・・・・・。

小学生のたわいもない話に、うんうん気軽につきあっていくと、、
実はその奥に偉大な真実があるのです。(←深読みしすぎかにゃ〜?)


9編の中で印象的なのは、表題作『セカンド・ショット』。『サドゥン・デス』も
良かったです。今まであまり読んでなかった分野で新鮮でした。


2003年10月02日(木) 川島誠『セビージャ』

スペインの都市、セビージャが舞台です。
短編集一連の男の子は、大きくなって(?)大学生に。んー、どしたの?
一気に老け込んでます。少年と大人の間の倦怠感をどこんどこん背負って、
スペインに着いたものの、何がしたいわけでもなく、胸を焦がす憧れもなく・・。
所持金の残りを心配することもなく、、あ、親の遺産がたくさんあるんですよ。
都心のビルのテナント料が自分の口座に振り込まれるなんて、、、

・・・つまんないですよね。やん、小説のことじゃなく、お金の心配しなくていい
生活なんて、つまんないですよ。きっと。

作者はなぜ、セビージャを選んだのでしょう?
セビージャ、から広がるイメージが主人公によく似合っています。
なぜか耳(目)に残ります。セビージャ。

関係ないけど、
ガスパジャー  ← ロシア語で「〜夫人」
ガオレンジャー ← ご存知(かどうかわかりませんが)「百獣戦隊」
ジャージャー麺 ← 漢字にすると「炸醤麺」

じゃあ、またね☆


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