古風な研究室と言った趣の「アジト」とやらに着いた。
魔力を使うのがもったいないので歩いて行った。
偉く面倒で「わしは一体何をしているのか」といった素朴な疑問も持ちつつ。
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一応、気配を消すために実体化を解き、中へと進む。
中には、余り見たくない培養液に浸けられた胎児のカプセルが無数にあった。
(こんな感じで・・・話の通りか・・・・)
中では、老人(異様に大きい。きっと自分のカラダにも何かを施したのだろう)が一人で作業をしていた。
暫く後、大牙に連れられた理人が入ってきた。
明らかにおかしな目つきの理人。
過去で会った男が言っている事を思い出しながら、それを見つめていた。
わけのわからない講釈を延べながら、理人にコードの様なモノを取り付け、何かを計測し、また講釈をたれた。
その後、理人は綺麗なお姉さんに連れられて別室に行った。
理人は、疏埜馥に渡されたナイフを持っていなかった。
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(不良品じゃなかった…ってことは、力とやらは大量に得られるわけだ)
理人の心の呟きが聞こえる。
『不良品じゃない』ということの重大さをわかっていないと思った。 過去に会った男の話が本当ならばだが・・・。
「…ふふ…」 ほくそ笑む理人。
「好都合じゃないか…これなら…」 これなら『大量に殺戮するマシーンになっても構わない』とでも? それとも何か別の・・・
「・・・随分と、楽しそうだな」 姿を現しながらわしは話しかけた。
「誰だ」
「わしだ」 ナイフを持っていないと言う苛立たしさから、少々語気を強めて吐いた。
「Lucifer=Lineheart…」
沈黙した部屋。 理人が切り出す。
「何しに来た」 至極当然の質問。
「恥と外聞を捨てた小僧の見物だ」 まだ本当のことを伝えられないわし。
「…………」
「これが僕の決めたやり方だ。あなたは日和見して、疏埜馥姉さんを護っていればいい」 (「何を決めたのかわからんが、死ぬなよ」と言おうと思ったが止めた。)
「元よりそのつもりだが?」 あっさりと。
「で…用件はそれだけ?」
「わしがそんなに暇であるわけがないだろう」
「…だろうね」
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わしは、理人が一息ついたところで、理人に向けて呪文を唱えた。
理人の深層心理に働きかける魔法をかけておいた。
発動するかしないかは、理人の心が完全に「力」に塗りつぶされていないかどうかによるだろうが。
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「さて、元気な顔を見たことだし、愛する妻の元にでも帰ろうかね」
「惚気るな、コク王め」
「まぁ、そういうなよ。無事に出て来れたら、お見合いでもするか?」
「・・・・さっさと帰れよ」
「あ、一つ忘れてた」
「何だよ、全く」
「ナイフ、持って来させるから、ちゃんと持ってろよ」
「ん?ナイフ?」
「まぁ、そんだけだ。じゃあな」
「おい、何だよ、ナイフって?」
理人の問いかけには答えずに、部屋を出た。
後は、理人と仲間、そしてナイフが何とかするだろう・・・
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