| 2003年02月24日(月) |
《過去へ》(Lucifer=Lineheart side) |
ある日の王宮。
外では、何やら戦闘が始まっている。
そう・・・もう、遠い昔から、今日この場所で戦いが起こることはわかっていた。
わかっていても、止めることはない。
これは、それぞれの戦いであり、自分自身が何者なのかをわかるための「痛み」なのだから・・・。
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誰も居ない王室で魔法陣を引き、呪文を唱える。
「さて・・・このくらいの時間・・・でいいか・・・・」
わしは禁呪の一つ、『時空魔法』を唱えて、過去へと向かった。
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降り立った先に、見たことのあるような子供が遊んでいた。
とりあえずここが「狙った場所」なのか確認しなければ。
疏埜馥の記憶をたどり、この場所が間違いではないことを確認した。
「こんにちわ」
『「こんにちは・・・」』
「お父さんは居るかな?」
『うん・・・家に居るよ^^』
中に入ると、男と女が居た。
「初めまして、Lucifer=Lineheartと申す者です。」
男は、初めて見る男に警戒心を強めていた。 が、息を付いた瞬間にわしは呪文を唱えた。
男と女は止まった。
「さて、キチンとした話をしましょう。あなた方の狙いは何なんだ?」
男は話そうとしない。無論女もだ。
「まぁいい。話さないと思って、こちらも考えてきたんでね・・・」
わしは、未来に起こる(現在においては進行形ではあるが)出来事を断片的に捉えた「記憶」を二人に植え付けた。
「記憶」を植え付けて暫くして、男は話した。
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どのくらい話しただろうか・・・・。
わしは、男から全てを聞いた。女は泣いていた。
「まぁ、わしにはどうすることも出来ないが、二人にはやってもらわなければならないことがあるみたいだ。さて・・・」
未来は決まっている。
「わしはお二人に『ある状態になると発動する呪文』をかけさせていただこう。貴方には、意思を物質に閉じこめる呪文を。そして貴女にはそれを人に託す呪文を。痛くも痒くもないだろうが、確実に発動する。そして、それがなければ、お二人の子供達は永遠に・・・」
永遠に・・・・
その先は聞こえていたのだろうか・・・。
わしは二人に今あった出来事を忘れる術をかけ、外へ出た。
忘れさせるのは、先入観があると術がかかりにくくなるからだ。
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外では、さっきの子供達が遊んでいた。
ユマと、きっと・・・
「君がユマかな?」
「うん」
「そか、じゃあ・・・」
わしは、疏埜馥と思う方の頬を撫でた。
こんなに幼いのに、抗えないほどの魔力を発している。
直ぐに感じ取れた。
「名前は?」
『・・・ルナ』
「ルナか・・」
『うん』
まだ力がどういうものかわかっていないのだろう。
体中から電流を発しているかのように、わしに伝わってくる。
(まだ暴走はしてないのだな・・・) 心の中で発した声。
『暴走?』 疏埜馥(ルナ)には読みとられる。
「ん?ああ、気にするな」
隣でユマは「何が起きてる?」といった顔をしていた。
「おい!僕の妹達になんか用なのか?!」
元気のいい小僧がいきなりわしの胸ぐらを掴んだ。
「アイリッシュか・・・」
「何故、僕の名を・・」 驚いて尻餅を突くアイリッシュ。
『アイ兄・・・この人は・・何もしてないし、優しい人よ^^』
「ルナ・・・」
わしはおどけたポーズをして、アイリッシュを引き起こした。
(疏埜馥は、まだ居ないのだな・・・)
ルナだけが怪訝そうな顔をしている。
心が読めるのはルナだけだし、疏埜馥が作られるのは、もう少し後だからだ。
「ルナ、頑張るんだぞ・・・なにがあっても・・」
『おじさん・・・おじさんは誰?』
(おじさんかぁ・・・・まぁ、おじさんだよなぁ) わしは心の中で苦笑してルナにこう言った。
「・・・・・・また、会えるよ」
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わしは物陰まで歩を進め、時空を越えて王室に戻った。
外では、まだ戦いが続いている。
わしの術が発動していたかどうかは、まだわからない。
ただ言えることは、母親から疏埜馥が貰い受けたナイフだけが知っている。
「さて・・・次はあそこか・・・・」
わしは、『アジト』とやらに向かった。
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