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2003年10月05日(日) 辛くっても、寂しくっても、自由。●エドウィン・マルハウス(スティーブン・ミルハウザー)

●恋人が今朝、渡欧した。向こうで一年間仕事をする。

 日本を離れる前夜の食事には、寿司を選んだ。
 日本酒をのんびりと干しつつ、美味しい魚貝を少しずつ、何か話そうと思うのだけれどことばが出てこず、ただただお互いの顔を見つめるばかり。
 予約してあったホテルにチェックインし、バーでまた、珍しくヘレス酒を飲む。少しずつ、ふだんの二人に戻り、ふとした話題がぽつりぽつり。いつも、この、ふとした話題があれこれと枝葉を広げ、思わぬ軽やかな気持ちを味わったり、思わぬ深遠な哲学に至ったりする、その時間が好きだった。この時間を1年間失ってしまうのだな、と、実感する。

 お互いを見て、夜を過ごす。でも、それぞれに過酷な仕事を終えてきたばかりなので、疲れの中であっという間に二人して眠くなる。せっかくの最後の夜がもったいないとお互いに言い交わし、1時間後に目覚ましをかけて眠ったら、やっぱり二人とも目覚めたときには、もう別れのせまった朝の時間だった。
 二人で過ごした時間、よく笑って、よくはしゃいで、わたしはひとしきり泣き、彼は少しだけ目を赤くした。

 辛くなりそうなので、わたしはフロントに向かう彼には伴わず、そのまま地下鉄の連絡通路へ。
 エレベーターの扉が、わたしの視界に映る彼の姿を、シャットアウトして、それで「行ってらっしゃい」。
 わたしは日曜日の空いた電車に乗り込み、家に帰り、すぐに仕事道具を抱えて次の仕事場に向かった。

●わたしは一人になってしまったけれど、とっても自由な気持ちだ。
 わたしはわたしであって。
 辛くっても、寂しくっても、自分の求める方に歩いているというこの感じが、とっても自由だ。誰になんと言われようが、自分が選んだことばかりだもの。
 


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