其のひとに会いたくて、 - 2012年05月14日(月) 其のひとに会うことはそう頻繁なことではない。 けれどその少ない機会に、必ず身体を重ねてしまっている。 いろんな人たちを裏切りながら。 しかし罪の重さ以上に、快楽の誘惑に抗えない私たちがいる。 あの指に、腕に、唇に。私は完全に囚われている。 其のひとは優しい言葉で私を慰めてくれるし、励ましてくれる。 だから私は仕事のことを誰よりもまず其のひとに相談する。 しかし私を抱いている時に見降ろす其のひとの目はどこまでも冷酷で。 その冷酷な目が、しかし私は何よりも好きなのだ。 その目の冷たさと、自分の中に在る彼自身の熱との裏腹さに。 多分何よりも欲情する。 恐らくすぐ訪れるであろう終わりを、常に覚悟しながら。 私たちはあと何回身体を重ねるのだろうか。 それ以上に、いつも不安が付き纏う。 彼にとって私は、一体どういう存在なんだろう、と。 大切な存在でないなら、それはそれで構わない。 けれど終わりにしたいのなら、はっきりと言葉で伝えて欲しい。 あなたの負担になることが、私は最も恐ろしいのだから。 -
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