◆2002年日本選手権シリーズ第二戦 読売ジャイアンツ×西武ライオンズ�◆陛豕�ドーム)巨人2勝 西武 000 001 021 │4 巨人 106 000 20X │9 勝ち投手 桑田1勝 負け投手 石井1敗 【西】石井、許銘傑、三井、森−伊東、野田 【巨】桑田、岡島、前田−阿部 本塁打 カブレラ2号2ラン(8回・岡島) 【戦評】巨人が一気呵成の攻撃で試合を決めた。初回に松井の適時二塁打で先制すると、三回は5連打を含む7長短打で一挙6点を奪い勝負あり。巨人先発・桑田は要所を締める粘り強い投球で7回まで1失点。西武は反撃が遅く、序盤の好機を走塁ミスや併殺打で潰したのが大きく響いた。 巨人に向く順の目、西武に向く逆の目。もし野球の神様がいるのなら、時に気紛れという名の残酷を演出するものなのかも知れない。それだけこのシリーズ、流れという要素がハッキリと分かれている。 西武の野球がどこかおかしい。全体的にチグハグさが目立ち、特に攻撃面では荒さが目立つ。淡白と言い換えてもいいその歯車は、第二戦でも空回りを続けた。 第二戦の一回表、二死満塁。桑田の二塁牽制を仁志がこぼし、一瞬そのボールを見失った。その隙に三塁ランナー小関が本塁を狙ったが、落ち付いた仁志の送球と阿部の好ブロックがそれを阻んだ。立ち上がりに迎えた絶体絶命のピンチを桑田が脱した時点で、この試合の流れも八割方決まったと言っていい。 GOの指令を下した伊原の判断が間違っていたとは思わない。恐らく少しでも送球がミットより逸れていたら、小関の足はホームベースに潜り込んでいた筈である。ただ、打席には前日の第一戦で2安打を放ち阪神時代に桑田と対戦経験のある平尾。結果論だが、西武らしからぬリスキーなギャンブルだった。 確かに西武野球の持ち味は、僅かな相手の隙にもつけこんでくるしたたかさとソツの無さだ。そしてそれは、言い換えれば「伊原野球」と言ってもいい。87年の日本シリーズ、クロマティの緩慢な返球と川相の無警戒を瞬時に見極め一塁から辻を生還させた判断、タッチアップで二塁から清原を一気に本塁に突入させた機知・・・例に挙げるまでもない「伝説」の側には、常に伊原の姿がある。 だが今の西武は、そんな自分達が築いてきた「野球玄人」の足枷が邪魔になっているような気がする。「西武らしさ」を出そうとする余り、野球が余所行きになっているような気がしてならない。 第一戦、先頭打者の松井稼がいきなりプレイボールヒットを放つものの、小関の送りバントが捕手前に転がり二塁封殺。続く2回も、先頭の平尾が中越え二塁打で絶好機をつくるものの、7番に入った松坂が初球を簡単に打ち上げて走者を進められず、そのまま好機を潰した。 いつもの西武らしさを出したかったのなら、松井稼をいきなり走らせたりエンドランを仕掛ける方が驚異的だった。好機を潰した直後の絶好機、確率論に立ち戻ってまず主導権を握るなら、そこで走者を進めることを考えてもいい。先発陣を信頼するあまり試合が壊れるまでマウンドに集まらなかった松沼コーチや内野陣も含めて、どうにも試合の流れを掴めないまま個人ばかりにスポットが当たる。普段着野球と言うよりは殿様野球で、少なくともこれは私の知っている西武野球ではない。 昨年の日本シリーズを思い出す。スターティングオーダーを固定し、シーズン中と全く変わらない野球を展開したヤクルト。遊撃に中村を回してまで「いてまえ野球」を過剰に演出してしまい、ローズの度重なる走塁死や方程式の定めない継投で傷口を広げ続けた近鉄。ヤクルトが4勝1敗と圧倒した要因は、その意味通りの「普段通り」を出せたか否か、その差でしかない。ヤクルトは100%の力でシリーズに望んだが、近鉄は「普段通り」を意識し過ぎて半分の力も出せなかった。 「普段通り」を意識に入れ過ぎると策がどうしても後手後手になる。終盤の1点ビハインドという山場で守護神・大塚を投入せず流れを引き寄せられなかった近鉄と同様に、西武も試合が壊れるまで継投のカードを切ってこない。 バース、掛布、岡田らを擁して「新ダイナマイト打線」と呼ばれた85年の阪神だって、6試合で総得点は僅か27。常識の範囲で考えるならば4〜5点の争いになるのが日本シリーズだが、それ以上に踏ん張ってくれると先発陣に過剰な信頼を置き、松井稼、カブレラ、和田らがいれば4〜5点は簡単に取れるという野球をやっているように見える。シリーズにはシリーズの闘い方があるが、「普段通り」をベースにしたシリーズの闘い方というものは、そこまで簡単なものではない。 巨人の闘い方には迷いが無い。走る場面では積極的に塁をかき回し、シーズン中と変わらない奔放で豪快、かつ細かな野球をしてきている。第一戦先発の上原はシーズン通りフォークに頼らない投球で立ち直り、桑田は焦りにはやる西武打者の心理を逆手に取るような、普段通り捉え所のない投球を見せた。アマ時代を含めて大きな舞台の経験の差というものは小さくない要因の筈だ。 西武がシリーズの流れを逆転させるには、所沢で3連勝することが最低条件になってきた。それだけの崖っぷちに追い込まれたということだが、DHが使える所沢でシーズン中の野球を思い出せなければ、焦りと歯車の狂いはスパイラルのように大きくなっていく。そうなれば、まさしく終戦。 対戦相手の“光”を消すことが、西武野球がイヤらしいと言われる最大の要因であり強みでもある。だが今は、巨人の文字通り巨大な“影”の前に、西武の“光”が消されている。その巨大さこそが、巨人の強みである。
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