月の輪通信 日々の想い
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2004年04月28日(水) フレーフレー その後

オニイのストレスの源が判明した。
詳しくは述べられないけれど、オニイ自身の思い込みや取り越し苦労に由来している部分が多いこともわかった。
母、朝から行動に移る。
学校と連絡を取った結果、担任のT先生がその日のうちに来て下さることになった。
夕食前のあわただしい時間に急な家庭訪問。
「ありゃりゃ、お掃除しなくっちゃ。」
いつも子ども達がTVをみたりPCで遊んだりしている居間をばたばたとお掃除し、夕食の下ごしらえまで済ませてT先生を待つ。
先生が来てくださると判った時点ですでにオニイの表情は明るくなっている。

夕暮れ時、車をびゅんと飛ばしてやってきたT先生は、「どんな様子ですか」とここ数日のオニイの様子を聞かれた。
「それはもう『不登校』の状態ですね。」
登校する時間になると急に体の不調が現れ、「学校に行きたくない」というよりは、「学校に行けない」状態に陥ってしまう。
学校を休んで、自分の好きなことに集中しているときには症状は軽くなる。
大人から見るとなんでもないちょっとしたつまずきを、一人で悩むことでどんどん大きくしていってしまう。
一年のとき、上級生からのいじめにあってもめげなかったオニイが、今回は
それから見ると本当に些細な、まだ起こってもいない事態を心配して陥ってしまったことに驚いておられた。

「本当に君が心配なのはどんなことなのかな。」
「実際にはどんなことが起こると思う?」
「それで、実際にそういうことをいいそうな人はだれなの?」
担任2年目のT先生は、オニイと話をして彼が一人で行き詰まりがんじがらめに縺れさせてしまった気持ちの糸を一つ一つ解きほぐしてくださったようだ。
1時間弱のお話の中で、オニイは自分の中で過大に心配しすぎていたことや誤解していたことを少しずつ整理して考えていけるようになったきたのだろう。
「だれにも理解してもらえない」「相談してもどうにもならない」と考えていることも、誰かに話をすることで自分で解決する糸口が見つかったり、違う見方が出来るようになったりすることがあるのだと判ったのだろうと思う。
「あとは君しだいだ。
でも明日学校に来るんなら、『遅れてもいいから』なんていわないで、いつもみたいに朝一番に登校しておいで。
そのほうが普通に入りやすいからね。」
T先生もオニイの表情の変化を感じて、少し安心されたようだ。

T先生をお見送りしようと居間の引き戸を空けた途端、やけに香ばしいにおいが鼻を突いた。
「うるさくしないでね。」と二階へ追いやられた子ども達があわただしく階段を駆け下りてくる。
「何か焦げてますね。」
T先生が落ち着き払った声でおっしゃった。
!!!
とりあえず、先生をお送りして台所に駆け込むと、大鍋いっぱいのポトフが炭になっていた。
先生が来る前に下ごしらえのつもりで弱火にしておいたコンロの火を消し忘れていたのだろう。
たっぷりあったスープが煮詰まり、なべ底のポテトやにんじんは真っ黒にこげて形がない。
「ごめん、二階にいたから気がつかなかった。」
しょげ返るアユコ。
いいよいいよ、あんたが悪いわけじゃない。
オニイの変化にほっとしたのと、夕食の献立がおシャカになったショックで、へなへなと座り込む私。
ふと、見ると、オニイやゲンが何かむしゃむしゃ食べている。
「オニイ!あんた何食べてるの!」
黒こげポトフの中で、かろうじて助かった骨付きチキン。
油っこい食物を避けてうじうじ言っていたオニイが、好物の骨付き肉にいつものように食いついている。
はらほろひれ〜と母、脱力。

夕ご飯は、母の脱力を見かねた父さんが子ども達をつれて、閉店間際のスーパーで半額処分になった中華惣菜を山ほど買い込んで来てくれた。
「もう、何だって食っちゃうぞ」
とむしゃむしゃとご飯を食べるオニイ。
きっとトンネル越えたんだね。
ま、とりあえず一安心。

夜中、こげた大鍋をがりがり磨きながら、ほろりと不覚の涙が出た。


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