- Daily *萌* -
DiaryINDEX|past|will


2012年03月23日(金) 軍隊のゲイと中世の覚醒

英国旅行記の合間に。現在、amazon.ukでDLしたkindle bookを読んでいます。その名も��gay warriars��.古代から冷戦期に至るまで、欧米の軍隊内のホモセクシャリティを紹介している本です。正直、著者の論理には飛躍があるし、軍隊内で肉体関係を持つことが、士気や秩序にどんな影響をもたらしたのか、もたらすと見做されていたのか、など知りたいことは書かれておらず、ただ有名な事例を紹介するだけで期待はずれな点も多いのですが、原典を英訳でそのまま掲載してくれているので、そこはありがたいです。

古代に関しては、発見は多くありませんでしたが、アキレウスとパトロクロスやアレクサンドロスとバゴアスはもちろん、イーリアスでアエネアスの部下だったガチな二人についてや、クセノフォンが『アナバシス』に中に書いている軍隊で男の子たちを食いまくりなモテ男のことなどが紹介されていました。そのモテ男(クセノフォンの部下)、殺されそうになっている美男子を見かけて、これはもったいないとクセノフォンのもとへ参上し、後生だからあのカワイコニャンを助けてやってくれ、と直訴。クセノフォンがこのモテ男の軍隊内での有能ぶりを主君に報告し、彼のためにもあのカワイコニャンを助けてやってください、と頼めば、その主君は「おまえはあのカワイコニャンのかわりになれるか?」モテ男「もちろんです!」主君「(カワイコニャンを呼び寄せて)おまえの代わりにこの男が打たれるのを、おまえは許すか?」カワイコニャン「い、いえ! そんなことできません!」主君「がははは! おまいら気に入ったぞ! よし、この男の勇気に免じて許してやる!」クセノフォン「チャンチャン♪」という感じでバカップルがもう一組誕生した、というお話でした。

いかにも、「男同士の愛の方が崇高です!」と哲学者たちが堂々宣言し、女たちをどっちらけさせていた全盛期のギリシアに生きたクセノフォンらしいパピルスの無駄使い萌エピですね。クセノフォンの萌エピに関しては数年前にも、これは萌える、というものを紹介したはずなので、興味のある方はクセノフォンで日記内検索してみてください。(と思ったら、見つけました)

ヘラクレスと共に旅をし、彼の愛人だったとされるイオラオスの墓は、アリストテレスいわく「今でも男同士の恋人たちが愛を誓い合う名所」とのこと

それから、ハドリアヌスとアンティノウスのことも書かれていました。ハドリアヌスに関しては彼の業績を讃える本がたくさん出版されているので少しずつ読んでいきますが、一通り済んだら『ハドリアヌスの回想』(現在まで本棚の飾り)に手を出します。彼もまた、孤独な天才の一人ですね。

アキレウスとパトロクロスに関しては、読めば読むほどウォルフガング・ペーター腺の『トロイ』はいい加減だったな〜と再確認。イーリアスにおいて、アキレウスとパトロクロスはもっとも重要なテーマですよね。アキレウスをブラット・ピットが演じたというのは完璧な配役だったと思いますが、イーリアスをあんなふうにはちゃめちゃに描くことは、まるで中世ヨーロッパにおいて魔女狩りや異端審問を恐れるかのごとく古代の遺産を土の下に埋め直してしまう行為でした。21世紀だぞ、おい。われわれはキリスト教徒の迫害を恐れることなしに、古代の精神を蘇らせることができたんじゃないのかい? 
とはいえ、私もあの映画を見て本を作ったりしていたので同罪といえば同罪ですね。また、イーリアスという西洋文学史の名著について学ぶ機会を与えてくれたという点では、お礼を言わなくてはなりません(まあ、遅かれ早かれ出会っていたとは思うけど)。

逆に現在再見しなくては、と思っているのは『キング・アーサー』です。アーサー王はブリテン島を統治していたローマの軍人だった、という説を元に作られた一風変わったアーサー王でしたが、ディテ―ルをすっかり忘れちまってます。ただ、ドルイド僧や、ブリトン人として刺青を入れたキーラ・ナイトレーとか出てきませんでした? あれ、ただのファッションかと思いきや(コラ)当時のサクソン人やピクト人は、ああいう刺青入れてたんですよね(カエサルが『ガリア戦記』で詳述している)。今見たらきっと面白いはず(プッロ役のレイ・スティーブンソンも出ていることだし)。待てよ、DVD持ってたかもしれないな…。

当時リリースされた一連の萌える歴史ものの映画において、時代考証という意味で素晴らしかったのは『マスター&コマンダー』ですね。とはいえ私は、当時は19世紀の海軍のことなど何も知らなかったから、映画見た当初はみんなで「マスターとコマンダーの話だと思ってた」などと言って笑ってましたが、今思い返してもこのジョークは笑える。ともかく、名画でした。そして『アレキサンダー』は当時、オリバー・ストーンの敵(彼は過去にニクソン家に訴えられたりと多くの敵を作っていた)の工作員の世論操作もあり、ボロクソに言われましたが、アレクサンドロスマニアの私にとっては、素晴らしい映画でした。古代を生きたアレクサンドロスの精神を現代のスクリーンに蘇らせようと試みたという点では、最初からそれを放棄していた『トロイ』よりははるかに高く評価されるべきでした。Romeのオーディオコメンタリーの中でも、制作スタッフが同じ古代ものとして映画『アレキサンダー』を参考にした話をしていました。

ところで、今猛烈に興味を持っているテーマがあります。それは「中世の覚醒」についてです。古代について知れば知るほど、一つの疑問が浮かんできます。それは、中世ヨーロッパはどうしてあんなにも停滞してしまったのかということです。以前、『Rome』のレビューの中で、ガラス工芸はカルタゴの滅亡と、その技術を継承したローマ帝国の衰退とともに、中世ヨーロッパから姿を消してしまった、ということを書きました。実は他にも、コンクリートを利用した土木技術や上下水道の整備など、古代の世界には存在し都市生活を支えていたものが、その数百年後の中世の世界からは消えてしまったという事例がたくさんあります。古代コンクリート建築の最高傑作のひとつと言われるパンテオンやコロッセウムは、時代がくだり、ルネサンスを経てその価値が再評価されるようになるまで、がらくたとして野っぱらに放置されていたのです(周辺の人々は自宅を修繕する際に、これらの遺跡の建材を盗んできて使っていた)。となると、素朴な疑問として、木や石を重ねて作った建物に暮らしていた中世の人々は、パンテオンや水道橋を見上げて「これどうやって作ったんだべな?」と思わなかったんだろうか? 思ったでしょうねえ。それでも、コンクリート技術は約13世紀もの間(!!!)、忘れられていたわけです。そんなわけで上下水道が完備されていなかった中世の都市ではペストが流行しました。

しかし、中世の人々もある出来事をきっかけに、そうした古代の遺産というものと接触する機会を得ます。それらはビザンティン帝国を経て、思わぬところに眠っていました。当時の西洋人が(あるいは今も?)「野蛮」で「下等」で「未熟」だと思っていたところ――イスラム帝国に。そう、中世ヨーロッパの人々は聖地奪還という大義名分の下に行った十字軍遠征によって、パンドラの箱を開けてしまうのです。
アリストテレスの著作をはじめとする、古代の哲学や思想が白昼の下に晒され、さあ大変。でもこの「中世の覚醒」ほど、面白いテーマはなかなかないんじゃないでしょうか。それはすでに証明されてもいます。なぜなら、『薔薇の名前』や『ダヴィンチ・コード』はまさにそのようなテーマが現代人の心を掴んだわけですから。

古代を舞台にしたものはすでに亀ペースで準備中なんですが、いずれこの中世の覚醒に関する話も書きたいな。BLではムリでしょうが笑 萌える話にもなると思います。同性にしか惹かれない自分は地獄に堕ちると思っている男が、古代の扉を開けることで人間としての尊厳を取り戻す、なんて面白いじゃ〜ないですか(ま、文章にすると陳腐なわけですが…)。ウンベルト・エコーやロビン・レイン・フォックス先生のような研究家の力を借りられたらなあ…徹底的に議論して、完璧な物語を作る……ある意味、それが私の人生の目標かもしれません。



コメントもこちらから。私が旅の途中で撮っただいたいが欧米の風景写真が表示されます(地味に交換してます)




WEB拍手のレスはこちらから DiaryINDEX|back|new

RPSのきわどいのはマイピクに上げてます。気軽に申請してください。

変態の本性を晒しているアカ。slash ficレビューなども。Follow me now!

Not His Day (footballのID&PW制同人サイト)
RPS小説のページ。ID&パスがわからなくなったらこちらから再入室をどうぞ
ジン |MAIL |HomePage