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2006年05月15日(月) 不幸な出来事

サンフランシスコに戻り、アリのベッドで一緒に寝る日もこれで二日目。帰ってきたら私の部屋がなかったのですが、今日ノブがテキサスへ旅立つので彼の部屋に移れます。この家で、一番か二番目にいい部屋! ほとんどプライベートバスつきといっていい部屋! 嬉しい!

ところで、昨日はとても不幸な出来事に遭遇しました。窓が割られていた事件ほどではないにせよ、恐怖を感じた出来事でした。
私とアリが夕食を食べるために近くのメトロの駅で待っていた時のこと。アリが笑い出し「あの男がファックユーとか言ってくる」と言うので、ちらっと見ると、ヒスパニック系のラッパーみたいな若い男が、確かに何か言っています。アリは笑っていますが、彼に好意があって笑いかけてるというような雰囲気ではない。「アリ、笑うのはやめて」と言っても、アリは笑っています。私もその時は、それほど深刻に感じていなかったので、ふたりでふざけていました。すると男が何かわめき始めました。最初はクレイジーな奴なんだと無視してましたが、そのうち「おい? 聞いてんのかよ? 英語が通じんのか?」と罵りながら男が私たちのもとまでやってきました。私は最初こそ、たった今気付いたという風に「何? どうかした?」と言いましたが、男がアリに向かって、「なあ、お前、さっき俺の顔を見ながら何か言って笑ってたよな? 何て言ってたんだ? え?」と鼻先が擦れ合うほど顔を近づけて彼を脅し始めたので、私は脇から彼は何も言ってないと訴えました。男は私にも迫ってきて顔の前で汚い言葉で罵りました。男のターゲットはアリらしく、彼を道路の際まで追い詰め、女装男め、というようなことを言い続けました(その日のアリは男の恰好をしていたにもかかわらず)。そのうち、私たちに「行けよ。あっちへ行けよ、早くしろ!」と言い出し、私はアリに「行こう」と言いましたが、アリは蒼白になりながらも「なんで? どうして?」と事態を飲み込めていません。私は「いいから行こう」と言って彼の腕を引っ張り、道路を歩き出しました。
私はすぐにアリ相手に男の悪口を言い始め、奴はホモフォビアで、いつもゲイやクィアーをターゲットにしてるんだと言いましたが、アリはホモフォビアという言葉を知らず、意味を知ってショックを受けていました。二分も経たないうちにアリは「もうやめて、忘れるの。他のことを話しましょう」と言い出し、私は正直唖然としましたが、忘れることが出来るならそれでいい、と思い、何とか夕食の話を。でもアリはずっと上の空で、レストランに入ってからも動揺のためか、顔を伏せたまま。思うに、さっきの出来事を「なかったこと」にしてすっかり忘れた振りをするなんて、馬鹿げています。もっと話し合うべきことが沢山あるし、自分が直面した現実から眼を背けるべきじゃない、と私は思いました。そしてそれこそが、アリが抱える一番の問題なんです。彼はいつも現実から眼を背ける。嫌なことは、そこから何一つ学ばないうちに忘れようとする。誰かが彼に何かを説教しても、彼はまったく聞いてない。

こういう経験は前にもしたのかときくと、初めてだと言っていました。私は男とアリ、どっちが最初に始めたのかということを、何度も聞きました。アリは、男がファックユーだの言い出したから笑った、と言っていましたが、実際はどうかわかりません。アリは好みの若い男を発見すると、誰だろうと見つめて笑顔を振りまいたりします。もしかすると、あの男にもアリは色目を使ったのかも。それでホモフォビアな男は彼を罵り、でもアリは真剣に受け取らず笑っていたのではないか。これは推測です。逆に男が最初にアリに眼をつけて、いつものようにオカマをいじめてやろうと思ったのかも。

二日前に、サンフランシスコ警察のことを調べていた時、この街にはhate crime unitがあることを知りました。いわゆる、偏見が根底にある事件を処理するユニットで、サイトに掲載していた統計によると、サンフランシスコではhate crimeの被害者は圧倒的にゲイが多いことがわかりました。この一件の後いろんなことを考えてしまった。ああいう男は今日もどこかでゲイやクィアーに、私たちに対してやったようなことを行っているだろうし、もっとひどい目に遭う人もいるでしょう。私は、男が交通量の多い車道にアリを突き飛ばすのではないかと、心臓が縮む思いでした。シックス・フィート・アンダーの名エピソードに、ゲイのカップルが道を歩いていて、ホモフォビアの二人組に絡まれて片割れが殺される、というくだりがありましたが、とっかかりの状況が酷似していたので、ぞっとします。昨日は土曜日だったので、サタデーナイトに出歩かないなんて勿体無いとアリを誘ったのですが、行きたがっていた彼は落ち込んでしまって今夜は出たくないといい、私はひとりでゲイバーへ。男たちは皆楽しそう。私はビールを飲んでドラッグクィーンのショーを見ただけでした。今日はこの街の人間の別の顔を見たという感じ。どこにでもクソッタレはいる、男を好きな男として生きていくなら、もっとタフに、強くならないと、とアリに言いましたが、彼は首を横に振るだけでした。「男らしい男になるの」と言い出したばかりだというのに。彼には、どうして道を歩いているだけで誰かが自分を脅すのかが、理解できない様子。アリは現実を直視しなければなりません。

にしても、相手が三人、四人じゃなくてよかった。集団だったら、どんな目に遭っていたかわかりません。アリには「二度と誰かの顔を見て笑うな」と言っておきました。

コメントもこちらから。私が旅の途中で撮っただいたいが欧米の風景写真が表示されます(地味に交換してます)




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