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【裁判傍聴記】スーフリ和田被告の腹の内を見た

ヒトの知能をもった『鬼畜』!
スーフリ和田被告の、『腹の内』を見た

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 早大のイベントサークル「スーパーフリー」による集団レイプ事件の第8回公判が、先月21日東京地裁で行われた。この日は、昨年6月準強姦の罪で逮捕・起訴された同サークルの元代表和田真一郎(29)、元幹部・藤村翔(21)両被告に対する尋問が中心となった。

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 和田被告は紺のスーツに白シャツ姿。かつて染色していた跡が残る長髪を、後頭部の高い位置で結んでいる。同事件で起訴され、この日出廷していた藤村以下四人の被告らには頭を丸めた形跡があるのに対し、和田の「ロン毛」姿はかつての「栄光」を捨てきれていないものがあるかのように映った。

「本当に申し訳なく思っており、もし可能なら(被害者に)直接お会いして土下座して誠心誠意謝りたい」

 冒頭での和田の発言も、まるで用意された原稿を読み上げているかのようによどみなく、その声に反省の色は感じられない。

 ただ、和田の弁護人による尋問には、徹底して情状酌量を狙う様子が見て取れた。質問には、スーパーフリー(以下スーフリ)が単にレイプ集団ではなかったことを印象付けたいという意図が透けて見える。

「イベント成功への努力のなかで人間的成長を目指していた」
「社会に出る上での実行力やコミュニケーション能力がつく気がした」

 弁護人はそのような陳述を引き出すことで、スーフリの活動のポジティブな側面を浮かび上がらせようとする。

 しかし和田は強気を通す。サークルとしての意義をアピールしようとするあまり、イベントのチケット代(女性三千円、男性四千円)は高額ではないのかという質問に対し「価値があれば高いとは限らず、(参加者は)満足していたと思っています」と自らの組織力への自信を伺わせる場面もあった。

 また、直後の二次会で「まわし(輪姦)」を行ったとされる平成15年4月27日のイベントについては、「私のイベント経験のなかでもかなり思い出深いもの」と述べるなど、道半ばで逮捕されたことへの悔しさをにじませた。

 同イベント後の「まわし」については、姦淫の事実は認めたもののその計画性は否定、あくまで偶発的に起こったとの立場をとり、スタッフに「まわし」へ加わることを強要したとされる件についても、それぞれの「自由意志」であったとの主張を展開した。

 酔わせる目的で女性の飲み物に混入させたとされるウォッカ『スピリタス』(アルコール度数96度)については、その発注を指示し、イベントの二次会で使用した事実を認めた。

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 休廷を挟み、藤村被告への検察尋問が開始された。藤村はグレーのスーツで小柄な身を包み、裁判官に促されて中央の証言席に座る。丸坊主頭で、眼鏡をかけている。声は甲高くやや上ずっているが、言葉一つ一つはしっかりとしている。自らの罪を全面的に認めている模様で、返答も素直であるようだ。

 藤村を尋問するのは少壮の検察官である。和田の弁護人とは打って変わって語り口には余裕が見える。よく通る大きな声で即座に鋭い追及を始めた。最初の争点は、和田による「まわし」への参加強要がなされていたかどうかという点だ。

 藤村の証言によれば、自分がスーフリに加入した平成13年当時、「まわし」に反対する通称「和み班」と輪姦積極派の「鬼畜班」の間でもめごとがあり、その後「和み」の先輩スタッフはサークル内での発言権が下がったという。イベント参加者の女性に「二次会は危ないから行っちゃだめだよ」と忠告したスタッフが除籍されたこともあったそうだ。

 和田が「連帯感」という言葉でスタッフへ圧力をかけていたという事実を示す会話も明らかにされる。

和田「(先日)まわしたあの女の子はよかったね」
藤村「どうして○○(スタッフの名)は参加しなかったのですか?」
和田「ホントだよな。連帯感が生まれないよな」

 そうして和田は「まわしに参加しない者は一人前ではない」という意識をスタッフの間に植え付けていった。

 二つめの争点として、和田がいかに「まわし」に執着していたかという点についても検察官のメスが入る。

 和田は、四月という時期に並々ならぬ意欲を持っていたという。四月の新歓シーズンは、イベントにも二次会にも多くの女子学生を動員できる。お酒を飲みなれない者も多い。藤村は当時の和田の言葉を証言する。

「四月は撃ち頃。撃てる女が集まるんだ」
「俺は四月のために学生をやっている」
「撃つ」とは姦淫するという意味である。

 スタッフミーティングでイベントへの動員数を増やす策を討議していた際、あるスタッフの「まわしをやめたらどうか」という提案を、和田は「ありえない。二次会は俺の生きがいだ」と切って捨てたこともあった。

 またスーフリ内には「オールフォー和田」という言葉が存在した。すべては代表である和田のためにあるということである。飲み会の後、一人で女子学生を連れて帰る、いわゆる「お持ち帰り」をした者は後日和田に呼び出され、殴られるなどの「注意」を受けた。二次会に女性を誘導できなかったスタッフがホテルの一室で殴る蹴るの暴行を受けたこともあった。その様子を目撃した藤村は「死ぬのではないかと怖くなった」と証言する。

 このように藤村尋問からは、代表・和田が「まわし」に対し異常なまでに執着し、「連帯感」を掲げた恐怖政治でスーフリを鬼畜集団化していったということが明らかになった。

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 閉廷後、取材メモを読み返してみる。和田尋問の終盤、被告が自らの起こしたことについて振り返って述べた部分がある。

 「入学当初はこのようなことをするとは、ゆめゆめ思っていませんでした。スーフリの活動をしていくうち、私の考え方も変わり、いつの間にか正常な感覚を失っていったのではないかと思います」

 思い出されるのは、和田のその口調が、あくまでも冷静であったということだ。

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(付記)
◇傍聴日時:平成16年1月21日(水)
◇法廷:  東京地裁刑事第104号法廷
◇裁判官名:中谷雄二郎(裁判長) 横山泰造 松永智史
◇事件番号:平成15年合(わ)第275号
◇被告人名:藤村翔 和田真一郎 小林潤一郎 沼崎敏行 岸本英之

2004年02月01日(日)

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