ソルトレイクシティ・オリンピック男子Hockey決勝、CANADA×USA戦。
"Diehard Fan"Juneさんや学校の先生EDの影響などもあって、最近マユゲもすっかりHockeyフリークである。現在自宅にテレビのないマユゲだが、この大事な試合は何としても観たい。否、観なければならない。さてどうしよう。
そこで昨日の晩……。
プルルルル。あっ、こんばんは。あのぅ、実はそのぅ、明日お邪魔してもいいでしょうか? 頼るはやはりJuneさんである。「アラ、ちょうど電話しようと思ってたのよ」。マジすか。うう、ありがとうございまーす(涙)。もしかしたらマユゲの語尾が涙で掻き消されていたのではないかと心配になるほど、ありがたいお言葉。
というわけで今日はWest Van.へ。久し振りに晴れ上がった真っ青な空。放射冷却で空気はきりりと引き締まっているが、それを補うように陽光が全身に照り付ける。しまった、サングラス忘れた。これまた久々のブルーバスで渡るLions Gate Bridgeからは、雪を頂く山々がクリアに望める。雨が多いこの季節のバンクーバー、たまにこうして晴れると本当に気分がいい。
今日は「悪友」Kazuoさんも一緒。やっぱ大画面で、ご迷惑でなければ大人数で観たい。試合は12時にフェイスオフ。娘さんのMeriちゃんを車で送りに行ったJuneさんがEmiさんを連れて帰って来たところから、いよいよ本格観戦モード。
第1ピリオド、いきなりアメリカが先制するというやや冷や汗ものの立ち上がりではあったが、 今日のカナダは試合のツボを心得ていた。相手の得点から時間をおかずにKariyaのゴールで同点にすると、 続いてIginlaが勝ち越し点。大画面前の我々も飛び上がって叫ぶ。
2対1の一点リードで迎えた第2ピリオド15分過ぎ。アメリカはパワープレイ(反則によりカナダが一人少ない状態) の好機を逃さずゴールを上げ再び同点となるが、残り1分30秒でカナダもパワープレイをものにしてSakicが左サイド からゴール! これで3対2。よしゃ、いけるぞこりゃ。しかもこの点、我らがバンクーバーCANUCKSのJovanovskiにアシストが記録されるというおまけつき。
第3ピリオド、序盤こそやや消極的な攻撃に終始したカナダだったが、残り4分となったところでIginlaが勝利を決定 づけるこの日2点目のゴール。うぉおおおおおおおおおおおお。4対2、これで2点差。よしゃよしゃ、決まった! 金メダルだ! カナダはさらに残り1分半で相手パックをインターセプト、Sakicが独走、ドリブル、フェイント& ショット! 5点目! ぬうぉおおおおおおおおおおおおおお、ぉぉぉ、ぉぉ。声が枯れた。
さすがにこれで勝利を確信したのか、チーム・カナダのゼネラルマネージャーでカナダHokeyの「神」と 崇められているWayne Gretzky氏もスタンドでスタッフと抱き合って歓喜する。 Juneさんによれば、このグレツキー氏、これまでの試合では常に冷静で厳しい表情を通していたそうで、彼が感情を 顕わにするのは驚きだということだった。
そして試合終了、カナダ選手はリンクの上で重なり合って優勝の瞬間を味わう。スポーツは何と言ってもこの瞬間が たまらない。今回はカナダが男女ともに決勝でアメリカを破って金メダルということになった。すごいときにカナダ に来たもんだ。忘れないだろうな、これは。
なんとカナダのオリンピック男子Hockey金メダルは、実に50年振りだそうだ。つまりグレツキー氏も選手としてはこの夢を果たせなかったということ。あの喜びようは「そういうこと」でもあったのか……。
興奮冷めやらぬ我々「押しかけゲスト」たちも、夕方家路につく。Park Royalからバスに乗るものの、道の混みようがすごい。Lions Gate Bridgeに入る道、つまりダウンタウンへ向かう道が大渋滞なのだ。バンクーバーでこんな渋滞は見たことがない。その並ぶ車をよく見れば、何故かが分かった。みな大小さまざまのカナダ国旗を手に、満面の笑顔で乗っている。North Van.やWest Van.の愛国民たちが一斉にダウンタウンに流入しようとしているのだ。イヤッホウ! ダウンタウンでみんなで盛り上がろうぜ! ということか。
ノロノロながらも何とかStanley Parkを抜けダウンタウンに入ったバスをいち早く下車、Denman St.を歩いて南下する。ずらりと並んだ車はすでにクラクション鳴らし放題、助手席の連中はみな「ハコ乗り」、顔にはペイント、手には国旗、口々に「Yeahhhh! Wooooo! Hooooo!」など言葉にならない叫び声。Robson St.との交差点は最高潮で、信号もあってないようなもの、完全にアナーキーだ。まるで暴動でも起きてるんじゃないかと思うほど。
確かに日本でもオリンピックやW杯予選での勝利のときは盛り上がる。プロ野球やサッカーの試合だったりすると、若い奴は街に繰り出して騒いだりもする。元気のいい奴はお堀に飛び込むことだってある。しかしそれはあくまで一部の人間。ところがここはどうか。ほぼ全員だぞ、狂ったように喜んでいるのが。Kazuoさんがビデオカメラを向けながら歩いていると、車のサンルーフや助手席から顔が出てきて「Yeahhh! Number one! Champion!」のような雄たけびを上げる。みんな一様に幸せそうで好意的なので身の危険を感じるようなことはないのだが、街中が何とも異様な雰囲気に包まれている。
すごい。感動。今まで少なからず旅行をしてきたけど、スポーツでこんなに盛り上がっている街を見たのは初めてだ。クラクションが鳴り響くダウンタウンの街角に佇み、思う。
これがHockeyか。これがCANADAか。
2002年02月24日(日)
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