diary/column “mayuge の視点
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富士山単独登頂記 PART1「衝動」

 今日は、富士山に登ってきました。

 なんだよ、突然、ってみんな思うかもしれないけど、自分でもそんな感じ。ここんとこ、ミョーに山登り欲があって、海外の4000m級の山に行ってみたいな、なんて考えていたんだが、まずは日本の最高峰だろ、と金曜日に急に思い、情報を仕入れに本屋に飛び込む。鎌倉の時と違って今度はるるぶの勝ち。登山に関する記述が充実してる。

 どうやら車で五合目まで行けるのは、4つのルートがあるらしい。「吉田口」「須走口」の他にも、静岡側に「御殿場口」「富士宮口」というのもある。その中ですいていそうな「須走口ルート」を選択。混んでるのもうざいしな。車も難なく停められそうだし。

 計画を立てるべく、るるぶをさらに読み込むと、どうやら素人でも登れるように登山道が整備されているらしい。夜中 登って、六〜七合目くらいで日の出を見て、明るい中で山頂を目指そう。が、問題は天気。天気予報だと曇りなんだよな。持つかな? 空……。どうせなら「御来光」見たいよな。

 さてさて準備。土曜日はまず休養をとってから、具体的なプランを策定。スケジュール、コース、持ち物。雨対策で、ゴアテックスのマウンテンパーカとゴルフ用レインウェアのパンツだろ。替えのTシャツもいるな。上のほうは寒いらしいから、ベストとかスウェットとか重ねられるものもいくつか。るるぶによると、携帯用酸素ボンベとかあったほうがいいらしい(そんなにキツいの?)。それと夜登る場合は懐中電灯(頭に巻くやつが便利らしい)。ボンベとヘッドランプは持ってないのでニコタマ東急ハンズへ。

 さぁ、軽く仮眠してから出発だ。

【7月15日 23:45】 出発

 家を出て空を見上げると一面の雲。風もやや強い。まだ降ってはいないが、なんか雨になりそうな気配。どうせだから、行くだけ行ってみよう。あっ、でも満月だ。雲の薄いところで透けて見える。月明かりで少しは歩きやすいかも?

【7月16日 0:35】 深呼吸

 川崎ICから東名にのり、今日はなんとなく左ルートで御殿場へ向かう。待ち合わせに使わなそうで、こんな時しか寄らないであろう鮎沢PAへ。

 最近のカップベンダーはすごいね。ヴァーチャル・ベンダーとでも言おうか……。まあ飽きさせないための工夫と言ってしまえばそれまでなんだけど、モカ・コーヒーのボタンを押して待ってるあいだ、なんと液晶画面に、中でコーヒーを煎れているコンピューターグラフィックスの映像が出るんだよ。これがまた未来の宇宙ステーションの中みたいになってて面白い。画面でコーヒーが出来上がって、ロボットの手みたいなのが出口にカップを置くと、そのタイミングで取出し口が自動で開いて、本物のコーヒーが出てくる。

 「おおーっ。見て見て、これ面白れー」なんてアピールしたいけど深夜なので他に誰もいなくて残念。でもこういうのはコンピューター技術のいい使い方だと思います。

 さてもうすぐ御殿場。

【1:00】 腹ごしらえ

 御殿場ICでおりてR138を山中湖方面へ。R246との交差点付近のロイホにて「ロイヤルターリ」で腹ごしらえ。「ターリ」っていうのは「定食」みたいなもんで、要はカレー定食。マユゲは卒業旅行でタイとインドの本場モノを経験しているだけに、少々うるさい。ナンがもろに「レンジでチン」って感じで"boo!"。もうちょっとちゃんとしたエスニック食いに行きてえなあ。

 しばらくすると地元のヤンキーの集団が来店。そうか、土曜日の深夜だもんね。久し振りに「ヤンキーらしいヤンキー」を見てなんか得した気分。絶滅危惧種だよな、そろそろ。ニイサン、「ビバリーヒルズ高校白書」のディランばりのリージェントはとってもクールっす。

 おっと、それどころじゃない。そろそろ行かなきゃ。いざ須走口へ。

【2:30】 登山開始

 R138を左に折れて、ふじあざみラインのぐねぐね道を登り、須走口五合目に到着。最終荷造りをして駐車場を後にする。

 気温17度。さっき御殿場では23度あったのに。さずがに標高高いのね。登山口の近くには管理事務所(?)の人らしきパジェロが停まっている。

 「あのー、入山料は……?」
 「あっ、全部無料です。お気をつけて!」
 ウィーーーン。パジェロの窓が閉まる。

 それだけかよ? あのボク初めてなんですけど……。まあ行くしかないっしょ。

 まずは案内板をチェック。



 ここですでに標高2,000m(ってことは、あと1,776mか……)。トイレも忘れず。


通称「でこランプ」もバッチリじゃん。

 よーし、行くぞ。登山口には小さなほこらがあったので、「無事登れますように」と願かけも。

 しかし道はいきなり暗い樹林帯の中。



 薄気味悪いんだよなー。樹海って言えば自殺の名所だよな? 「出ても」おかしくないよなー。どー考えても恐いシチュエーションなんだが、何故か不思議とそんなに恐くない。酔ってもいないし、とうとう俺は気が狂ったのか?なんて考えながら、もともと歩くのが早いマユゲ、いつものペースで進むと、2分で息が上がる。

 きっちー。こんなんで六合目までもつんか?

 溶岩の細かいのがボロボロ転がってて、とにかく歩きにくい。しかも(当たり前だけど)平坦な場所は全然なく、とにかく足場の悪い階段を登りつづける状態。5分登っては少し休み、の繰り返し……。

 命綱は小さな案内版のみ。



 大丈夫だろーな? 誰かがイタズラして矢印の方向変えてないだろーな? 一歩間違えたら、闇の樹海へ俺は消えゆく……。さむっ。

 るるぶによると六合目までは約2時間。ひえー、これが2時間もつづくのかよーおーーー。まず、やられそうになる。まずは休める山小屋までいくぞ。

 「がーんばれー・・・、まーけんなー・・・」

 小須田部長状態で自分を励ます。

【3:45】 遭遇

 うおーーーーー。びっくりしたー。

 いきなり樹林の中で下山してくる人と遭遇。それは懐中電灯を携えた陰気なオバちゃんだった(しかも一人!)。本日登り始めてから初めて人に会っただけに、ビビりながらも、そこは登山者のマナー。よし挨拶だ!

 「こんばんわ!」

 …………。答えなし。幻? いや足はあった。絶対あった。幽霊なわけないじゃん(汗)。

 さらに進むと今度は二人組。これまた女性だよ。元気だねー。息も絶え絶えにマユゲは挨拶。「こんばんわ。ハァハァ……」。すると……、

 「Konban−wa!」

 返事があった。しかも一人はパツキンのガイジンだった。レストハウスはもうすぐよ、的なことを言ってくれたのに対し、早く山小屋で休みたいマユゲは、「How long does it take to get there? ぜぇぜぇ……」。意外にすんなり出てびっくり。俺は酸素が薄い方が冴えるのか? 「about……ten minutes!?」。よしもうすぐだ。ありがとよー!

 またしばらく進むと、今度は男4人のグループ。この頃には雨&風がかなり強くなってきていた。

 「この上の七合目で、上のほうはもっと荒れてるって言われたんで、ぼくらはアタックするの諦めました。頑張ってくださーい」

 すっげーこいつら、もう七合目までいったんだ。俺なんてまだ六合目までも着いてないよ……。しかも荒天かよ、トホホ……。まぁいーや、行ける所までは行こう。

 マユゲは、さらなる上を目指す。

(つづく)

2000年07月16日(日)

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