堀井On-Line



817、「神話の力 」 −2

2003年06月30日(月)

単行本
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4152035234 ;
(1992/07)
ー私の感想
この本は、私にとって過去に読んだ本の中でベスト5に入る本である。
随想日記でも何回か取り上げてきた。
自分とは何かを考える時、神話に大きいヒントが隠されている。
日本のような島国の神話は「中空」思想が物語の中に隠されている。
左右に相対立するものを配置して中央に中抜きの存在を置いて、ガス抜きの役割をさせている。今も天皇制が中空としての役割として存在しているのが面白い。
西部劇もそうだ。ある町にふらりと現れた主人公が、そこの悪役と対決して苦難の上に、倒して英雄になり、何処かに帰っていく。これが神話のストーリーと同じである。
男は無意識のうちに英雄願望を持っており、女は誰もがシンデレラ姫コンプレックスを持っているという。結婚して10年も経った姉が「今でもシンデレラコンプレックスある。白馬に乗った王子様が何時か迎えに来てほしいという」と私にうちあけたことがあった。
人間なんてのはそんなものだろうが、これも無意識の中の刻印があるためだろう。
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ーレビュー
神話はわれわれに何を語ろうとしているのか。
神話が人間の精神に及ぼす見えない影響を明らかにし、全米に神話学ブームを巻き起こしたベストセラー。

目次
第1章 神話と現代の世界
第2章 内面への旅
第3章 最初のストーリーテラーたち
第4章 犠牲と至福
第5章 英雄の冒険
第6章 女神からの贈り物
第7章 愛と結婚の物語
第8章 永遠性の仮面
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<いま生きているという経験>
  神話は人間生活の精神的な可能性を探る鍵である。
「人々はよく生きることの意味を探していると言いますが、人間が本当に探求しているのは<いま生きているという経験>です。」
この本は、神話学の世界的な権威であるジョーゼフ・キャンベルが、世界各地の詩人や賢者の言葉を使い、私たちに「人生は素晴らしいことだ!」ということを伝えてくれる。
古代の神話が失われつつある現代において、今求められている神話がどういうものか、そしてその中で生きる私たちはどのように生きるべきかを導いてくれる本である。
宗教学や神話学に興味のない人であっても、必ず彼の言葉には自分と共通する物語が探せるはずである。
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アメリカ東部で生まれたキャンベルは幼少時代に訪れた、ニューヨークのスミソニアン博物館でエジプトやインド等の古代の様々な展示物に強く感銘し、天命とでもいうべき神話の探求という彼独自の道を踏み出した。
カトリックの厳格な家庭に生まれ育った彼であったが、その枠に留まることなく、ネイティブ・アメリカン(インディアン)の歴史、伝統と儀式に多大な興味を持ち、研究を重ねた。
そして、双方の宗教の中に、そして他の宗教にも現れる、共通の概念、例えば処女降誕や、聖杯伝説というものを発見し、その意味を読み解いた。
アメリカの名門、コロンビア大学で学び、ヨーロッパへも留学した彼は、神話をただ単に昔話の絵空事と考える人々の概念を大きく覆し、神話を読み解く事を通して、神話が、現在生きている我々に生きる道しるべを提供してくれていることを証明してくれた。

彼の神話の探求は、ほぼ全世界の神話の研究に広がり、ただ机上での研究だけではなく、現地に赴き、体験し、遠く離れた地域での神話の共通点を発見し、神話比較学とでもいうべき新しい分野を開拓した。
また、キャンベルは、心理学者のユングとの交流により、時代を超えた人間の普遍的な心理の探求にも、彼の仕事の領域を広げた。そして驚くべきことに、20世紀の偉大な画家、ピカソやクレー、また、トーマス・マンやジェームス・ジョイスという小説家、ドイツの哲学者ショーペンハウワーというような人々の作品にまでも彼の領域を広げている事は、前代見聞の偉業とも言える。
映画“スターウォーズ”を製作した、ジョージルーカスはキャンベルの英雄伝説の解釈を参考にしたとも言われている。
この本は彼が他界する少しまえの彼の仕事の集大成とも言われるもので、アメリカで有名なインタビュアーであるビル・モイヤースとの対話をテレビ放映されたものの翻訳版である。
最後にキャンベルは神話は時とともに、人々とともに変わり、作られていくもので、現在の我々の次の神話の概念は、「国境線がない宇宙からみた地球に想いを馳せ、COMPASSION(思いやり、慈悲の心)を表現する」ものであるというメッセージを残してくれている。

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以前書いた内容をコピーしておきます。


2002年02月27日(水)
  344,「神話の世界 」 -1

    ーキャンベルとモイヤーズの対談集を読んで
                 私の愛読書の一冊でもある

「シェーン」をはじめとする西部劇の大部分は、
           [神話のストーリ]の転用であるという。

主人公がある街に流れてくる。
そこで悪に遭遇して、正義感からその悪と対決し退治をする。
そして何も報酬を求めず黙って去っていく。
「英雄の理想像」である。

英雄の立場からすると、大いなる旅に出てそこで色々な困難に遭遇をする。
それと闘い勝利して「大きい精神的な何か」を得て故郷に帰っていく。
アメリカ西部劇の全てに共通しているストーリである。

「スターウオーズ」も、そのストーリーが背後に一本通っている。
現代の神話、西部劇である。

今話題の「千と千ヒロの神隠し」もその筋道だ。
桃太郎、一寸法師などの昔話もそうだ。
挑戦、闘い、変化ー成長、の成長過程が全て含まれている。

我々もそのプロセスを重ねて成長していく。
神話はそういう意味で「人間の一番の本質」といってよい。
誰もが自分を一生を貫いている神話を持っている。
自分にとって誰もが主役、皆が大将である。
「脱皮できない蛇は死ぬ」という諺があるが、神話のない人生をいう。

西部劇をみていて、そこに懐かしいアイデンティテーを感じるのはその為である。
そこに内面の深奥の旅を経験する為だろう。
蛇と鷲の闘いを絵でみたり、TVのドキュメントを見て興奮を覚えるのは、
「地に縛られている蛇」と「飛躍の象徴のわし」の戦いを、
「自身の内面、過去の経験」で知っているからである。

英雄は鷲である。飛躍とは地に縛られている自分からの飛躍である。
蛇は縛られている自分でもある。その自己葛藤がその闘いである。
また蛇は人間がまだサルの時、森に縛られていた時の天敵である。
本能的に嫌うのは、その時の記憶が遺伝子に残っているからだ。

その合体が龍である。羽の生えた蛇である。
何処の世界にも龍という架空の動物がいるのは、人類共通の想像的産物である。
願望の結果である。
神話の中によく大きい鳥に乗り、はるかかなたに旅をする世界共通の物語も
その形を変えたものであろう。

実は私の「秘境のたび」もこれに似ている!
一時の蛇から、森からの飛躍のバーチャル版といっていい。
鳥を飛行機と喩えることができる。







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