堀井On-Line



807, 心の構造進化ー書き続けるということ

2003年06月20日(金)

 少し難しい話をすると、
 社会学者のレビィ・ストロースは、人間社会の基本形を
「時計仕掛け型」と「蒸気機関型」に分けた。
・「時計仕掛け型」の社会は実質的に歴史を持たず、構造変化をしない社会
 ー南アメリカのアマゾン奥の部族の人達やアフリカのマサイや・・・・・
・「蒸気機関型」は我々の社会のように進化をしていく社会をいう
 
 この両者の違いを、ストローは「書く」ことによるとしている。
ーといって、「どちらが文化的に優れているかというとむしろ『時計仕掛け型』ではないか!」といえるが、この問題は違う時に考えてみる。
 
 社会だけでなく私たちの心も言葉にして書かない限り「時計仕掛け型」である。内語を書きとどめることによって、人間の心も言葉との相互作用によって構造進化を始める。二年間書き続けてつくづくそれを実感する。

 この随想日記を書き始めて、何かが大きく変わっているのを実感する。
毎日書いている解るのだが、大体が過去の話である。
ということは、過去のことしか書けないのだ。
未来のことも書けるが、結局は過去の前提の上での未来でしかない。
せめて夢か予定の一部だけでしかない。
書くことで、過去の自分を見つめ直すことによって、心の構造進化をしている。

 もし、過去を無理してふりかえないようにしているなら、心に蓋をしていることになる。このように書き出すことによって、心の中の曇りやその奥にある光に気がつく。その意味では、二年以上毎日書き続けたおかげで自分を見つめなおすことができた。心がどんどん構造進化ー私の場合は構造変化だがーをしているのを実感する。そして書くこと自体が面白くなるのだ?!
毎日が一語一会になったしまうのだ。
しかし、いつもネタさがしにキュウキュウとしているが。

(注)ストローズ
ークロード・レヴィ=ストロース

 フランス生まれの文化人類学者(1908-まだ生きている)。
「構造主義」のリーダーとなった人。
あらゆる民族の神話を分析することによって、浮かび上がってくる「構造」を発見することによって、未開社会も、われわれの社会となんら変わらないではないか、と考える。
しかし、彼の神話解釈はそこに共通する「構造」があることを前提としているのでしばしばうさんくさい(と感じる)。
《著書&論文一覧》
『悲しき熱帯』(『悲しき南回帰線』)
『野生の思考』『神話学』etc

 レヴィ・ストロースは、各地に伝わる神話を洗いざらい分析し、それらに共通する法則(=<構造>)を発見する。それまでその地方オリジナルの神話だと思っていたところに、共通する<構造>
が存在するということが分かり、ヨーロッパ社会に衝撃が走る。
自分たちのヨーロッパ文明が最頂点であり絶対であると信じていたら、いわゆる「未開」社会のそれも、その<構造>という点に関しては共通だったからである(ザマ〜)。
聖書に関しても、神様の言った言葉(テキスト)を無視して<構造>を見出せてしまう点において、キリスト教社会たるヨーロッパ社会に同様の衝撃が走る(本当にザマ〜)。
 
 人間個人個人にも<構造>があると言った人がフロイトであり、彼の場合は個人レベルにおける
構造主義者である(岸田秀は、その個人レベルの<構造>は、社会全体にも当てはめることができると言っている)。 インセスト・タブー(近親相姦の禁止)に関して、レヴィ・ストロースは社会成立の必然(女性交換の際の必然)にその起源を見出し、その過程にややインチキ臭さがあるので、
僕としては岸田理論の「幼児の性欲存在説」のほうに共感を覚えてしまうのだが、岸田論とは違っても、そこから社会の<構造>を見出したレヴィ・ストロースには感心を覚えてしまう(岸田秀のインセスト・タブー論を確認するために『哺育器の中の大人』を読み返してみたら、ちゃんとレヴィ・ストロースの名前が出ており、やや嬉しくなった)。
 
 ということで『はじめての構造主義』はおすすめだ。内容もさるものながら、橋爪大三郎の本の構成がまた憎たらしい。第1章、第2章では構造主義の成立過程のみ(音韻論、語学、人類学の説明など)
が書かれているだけで、構造主義そのものの内容は分からないままになっている。第3章に入っても数学について論じられているだけで、構造主義の具体的なイメージが湧かない。
このまま本が終わってしまうのではない読者の不安が最高潮になったところで、「それらをレヴィ・ストロースにつなげると」という文章が始まり、「要するに構造主義とは・・・」
という大まとめに入って、第3章の最後の数ページで一気に構造主義のイメージがつくり上げられてしまう。
音韻論、言語学、人類学、数学の諸説明が最後のまとめですべて構造主義の概要に結びつくのである。
多くの読者はその構成に感動を覚えることであろう。
 

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