堀井On-Line



475, ある老女の遺書−1

2002年08月02日(金)



この文は「心に残るとっておきの話」第五集
に乗っていた話で、そのまま写し書きしてみる。

ー老人ホームで孤独に死んでいったある老女のロッカーの中から
見つかった詩、書き置きです。

「何がわかっているのです!看護婦さん、あなたは何わかっているの?
さほど賢くもない年老いた気難しい女、ぼんやりとした目付きをして
行動力も緩慢で、食ものをボロボロこぼしても返事をしない。
(努力して、やってみて欲しいの!}とあなたが大声でいっても、
そんな事少しも気にかけない様子で、靴下や靴はいつもなくしたまま、
何も逆らわず、何をしようというわけでなく、長い一日を入浴と食事で
埋めている。そんなふうにあなたには思え、そんなふうにあなたは
私のことを考えているの?

もしそうなら、看護婦さん、目を開いて、私を見つめてごらん。
あなたのいうままに、あなたにしたがって食事をし、私がじっと
静かにここに座っている間に、私のことを話しましょう。
私が十歳の子供の時、父と母が一緒に暮らし、兄弟姉妹は互いに愛し合い、
十六の若い少女のときはウキウキして、もうすぐ愛する人に巡り会えることを
夢み、やがて二十歳になろうとする時、花嫁になり心は踊り、
永遠に守ると約束した誓いの言葉。
                 ー続く

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