股・戯れ言
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高血中アルコール濃度圧ガール 前編

ってもうガールって歳でもないんだけどな。
まあ山下達郎へのオマージュってことで。

3/31

沖縄全然期待してねーよ飲みに行くしか思いつかねーよと出発まで散々いろんな人に言っていたのだけれど、GO-GO'sの「ヴァケーション」を聴きまくったりしてイメージトレーニングしてました、実は。
あ、ヴァケーションじゃなくてちゃんと仕事なんですけどね。

昼間までに仕事をこなして、羽田に急ぐ。
♪なめらかーなー白い砂は〜
などと高気圧ガールを歌っておきながら、乗ったのはANAではなくJALなのね。なぜなら!俺は絶対!JALスイカ派ですから。(やや嘘、熊本から帰ってきたときはANAだった)

それにしても出張なんで沖縄までの航空代は正規料金なんだが、その金額が!

往復70000円!

たけーよ!
自腹じゃ絶対出せねえよ!

タイ往復航空券プラス宿つきでも7万より安いだろう。まあ、経費なので別にいいんだけど。でも立替しんどい。
飛行機の中ではみうらじゅんの「Love」を読んでいたのだがひとりでゲラゲラ笑う箇所多すぎ。午後3時過ぎの、比較的空いた便ではあったがスチュワーデスに怪訝な顔をされた。

軽く寝ているうちに飛行機が着陸態勢に入り、雲の切れ間に海が見えたと思ったら、
目の前に大きな島が浮かんでいたのでした。

これが沖縄か!
君はこんな体をしていたのか!(「失楽園」の時の古谷一行風)

あいにくの曇り空であったため、海のきれいさは上空からはわからなかったが、それでも海の上に浮く南国の島を目にした途端、こーれーはいいところに来たなぁと心が躍ってしまったのだった。
飛行機から降りるとむあん、として南国の空気がまとわりつく。
わー空気がぬるい!東京に比べて遥かに蒸し暑い!ジャケットとか着てきて失敗!

那覇着後はホテルに荷物を置いて、すぐにお客さんと合流。
お客さんはこの蒸し暑い中、ちゃんとスーツを着てたのだった。えらいなぁ。めちゃくちゃ暑そうだったけど。
私より先に那覇入りしていたお客さんは、すでに「いい感じの飲み屋があるあたりはチェックしといたから」とのこと。さすが酒飲みのアスリート!
というわけでお客さんに連れられ、その界隈(観光客用ではない飲み屋が並んでいた)を散策し、「ここよさそうじゃないですか」と決めて入った店は
「回」という店であった。
何も調べないで入ったけど、人気のある店なんだな、こうして見ると。
とにかくお客さんと「当たりでしたね!」と喜ぶ。

沖縄行く前に沖縄出張経験済みの方々から
「沖縄は料理が飽きるよ!とくに魚がうまくないからね」
と言われていたのだけれど、
なんの衒いもなく「刺身が食べたいんですけど」と頼み、
出していただいた赤マチ、シチューマチは見事な白身魚、というか鯛で、あっさりしていて美味でした。歯ごたえもよかったし。
とにかくどこに行ったって、白身魚しか食べない女なんだぜ!
(the WHO風に言えばエニウェイ・エニハウ・エニホエア白身魚女。ってこう書くと半漁人みたいだな。楳図かずおの漫画に出てきそうだ)

料理もさることながら、私はこの日「那覇に飲みに来た」わけですから当然泡盛を飲みました。
泡盛を口にするまで、どんなに私の中で「泡盛に対する偏見」がうずまいていたことか!
酔ってベロベロになって、声がでかくなって、いらんことを言い過ぎて、翌日の胃の気持ち悪さと頭痛と吐き気と腹痛、そして自己嫌悪の津波が押し寄せてくるという地獄絵図が・・・
って、地獄絵図のわりには1ヶ月に一回くらいそんなことやってるわけだが。
しかし、郷に入れば郷に従え。今までだってそうしてきたじゃないか。
日本酒だって山形でンマイのを飲んで魔の水と思わなくなったじゃないか。

つうわけでレッツトライ泡盛。
最初はお店の人に勧めてもらった「宮の華」をば。

とにかく泡盛=度数が高いという頭しかなかったので
一杯飲めば雷に打たれたように一気に酔っ払うんではないかとヒヤヒヤしていたんだが(今までいろんな酒を飲んできてそんな風になったことは一度もなかったっつうのに、ものすごい思い込み)

飲んでみる。

ひょうきん族の「ひょうきん懺悔室」のように、酒の神が目の前で手を交差してバッテンが出て、水がドバーっと落ちてくるような衝撃を受けるものだとばかり思っておりました。

が、実際には、酒の神が手でマルを作ってくれたかのようだった。
まろやかでポワーン。
なんて飲みやすいのでしょう。
香りもきつくなくて、あたかも水のように感じる。
神の光が差したかのように穏やかな気分となったのだった。
ああ、私は泡盛に全速力で謝らなければならんね。
水のようにするりと喉を駆け抜けると、まろやか、穏やか、のちに愉快になるのだから。

そんな風に陽気に愉快になったらもう泡盛を飲む手を止められない。
お客さんと次々に飲む。飲むたびにするりと体を駆け抜ける泡盛は、まるで沖縄という島を駆け抜ける爽やかなブリーズ(大瀧詠一風)のようだ。
仕事の話もさておき、酒好きのお客さんですから、話す話題は酒ばかり。
「お酒の味の表現方法に乏しいのが悔しい」
と私が漏らしたのだけれども(上記までの表現を見てもおわかりだろう。単にボキャブラリーの欠陥なんだろうが)、ワイン通のお客さんによると
「ワインと言うのは大体〜系と味(匂い?)が分類されてね、泥系とかスパイス系とかあるんだよ。で、その表現をどう自分なりにアレンジするのかなんだよね」
ということらしい。
そうなのか、納得だ。ちなみにお客さんの最上級のほめ方さZOKKON、な香り表現は「小学校の時、校庭で転んで口元についた泥の香り」らしい。
私も精進することにしよう。

と、そんな話をしていた私の目に飛び込んできた貼り紙が
「本日の泡盛 かねやま古酒20年」
というものだった。
20年物の古酒かーこいつはめでてぇな、と気軽に眺めていたのだけれど
値段を見てたまげました。

一杯 3400円

一杯なのかよ!一本じゃないのかよ!
「いやぁ、あれすごいっすね」と感心しているとお客さんが
「せっかくだから飲んでみようよ、ワイン一本買ったと思えば安いもんだよ」
と陽気に誘ってくるではないか。
ディス・イズ・酒飲みの発想!
が、私は根が「安物買いの銭失い」な人間なので怖気づく。
一杯3400円×1=一杯700円×約5杯などと換算している自分がにくい。
しかし先に注文したお客さんが一口飲んで「たのんじゃえ!」と言った瞬間、自分の中の「せっかく来たんだからいいじゃねーか贅沢しても」性分に火が点いてしまい、頼んでしまいました。

目の前に出てきたグラスの中には、わずかな量のかねやま古酒が。

手がブルブル震える。
高い酒なので、ロックにすることすら勿体ない。無論ストレートである。
震える手で口元にグラスを傾けると、もう、「年季」「熟成」としか言い様のない香りが鼻孔を突く。香りにも地層のようなものがあるんだろうか。年輪のようなものがあるんだろうか。さっきまで飲んでいた3年ものや5年ものの古酒の香りを何重にも重ねたような、高らかな香りが吹き抜けているのである。
先ほども書いたけれども、普通の泡盛はそんなに香りがきつくないように感じたから、尚更だ。いや、それは氷を入れて冷えていたからなんだろうか?日本酒がそうであるように、泡盛も常温のほうが香りが花開くんだろうに。
重厚な香りに導かれて、液体そのものに自分の粘膜が触れる。

舌に触れたわずかな量の液体が
ズシンと響く。
なんちゅー高密度の酒なんだ。

そして舌からじわじわと痺れていくのだった。
なんちゅー甘美な痺れなんだ。

体の奥のほうへと流れていった後に残るのは、
火照りと満たされた感であった。
口腔がまろやかさに包まれる。


口の中で見事な打ち上げ花火が咲いたのかと思った。


「酒は百薬の長」と言う言葉があるが、かねやまは傷口に吹きかけたら一発で治るような酒でもあった。
いやぁ、飲んでおいてよかった。渋らなくてよかった。
しかもその店では結局お客さんが奢ってくれたのだった。
本当にありがとうございました!



かねやま古酒に完全に気分をよくしてしまったので、2軒目行きましょーということに。
もう2軒目といえば、そりゃ藤村さんに紹介してもらった「観覧車」しかねェ!
もうこの時点でかなりのヨッパだったので、場所もうろ覚えだったんだが、国際通りを歩きに歩いてここらへんじゃねえかな、と適当に歩いていたらなんとか辿り着いた。
小さなバーでした。
しかし!
もう入った途端に「ああ、那覇でいい店を発見してしまった!きっとこの先しばらく通うようになるんだろう」ということに気づいてしまったような気がする、
直感で。
おそるべし「ちょっと飲みに行きたいからといって地方まで行って飲んでしまう人種」(=俺)の直感!
へべれけな状態で「電氣菩薩を飲みに来たんですよぉ」と告げるとママさんがあらまー!と感心しながら出してくれました。

沖縄で岩手の最高大吟醸に再会するなんて!
2000マイルどころではない。
日本って素敵な国だなぁ。

電気菩薩を飲むのは、思えば1月初めに喜久盛の蔵にまでお邪魔して、樽から直接飲ませていただいた(関係者以外で世界初!)以来なのだった。
あ、違ったわ、酒田に行った時にお土産で持ってって、日本海の海の幸を堪能しながら飲んだわ。
電気菩薩も日本を股にかけるお酒だなぁホント。

那覇で飲む電気菩薩は、東北の雪の中で飲んだときと同じように、一口目の東北男児のマッチョなアルコールっぷりがズギャンと打ちつける衝撃(それこそエレクトリックショック!)ののちに、ライスフルーティーな香りとふくらみが広がって全身を幸福感が包み込むのだった。それこそ菩薩のまなざしの如し。
日本のどこに行ったって、電気菩薩は絶対的普遍なのである。
でも、やっぱり雪深い中で飲む電気菩薩とはちょっと違ったかな。
東北でストイックに向き合うよりは、精神をアッパーな方向に導くためのリラックス酒という心持ちで飲んだからかもしれない。(東北でもアッパーに飲んでたけど)
菩薩さんも南国の陽気の中でアロハでも着てるんじゃねえか。
お客さんも「おもしろいお酒だね」と言っていた。

電気菩薩でつかのまの日本酒気分を取り戻した後は再び泡盛。
瑞泉を飲ませてもらったんだが、私はよくわからなかったが、どうやらそれはニューヨークボトルというやつで、そこからお客さんの華々しいお話が。
でもそういうのをサラっと言うのがこのお客さんの素晴らしい所以である。
それくらいから俺、泥酔。
ママさんに貰った名刺を忘れて帰るという失態。
でもしっかりと「明日も来るからね!」と告げたのだけど。通いつめることだけは忘れない、だって直感が働いた店なのだから。

3軒目はさらに泥酔でほとんど記憶ナシ。


という具合に結局、泡盛飲もうが、日本酒飲もうが、焼酎飲もうが失敗するのである。
飲み方が悪いんだ、飲み方が。
いや、飲むと調子に乗るという性質が悪いんだな、たぶん。


次回に続く
2005年04月12日(火)

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