泥沼

2004年06月30日(水)

汝、殺すなかれ

今日は特別講義があった。
夏休み前に…と妊娠中絶の…。
イヤだなあ、そういうつながりか…。
でも、これを聞いてうちの子達が守られてくれれ良いばいいなあと心から思うね。
うちのガッコの子だけじゃないどんな子もね。
効能がいかほどか、そういうタイプの友達は居ないので実際どうなのかわからないのは残念だ。

あ、お前偉そうだけどどうなんだと？
うん、まったく心配ないな。
夏休み中、ずっとバイトか家でひきこもりのどっちか。
行くとしたら図書館か本屋。ある意味不健全か…。
ほっといてくれ！
長崎行くのはやめた。せっかく溜めた貯金がパーになるからだ。
いつかする一人暮らしのために、お金はあったほうがいいからな。
とりあえず５０万は…。少な…。すぐなくなるな。
使わなかったらもっとたまってたんだろうなあ。
たいしたことに使ってないのが、余計むなしい。
気まぐれに買った本、ＤＶＤ、ゲームの類が無駄なんだな。
無駄遣いはやめよう。

といいつつ今日は小野不由美の『黒禛(←？)の島』かってもうた。
だって『死海のほとり』読み終わっちゃったから今日は電車で読む本が無い！って焦っちゃってな。
何でもいいから買おうとな。
そしたら、鞄の中に『遠藤周作論』入っててさ。
なんか悔しかったな。
買わなきゃ良かった。
まぁいいや、封印しとこう。

突然話題変わるけど、脱線急行走行強行続行。
…愛。
「愛」という言葉から一番先に何を連想するか。
やはり、二人の人間の間における好き合うという意味での愛のことを思人が多いのでしょうか？
それどころか何より先にセックスシーンを思い浮かべる人すらいるかもしれません。
そうだなぁ、私の脳裏にパッとひらめくのは、たぶんマザーテレサの顔、あとは十字架にかけられたイエスの像。
聖母マリアと愛とは直接的には繋がらない。
あの人は激しい愛の人じゃなくてこう、憐れみ慈しむ、優しさの人ってイメージだからな。弱いんだわ。
そして困ったことに、私は(特に日本人の)男女、あるいは恋人同士の間にある「愛」を少々軽蔑しているようなのです。
自分でもそんなことは良くないことだと思うんですけど。
ドラマとか小説とかで「愛してる…」みたいな言葉や雰囲気を、なんつうか、鼻で笑ってしまうわけで。
お前は一体、愛の何を知っているつもりだ…？と。
自分だって何も知っちゃいないくせにね。
遠藤周作の作中である人物がイエスにこう語りかけます「お前は女を抱いたことも無いのに愛を語るのか」と。
私は憤慨しました。
女を抱く行為自体には愛は無い。無くてもできる行為だ。
それ自体を間と錯覚するのは愚かであり笑止千万…と
そんな風に批判しても、お互いのプラスにはならないわけで。
イエスの愛を謳う者は男女(または恋人達)の愛を重く見る者を軽蔑し、
男女(または恋人達)の愛を至上とするものは、神の愛を信じるものを馬鹿にする。
それは悲しい図式だな。
どちらかに偏らないのが一番いいと思うんだけど。
二つは消して相反するものではないし、調和するもののはずだ。
私のなかで知らないうちに変な偏見が育ってしまっていたようだ…。
しかし、軽蔑できるのは知らないから。
理解あいしたいならまずこちらが向こうを知る事からはじめよう。
恋人達にとっての愛、これから学んでいかねばならない課題の一つ。
とりあえず、『ロミオとジュリエット』から始めるか…。
あらすじは知ってるせいかやる気でないけどな。　

さて、やっとハナシがもどるわけで。
自己中心的な説教になる予定なので、人でなしに説教されたくない人は避難してください。
さようなら。

さて、特別講義。
産婦人科のＴ先生(以後Ｔ氏とする)がいらっしゃって話をしてくださった。
「泣きながら夜を過ごす人にも～傷つけられた女性の視座から見た現代人の性～」
エート、女性の視座からというより、医師の視座から、でしたな。
それに結構私情の入った講義で、少々面食らった。(私怨じみた話アリ)
こういう講師は初めてだったのである意味面白かったけどね。
話し方はあまりうまくないし、つっかえつっかえだったけれど、実際体験に即した話だったし、とてもリアリティがあった。
うちの学校は貧乏でケチで保守的だけど、こういう講義を開くところは非常に良い学校だよなあ。
みんなちゃんと聞いてたかなあ。寝てなかったかなあ、心配だ。

というわけで、取っておいたメモを元に話を再現します。
しかも忠実な再現ではなく適当に思い出しつつ捏造しつつの話になるけど。
著作権は講義にも適用されるでしょうけど、営利目的ではないので見逃していただこう。

「私の医者としての最大の危機のことを話します。
双子のお産でした。難産で、開腹手術をすることになりました。
しかし開腹してみると、子宮破裂していたのです。
大変危険な状態です、病院中の医師が集まって手伝ってくれました。
しかし、当時は血液バンクも無く、血液が間に合わなかった。
幸い朝の通勤時間だったので、病院の前で献血を募って、ナントカ一命を取り留めました。
私はこのことで、女性がなんと大きなリスクを背負って赤ちゃんを産んでいるのか、と思い知ったのです。
そしてまた、尊敬の念を抱きました。
○○(←メモ取りはぐり)はこう言っています。『生命の本質は犠牲である』
すべての命は他の命の犠牲の上に成り立っているのです。」
そう、子供を生むために女性が背負うリスクは想像を絶するものだ。
命の本質は犠牲、というのも、とて頷ける言葉である。

「一つの事例を紹介します。１６歳の女の子で、彼女はひどい鬱状態でした。
失礼な話ですが(笑い)産婦人科の間では『女性を見たら妊娠と思え』という言葉がありまして。
やはり妊娠をしておりました。
彼を呼んでみたのですが、開口一番にこう言いました。
『おたくではいくらで堕ろしてくれるんですか。』
(ここで生徒の『ひっどーい！』『サイテー！』との声が)
そこで私は聞きました『おろす？おろすってどういうことですか？』
その彼は至って率直でしたよ『殺すことです』と答えました。
女の子は泣き出しましたね。そして殺したくない、出来ることなら生みたいと言っていました。
女性はとても、命に対して直感的なのでですね。
男性よりもずっと、生命を守りたいという気持ちが強い。
(声は出さなかったけれどこの意見にはとても納得した)
モーセの十戒には『汝殺すなかれ』と書かれていますが、(おや、この人はキリスト教の人なのか)これは、殺してはならないというのではないのです。
エジプトから脱出した彼らがナントカカントカ(うろ覚え)…だから、これは「いけない」と言っているのではなく「しない」という…(うまく説明できないらしい)
…愛のメッセージなのです。
愛とは殺さないことです。」
おそらくＴ氏が言いたいのは、神が戒めたから「殺してはいけない」のではなく、もうあなた達は「殺さない」でしょう？「殺す必要は無い」でしょう？とそういう意味なのだといいたいのでしょうか。
この話はいまいちわかりにくいし、みんな意味不明だっただろうな。

「もう一つのパターンです。あるとき私を訪ねてきたこれまた１６歳の女の子が、おそらくよその病院で中絶したのでしょう──私は中絶の手術はしません──『今日は予定日なんです』と言って泣き出しました。
中絶は、それだけ、心に深い傷…トラウマを残すのです。」

「菊池ノボルという医師がいました。毎日たくさんの中絶希望者がやってきました。
なかには７ヶ月８ヶ月の胎児をおろしてくれと言う人もいたのです。
７ヶ月というと、もうすっかり人間のかたちになっています。
菊池医師は、そんな子供達をどうしても助けたいと思いました。
しかしネックがあります、当時はそういう子供を実子として届けられなかったのです。
菊池医師は、法律違反だとはわかっていながらも、２２０人(！)の赤ちゃんを救い、子供に恵まれない夫婦に斡旋をしました。
しかしそれは、法律違反ということで、菊池医師は裁判にかけられ、大変世間から叩かれたのです、マスコミの報道もそれに拍車をかけました。
産婦人科の中でも、菊池医師は村八分にされました。─この村八分と言うのは日本文化の弊害だと私は思いますね─(エタヒニン問題とかね…)
中絶される赤ちゃんを救う行為をした、菊池医師が社会の中で抹殺されたのです。
その後法律は改正され、実子として届けが出せるようになりました。
私が菊池医師と会った時─残念ながら晩年の話です─彼はとても満たされた顔をしていました。自分がやったことに誇りを持っていました…。
(彼がカトリック信者になったこと、奥さんの献身的な看護と信仰に支えられたことが語られる)
彼が亡くなる直前です。マザー・テレサが彼のしたことに感動し、手紙を送りました。
そこにはマタイの福音書の一節が書かれていました
"最も小さい人のひとりにしたことはわたしにしたことである"」
この菊池ノボルさん、検索してみたけど引っかからなかった。漢字がわかればな…。

「もうひとり、医師の話をします。
実名出しちゃまずいな、とりあえずここではF先生とします。
F先生はとても優秀な産婦人科医師で、１０００例異常のの中絶手術をしてきました。しかし彼はこう私に告白しました『業と思って割り切らなければと思うんだけれど、時々無性に自殺したくなるんだ…地下鉄のホームに何度身を投げようとしたか…。』彼はとても苦しんでいました。
しかし彼が中絶の手術をしたくないと、大学のナントカカントカ(メモしはぐり)に話したところ、その医師は中絶手術をしないなら、その地域で産婦人科医を出来ないようにすると、そう言ったのです。傷つき苦しんでいる彼に。
これが医師の側から見た妊娠中絶です。」
中絶は、医師の心にも傷を残す。考えてみたことの無い問題だった…。
そりゃそうだよな、人間だもの。

「私も、研修のためにそう…１０００人くらいの手術をしました。
毎日４件くらいです。毎日、機械的に手術をこなしていました。
そのように手術をしていたある日、私はしゅっけつがおおいことに気付きました。その妊婦は５ヶ月なのに３ヶ月だと、嘘をついていたのです。
当時は最終月経のナンタラカンタラ(なんか医学的でわからなかった)ですので、患者の証言を信じるしかなかったのです。
５ヶ月にもなると、かたちもはっきりして人間の形をしています。
しかしもう手術を始めてしまっていますから、後には引けない状態です。このままでは母体も危なくなってしまう。
そこで私は(喘ぐように、苦しそうな様子)胎児の頭を、クラッシュ(頭蓋骨を砕くと言うことだ)しなければなりませんでした。
胎児の頭はピンポン球くらいの大きさです…それを私は。
今でも、今でもその音を、いえ、そんな音が聞こえるはずは無いんですが。
胎児の頭をクラッシュする時に聞いた「カチッ」と言う音が、今も聞こえるんです。
その時に、確かに声が聞こえたのです「もうこんなことをしてはいけない」と…。(声が震えている)それ以来私は中絶の手術をするのをやめました…。」
この人はある意味逃げたのかもしれない。だけれど、誰がそれを攻められるだろう？

なんか膨大な長さになりそうだから中断。
なんというのかな、この医師が言うことが正しいわけじゃないけれど、すべては事実なんだよね。嘘は言ってない。(いや、神の声は置いといてな)
大切なのは何が正しくて間違っているかを定義づける(決め付ける)ことではなく、問題意識を持つことだと思うな。

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