泥沼
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遠藤周作のせいで「たまねぎ」という文字を見るたびあの人の事を思い出すようになってしまった。 どうしてくれるんですか先生。 今はどっぷり、あの人と遠藤周作のことばかり考えているからかもしれないけどね。
卒論、『死海のほとり』に決めた。一応。 『沈黙』以後、期間が開いて初の作品だし、「イエスの生涯」と対だと作者自身も言ってるから射程範囲が広くて大変なんだけど、それでもこれがいいなあ。 しかし、決めるのに時間かかったな…。 長編は無理だろうなって、短編にしようと決め付けてたからねえ。 前期の短編は、青年期から壮年期独特の暗さがあってねえ…。 まだ、作者自身も自分が負った傷をどうして良いかわからなかった時期なのかも。 そして、たまねぎやイエスとどう決着をつけるかも右往左往の五里霧中だったんだろうな。 それどころか、捨てようと努力している気配が感じられる。 そこが文学的には面白いのかもしれないけど。 迷っている人間に(間接的にとは言え)触れることはまだ私には出来ない。 力量不足だ。 一応の、苦しんだ末の「答え」が『死海のほとり』にはあると思った。 もちろん、「答え」とはいっても作者の人生の中ではこれもまだ、はじまりというか過渡期なのだとは思う。しかし、作者が新しく歩き出すための作品だという気がする。 その感じが好きだ。 話の内容自体は。けして明るく楽しいものではないけれど。 少なくとも私は希望を感じたし、少しだけ救われたと思う。 何より私が望んでいたかもしれない姿に最も近いイエスに出会えた。 選ぶ理由は十分かな。 『沈黙』は舞台が特殊すぎて私には受け入れがたい、理解しがたい部分が多かった気がする。 第一題名が良くないな!(笑)二字熟語の言葉ひとつだなんて、カタイ感じ。 『死海のほとり』と『深い河』はまず題名が私の好みだ。 私は題名と装丁で本を選ぶけど、大体はアタリだ。 本を選ぶ時大切なのは勘とひらめき。 読むんじゃない、感じるんだ!(ムチャいうな)
『死海のほとり』に描かれた同伴者イエス、横切るイエス。 私の人生の上も、彼は横切っていたのだ。 この世に生まれ自分のことも世界のこともまだ何も知らない、限りなく白紙に近かった私の傍を彼は横切っていった。そっと、触れて去っていった。 たったそれだけ、それだけの接触が私の人生に大きく影響したし、これからも影響するのだろう。 これが良いことなのか、悪いことなのかはわからないけれど、それは運命の出会いだったし、ひとつの小さな大きい奇跡だった。
中学生の時、宗教研修会でのシスターの言葉を思い出す。 私も含め、洗礼を受けていた生徒は皆参加しなくてはいけなかった。 私のグループは幼児洗礼、つまり親が信者のために自分も自然と信者になったグループだ。 皆、ある程度の知識は備えていたが、信仰心は(おそらく)擦り切れていた。 私はその当時、信仰心を持とうと模索していた頃だったし、まじめに参加していたけれど、ある種のけだるさや違和感は感じていた。 そんな私達にシスターは言ったのだ。 洗礼を受けた者の額には、印がついている。 旧約で弟アベルを殺したカインに付けられたのと同じ印だ。 たとえ私達が神から離れても、逃げようとしても、忘れても、 その額の印は永遠に消えることが無い。 洗礼とはそういうもなのだ、と。 あの時は意味がわからなかったし、いつもの小言くらいにしか感じていなかったけれど。 あれは、こういうことを言っていたのかな。 色々な形で、彼は人々を横切っていく。消えない跡を残して。
あー、とか語ってみて思ったが、文学研究ではなくなってしまいそうだよな。 と言うか、確実に私情が入りこみそう。 ちゃんと客観的な視点から見なくてはなあ。
でも作品が決まってホッとした。 しかしこれからが大変なのも、紛れも無い事実。 何からはじめればいいのか…。 とりあえずは、他人が書いた論文を読むことからだ。 できることならば作者の作品はすべて読んでしまいたい。 むしろすべてを熟読しておきたい。(無理だよなあ) ああ、もっと早く決めれば良かったなあ…。 つうが、学校では一度も近代文学の授業受けてないんだけど…、
論文をどこで入手したらいいかというとげっ、ゴキブリ。 うわー、自分の部屋では今年初ゴキブリだ。 ちょうど窓際だったので窓開けて吹き飛ばした。 夏来る 窓辺のゴキブリ 闇に消ゆ …ゴキブリを歌った俳句は世界初かもしれないぞ。 出来はともかく、ここは今現在、俳句会の最先端だ! あーもっと肺活量ほしいな…。
まぁ、それはともかく、日本文学の論文だったら国文学資料館。 ここの電子資料館→データベース→国文学論文目録→検索画面 で、検索できる。 貸し出しはしてないので、すべてページを指定してコピーしてもらわなくてはならない。 9時から5時までで、土日は休みなので学校の授業をサボらねばならない。 しかし善は急げ、木曜の朝一に行ってこよう。 10時半に間に合わないかもしれないけどまだ一回しか授業休んでないし大丈夫さ。
突然関係ないけど屏風歌っていうのがあってさ。 絵を見て和歌を詠むんだって。 面白いな。 和歌とか古文とかあんまり得意じゃないけど(むしろ苦手)絵つきなら楽しいなあ。
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