ある大学院生の日記

2002年03月06日(水) 税を質す?

税制,というのは,むかしはいちおー担当分野だったし,いまでも専攻領域に極めて近いので注意してみるようにはしているのだが(ほんとか?),最近,新聞で税の特集をやっているようだ.こういうひとの嘆き?にあまり与するつもりはないのだが,はなしがどうも自己中心的過ぎて,公共的な視野がかなり欠けているように思えてならない.これといった対案があるわけではないのでえらそうなことはいえないのだが.

ああいった新聞マスコミが税について書くときには,最近では経済活力を伸ばす税制,という言い方をすることが多いとおもう.所得税の最高税率が高い,法人税率の実効税率は低くなったけど他の国々が引き下げをしているなかでは相対的に高くなっている,株式関連の税金が高い,といったもの.どちらもたしかにウソではないのだろうとおもう.昨日あたりの記事によれば,また,記事の根拠が尊敬する先輩のものだったのでこれもほんとうだろうとおもうが,所得税の課税最低限もじつはそれほど国際的にみて高いものではない,ということだ.いっぽうで,財政赤字の累増についても警鐘が鳴らされているようだ.

さて,財政赤字を減らすということが必要だとすれば(少なくとも増やさないことは不可欠だろうが),支出を減らすか,収入を増やすしかない.もちろん,財政の効率化を通じて,同じ政策的効果を少ない支出で達成することは必要だが,おそらく,現在の日本の財政はそれだけで対処できる状況ではない.増税は不可避だ.その手法・時期などにはいくらも検討の余地があるが.ところで,所得税が高い(少なくとも低くはない),法人税も高い,となると,どこで増税せよというのだろうか?土地をはじめとする資産課税や,相続税の引き上げもこのましくないらしい.では消費税(付加価値税)なのか?あるいは支出税なのか?

支出税はその実行可能性が乏しいらしいというのをどこかで読んだ記憶がある.では,消費税(付加価値税)か?しかし,消費税は,実質的な所得を減らすから,単純に考えれば所得税とほぼ同じ効果を持つ.むしろ,逆進性を持つために公平性に望ましくないとさえされている.公平性が問題なんじゃないか,と思うかもしれないが,それは所得税の修正によって対処したほうがわかりやすいようにおもえる.課税最低限は引き下げませんが消費税は上げますよ,というのは所得税を引き上げるのと同じなのではないか?ひとりひとりの事情を勘案できる分,所得税のほうが望ましいのではないだろうか?もちろん捕捉の問題はあるから,所得税だけにする,というのは現実論として難しいだろうけど.

やっぱり,消費税を引き上げるしかないよなあ,というふうに世論を誘導しているのか?

あ,そうか.

所得は消費に比べて変動が激しい,というか,消費は平滑化される傾向が強い(マイクロな話)からか.累進課税制度で,年度の所得に課税するという方式を採っている限り,一度にどーんと稼ぐヒトのほうが,おんなじような所得を稼ぎ続けるヒトよりも,生涯所得が同じだとすれば,納める税金は高くなってしまう.これは不公平だが,消費を課税対象にすればこういう問題はかなり解決される.なるほど.能力主義(?)給与体系が浸透するなか,所得の変動が大きくなるヒトが多くなるから,累進課税制度のこういう問題点が大きくなってしまうのか.なるほどなあ.

って,そんなに深い話なのか? むむむ.


 << past  Index  will >>


べべべ [MAIL] [HOMEPAGE]