そろそろかなあ、と覚悟はしていたが、ついに始まった。娘が初潮を迎えたのだ。
女の子を産んだ、と言うことで、女に生まれたことを誇らしく思えるように、と将来来るであろうその日をあれこれ思い描いてはいたものの、具体的な対応については何ら思い浮かばず、そう言った教育についても学校任せ、自らは説明をするでもなく今日に至ってしまった。
昔は赤飯を炊き、お祝いをしたものだが、自分がそうされて嬉しかった、と言う話はあまり聞かない。居心地の悪さばかりが強調され、いい思い出ではない、と言う話をよく聞く。
「昔は大人になったお祝い、ってことでお赤飯炊いたんだけど、どうする?」
と娘本人に聞くと、
「別にいいよ」
と言う。
生理そのものを特別視することがそもそもおかしいのだ。ならば、とあたしは特に何のお祝いをするでもなく、トイレトレーニングでトイレの使い方を教えるのと同じように、生理用品の使い方を説明するにとどめた。
帰宅した夫に、こっそりと報告すると、夫はなぜだか泣きそうな顔をしている。
「なに泣いてるのよ?」
半ばあきれて言うと、
「・・・何となく」
まあ、何となく分からないでもない。ナントナク、ね。
こうして身体は大人になった娘だが、都合のいいときだけ子どもになる。
大人同士の会話に割り込んできて、対等に話しているかと思えば、こちらがあきれるくらい幼い面を覗かせる。
あたしは、と言えば、そんな娘を見て、何かひとつ肩の荷を降ろしたような、心強い同士を得たような、嬉しい気持ちと、これから先、女同士として、あたしの立ち居振舞いに付いてますますチェックが厳しくなっていくであろうことを思い、ちょっぴり戦々恐々としているのだ。
あたしのマイは非通知です。