奥さんが倒れて入院し、その間2週間休んでいたマネージャーが今日から復帰した。
「うららさん!どうもいろいろご迷惑おかけしまして!」
はつらつとした第一声とは裏腹に、やつれきったその顔には疲労が見られる。
「奥様どうなんですか?」
聞くのがはばかられるが、聞かないのも不自然なので尋ねた。
「胃潰瘍からの出血がひどくて、内視鏡で手術をしたんだけど、あまりにも出血したものだから貧血がひどくてね、輸血もしたんだけど、あれもあんまり身体にはよくないでしょう?輸血して検査すると、ちっとも貧血が改善されてなくて、やっぱり食べないとダメなんだね。昨日からやっと重湯が食べられるようになって、まあ、少しはよくなったかな、と。それでもまだ病院にはいるんですけどね」
何でも2週間毎日病院に泊まっていたらしい。その間、一人息子のために家事をこなし、コンビニ弁当ばかりでは身体によくないだろうと弁当作りまでしたらしい。
もともと人望の厚い彼の復帰は店中の注目の的で、行く先々で、
「今日からいらしたんですって?よかったねえ」
と声をかけられる。
2週間の間の彼の奮闘振りはますます彼の株をあげることになった。
役職についているにも関わらず、2週間も仕事を休み、付きっ切りで看病し、息子のために食事まで作った、と言う話はあっという間に広まり、
「まるでアメリカの旦那様みたい」
と賞賛されるほどだ。
常日頃遊び歩いてばかりいて、奥さんの悪口ばかり言っているのに、いざと言うときはやるんだね、と長年付き合いのある同僚も褒めちぎっていた。
比べてはいけないけれど、他のパートの主婦達含め、みんな考えることはひとつ、
「私が倒れたら夫はそこまでしてくれるかしら」
と言うのは言わずもがな、であります。
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