日々雑感
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2003年06月17日(火) その場所の匂い

『あたしのマブイ見ませんでしたか』池上永一(角川文庫)読む。短編集。

著者の出身地である沖縄を舞台にした作品が特によい。オバァたち、サトウキビの森、スコール、うら寂しい歓楽街、自分を取り巻くものたちを描きつつ、あるかなきかの境界線から垣間見える底なしの原色の世界。

読後感がなぜか長嶋有の『猛スピードで母は』に似ている。ふたりとも一作ずつしか読んでいないので、この二作が似ているというべきか。作風も書き手としての佇まいもたぶん全然違うのだけれども、ふたつの作品の底に、一方は沖縄、一方は北海道の海辺の街と、その「土地」の空気が濃く沈殿しているところが共通しているのかもしれない。そして、その空気が生々しくもどこかあっけらかんとしているところ。

本格的に梅雨。会う人会う人、皆、湿気バテ。


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