日々雑感
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| 2003年03月19日(水) |
「戦場のピアニスト」 |
渋谷にて映画「戦場のピアニスト」。ナチス時代のホロコーストを扱った映画は観ていて辛くなる。ずっと迷っていたのだが、上映が今週いっぱいと聞き、思い切って映画館へ。
ナチス占領下のワルシャワを生き抜いた、ユダヤ人ピアニストの物語。実話に基づいているからかもしれないが、街の空気がだんだんと変わっていく感じや、ユダヤの人びとが理不尽に虐げられてゆく様が、まるでドキュメンタリーフィルムのように淡々と映し出される。
車椅子の老人はナチス兵によって窓から放り投げられる。何かのはけ口のように、殴られ、銃で撃たれる。大事なものも住み慣れた家も、何かもかもから離され、追い立てられてゆく。寄り添っていた家族は収容所へと向かう貨物列車の中ではぐれてしまい、必死に名前を呼んでも、もう届かない。
身動きもできないような思いになる。けれども、それは「どうしてナチス兵はこんなことができるのか」という憤りではなく、「人間はこんなふうに残酷になり得るのだ」という恐ろしさである。ある特殊な状況に置かれたとして、自分が誰かに対して残酷な態度をとらないとどうして言えるだろう。ナチス兵、ユダヤの人びと、その中にあってあるいはナチスに抵抗し、あるいは強いほうに従ったポーランドの人々、どの立場にも自分はなり得る。きっと、その差はほんのわずかだ。時代とか、何か大きな力とか、そういった狂気に巻き込まれずに「ふみとどまる」ために必要なものはいったい何か。
廃墟に響くショパンがあまりにもきれいで、たまらなくなる。
「戦場のピアニスト」公式ページ
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