日々雑感
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| 2003年03月02日(日) |
おかしくて、かなしい |
昨日は市内の合唱サークルの演奏会にお手伝いとして参加。50代から70代の女性ばかりが集まった市民サークルなのだが、10周年ということで大きなホールを借りて演奏会をすることになったのだ。
とにかくいろんなことが起こって、舞台裏を描いたコメディ映画が1本とれそうな勢い。団員を尻目に、舞台中央にてソロで歌いまくる指揮者(衣装替えの回数数えきれず)。好き勝手に動き回り、話を聞かない女の集団にぐったりした表情の舞台監督。助っ人としてやってきた別の町の合唱団は楽屋に弁当やらお菓子やらを大量に持ち込み、誰かやってくると「ほら、食べなさい」「これも食べなさい」といって、赤飯やらみかんやら漬け物やらを山と積む。
「かしましい」などというものではなかったが、本番前の舞台袖では皆表情が変わる。会場は大入り。裸足で現れてあわてて靴を取りに走る人など、幕の裏は相変わらず大騒ぎなのだが、皆の気持ちがだんだんと高揚して、ひとつにまとまってゆくのがわかる。音楽を演奏するときに訪れる至福の瞬間。
フィナーレ近く、宝塚風の衣装をまとった団員たちが(ちゃんと男役までいる)、皆して「すみれの花咲くころ」を歌う。スポットライトに照らされたその背中を舞台袖から眺めつつ、なぜだか涙が出そうになった。それぞれ、今の生活やこれまでの日々を抱えながら、このステージの上、真剣に、それでも抑えようもなく嬉しさをにじませながら皆歌っている。演奏会後、どんな思いでこの瞬間を思い出すだろう。おかしくて、かなしい、そんな劇の一幕を見ているような思いになる。
あとから聞いたところによると、終了後の打ち上げは大盛況だったらしい。家族や友人から贈られた花束を抱えて、「まるでスターになったみたい」と頬を上気させていたという。指揮者の先生は挨拶をしながら泣いた。最後は皆で声を合わせて、好きな歌を歌った。
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