市内の本屋を何軒か回って、棚の片隅に一冊だけ隠れていた『人類最古の哲学』中沢新一(講談社選書メチエ)をやっと見つける。ずっと探していたのだ。地元では、ある本がほしいと思い立ったとき、すぐに手にするのは難しい。実際に店頭で探すのとネットで注文するのはやっぱり違う。「東京の良さ」として確信をもって挙げられるのは3つ、「本屋」「CD屋」「映画館」の充実ぶりだ。夕方、田んぼの中の一本道を通る。道の両側に広がるいちめんの稲穂も、遠くに横たわる山も、風に揺れる木々も、日が暮れて同じ夜の色となる。西の空に月。満月にはもう少しだが、それでもずいぶんと大きくて明るい月だ。ただ見渡す限りの稲穂と空だけの風景の中、月を眺めていると、今自分がいる表層の部分とは別の遥かな流れがそこにあることを思う。「地元の良さ」として確信をもって挙げられること。宇宙へと開く回路を見つけやすい。