日々雑感
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朝から胃が痛い。悪いものでも食べたか。
バイオリンを弾く男性の写真が載ったポスターを見かける。「アン・ビクトル写真展 百年の記憶」とある。茫々とした草はらに古びた家、その前でバイオリンを手にした男性の背中。モノクロのその写真が気になって、行ってみることにする。
写真展には「旧ソ連に生きる高麗人の運命と希望の物語」とサブタイトルがついている。スターリンの時代にロシア極東から中央アジアへと強制的に移住させられ、現在もそこで暮らす高麗人(コリョサラム)の生活を、自身も「高麗人」としてウズベキスタンに生まれたアン・ビクトルが追った写真が並ぶ。
自分たちの「故郷」であるはずのウラジオストックを歩いたときのアン・ビクトルの言葉。「故郷を訪ねた。けれども、そこはもう故郷ではなく異郷となっていた」。
人にとって故郷とは何か。自ら望んで旅立つのではなく、また、はじめから存在しないというわけでもなく、強制的に「故郷」を奪われる意味とは何か。あるいは、離れてこそ、幻の「故郷」が肥大してゆくのか。
アン・ビクトルが撮影したモノクロの写真には、人々の生活が映っている。仕事をする人、ひとつの部屋に集まって談笑する家族、楽器を持つ人、ダンスする人。淡々とした日々の営み。その何でもなさが、ずんとくる。見入ってしまう。
夜、胃はまだ痛むが、夕飯はしっかり食べる。ただし晩酌はなし。
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