日々雑感
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2002年05月01日(水) 5月の夜に

夕方、アパートの下の部屋から歌声が聞こえてくる。好きなのか仕事なのか、下に住む人はよく歌っている。低くキーボードの音もする。今日のこの曲、何という名前だったろう。知っているはずなのに思い出せない。だんだんと暮れてゆく夕方の路地に歌声が響く。もどかしく思いながら、その声を聞く。

夜、近所を散歩する。昼間よりも緑の匂いが強いような気がする。

近所のお寺の前を通る。入り口近くに石柱が二本建っているのだが、その片方に猫が座っている。背筋を伸ばして、目を閉じて、シーサーの片割れのようだ。近寄って頭をなでても動かない。嫌がりも、喜びもしない。その場を離れてしばらく歩き、振り返ってみても、まだそのまま。瞑想中か。

家々の窓から明かりがもれる。誰かの声がする。その中をひとり、うろうろ歩く。金魚屋の店先、亀の水槽を前に立ち止まる。水槽の中には小さなミドリガメが二匹。どちらもじっとしたまま動かない。水槽を指でたたいてもピクリともしない。こっちも瞑想中か。猫も亀も、もしかしたら人も、皆、物思いに沈む5月の夜。


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