Opportunity knocks
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2005年12月31日(土) ふりかえって

瞬く間に一年が終わった。
指の間からこぼれおちる砂のように、時間は容赦なくすり抜けていくのだなあと、いつもながら内省してしまうそんな年の暮れ。


今年読んだ小説ベスト

「河岸忘日抄」 堀江敏幸

今年一年読んだ本の中でどの本がいちばん強く頭に残ったかと考えたときに、やはり最初に浮かんできた。
無駄の無い、完成度の高い小説だなと思う。こういうものを今わたしはもとめているんだなあということをおぼろげながら感じた小説。これからも堀江さんの小説注目して読んでいきたい。


「体の贈り物」  レベッカ・ブラウン

とても率直な文章だな、と読みながら思った。淡々と書いているのだけど、それがかえって強烈なリアリティを与えている。読後、死ということについて考えさせられ、同時に生きるということについても考えさせられた。そして人と人との関わりについても。とても心に残る小説だった。


「行人」  夏目漱石

万能ではない世の中、万能ではない”自分”に対していつも苛立ち、苦悩し葛藤する、そういう雰囲気を読むたびに感じる。


「Xのアーチ」  スティーヴ・エリクソン

最初の読み始めはとても最後まで読みとおせないなんて思っていたのだけど、思ったより入り込むことができた気がする。


「東京奇譚集」  村上春樹

久しぶりの短編集。村上氏の小説は10代の頃から読んでいるだけに自分にとっては慣れ親しんだ世界というか、よく見知っている世界という感覚があるのだけど、この短編集に関してはそういういつもどおりの心地良さみたいなもののほかに、自分が知らないまた別の部分を垣間見させてくれたような、そんな新鮮さがあった気がする。その新鮮な部分を今度は長編で感じさせてくれるとうれしい。


「九龍塘の恋」  ポール・セロー

浮遊感。夢をみているような、そんな心地良い幻想。それでいて、背景には厳しい現実がちゃんとあって、そういうものに目を背けて生きる主人公が対比されている。


「世界のすべての七月」  ティム・オブライエン

どうしてかはわからないけど読んだ後何かが残った。おぼろげな残像というか、淡い感情のなごりというか。誰もが過去の記憶を糧にしてやっと生きていて、そんな人の生がいとおしく思えるような、そんな気がした。


「夏の家、その後」  ユーディット・ヘルマン

ドイツ人短編作家。どの短編も良かったけれど、いちばん好きなのはやはり「紅珊瑚」かな。負荷のかからない、さらりとした文体なのだけど、書かれていることは決して軽くない。とても良い短編集だった。


「夜と霧」  V・E・フランクル

著者はホロコーストの最中にあって、人間の尊厳を失わずに生き残った数少ない歴史の証人。極限におかれた人間の心理を感傷をさしはさむことなく淡々と克明に書いている。悪意に満ちた人間の所業は心を暗くさせるけど、その中にあっても人は自分を見失うことなく真摯に生きることができるのだと、そういう光明みたいなものを感じることができた。読んで良かった。


「ゆっくりさよならをとなえる」  川上弘美

どうしてこの人の書く文章がすきなのだろう、とよく考える。理由がよくわからないのに好きという、わたしにとってはよくわからない作家。でもたぶんひかれ続けるんだろうな。





今年観た映画ベスト

小説の方はすぐ決まったのだけど映画の方はなかなか決まらず。平均的におしなべて良かったといえばそう。
別の言い方をすれば抜きん出たものが(あくまでわたし的に)なかったということだろうか。


「マシニスト」  ブラッド・アンダーソン

やはりあの映像は忘れられない。それに、最後までぐいぐいとひっぱられる展開やセンスの良さなど、最後まで余計なことを考えず入りこめた気がする。とても良かった。


「あの子を探して」  チャン・イーモウ

見終わってからじわじわと長く余韻が残った。とても良い映画。中国らしいといえば中国らしいちょっとなあと思うようなところも隠すことなくあるがまま撮っていて、そういう自然な(作っていない)ところも気に入った。


「トニー滝谷」  市川 準

自分の頭の中で思い描いていた世界が実際に映像となって現れたわけで、そういう意味でも特別な映画。たくさんの服が並んだクローゼットの中で涙を流す場面が今でも頭に浮かぶ。


「ネバーランド」

人と人との出会いとか、つながりとか、お互いに教えられ影響されあうこととか、
そういうのって素晴らしいことなんだなあとしみじみ思った。


「コーヒー&シガレッツ」  ジム・ジャームッシュ

コーヒーと煙草、どちらもわたしには縁が無いものだけど、それをとりまく雰囲気を実際に映画でみて、どちらも人の生活に密着に繋がっているものなんだなということを感じた。そういうものを映像にしたセンスの良さ。素晴らしかったです。


「バッド・エデュケーション」  ペドロ・アルモドバル

相変わらずのセンスの良さ、抜群のバランス感覚、アルモドバルの映画でがっかりしたことは今まで一度もない。言うことなし。
ガエル・ガルシア・ベルナルはどんどん良い役者になっていくなあ。


「Ray」  テイラー・ハックフォード

20代はじめからずっとR・チャールズの歌を聴いてきたのだけど、この映画をみて、今まで想像しなかった彼の一面をみることができたような気がする。歌はただの歌詞の羅列ではなく、その人が持っている歴史のすべてなのだとあらためてそう思った。 


「幸せになるためのイタリア語講座」  ロネ・シェルフィグ

イタリア語を習うために集まった人達がとにかく個性的。いかにもヨーロッパ産の映画というようなそんな雰囲気がただよっている。
人の気持って定規ではかったようにはいかなくて、それでやきもきしたり辛い思いをしたりするわけだけど、それがほんとうに切なくていとおしくて、だからこそ優しい気持ちになったりするのかもしれないなと、そんなことをおもった。


「ミリオンダラー・ベイビー」

自分を守るということは、実は難しいことなのかもしれないと見ていて思った。
傷つくとわかっていても、それをやらずにはいられない、そういうときってあるから。心が痛くなる映画だった。



「スイミング・プール」  フランソワ・オゾン

どうもこういう雰囲気にわけもなくひかれてしまうらしい。台詞や舞台だけではなく、空気ごと映画にしてしまったような、不思議な雰囲気のある映画。



こんな感じです。
音楽、演劇、展覧会は挙げるほど観たり聴いたりしていないので、もう少し進展するように来年は心がけるつもり。
来年はどんな映画や小説に出会えるだろうか。今からとても楽しみ。

ではでは 良いお年をおむかえください。
そして来年もよろしくお願いします。












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