TOI,TOI,TOI!


2008年01月05日(土) 移民予備軍として

日記を書く暇がないほど忙しいというわけではないのですが、
どうも最近さぼりぎみで。

手短に近況報告。
試用期間の終点が見えてきました。
2月に決定する模様。

年末に、家の犬が死んだと連絡があり、
ちょっと頭がそれでいっぱいな感じです毎日。
何年も家に帰ってなくて、就職までしちゃって、
ドイツに馴染もうと日本人の心も誇りも捨てて、
それでいいんだと思いこんで毎日生活してるけど、
こういうときにずしっと重みのあるパンチをくらう感じ。
忘れられた祖国からのカウンターパンチ。

全部自分の中でのことなんですがね。
いわゆる移民になろうとしているということによって、
なにかどっかにひずみとか見えないところにたくさん出来てきて、
外人としての差別されることからのガードとして、
日本的であるというすべてのことを避けるように、
見て見ぬフリをするように生活しているのかもなと。
眼に見えるほどの大きなものではないけど、
時間がたったらやっぱり無理したとこが目立ってくるのかなと。
いや移住・移民ということ自体そもそも不自然なのじゃないの?と。

移民ってなんだ?
ゲルマン民族も大移動したし、
アメリカ人なんて北も南もみんな移民だよ?

ブラジルで日系の人たちが話すのを聞いたとき、すごく興味深いなと思った。
彼らは100年前ぐらいだっけからブラジルに移ってきて、
100年前って明治維新からそんなに経ってないよ。
で、日本語も日本家庭では話されてたと思うけど、
そのまんま100年ってわけはなく、やっぱり変化したわけで、
日本で話されてる日本語とはちょっと違うのだ。

例を出せばきりがない。
たとえば、学校で南米系の人と南欧系の人がポルトガル系言語でしゃべってる。お互いに理解は問題なく出来るけど話し方はだいぶ違うらしい。
あと、カナダのケベックというフランス系移民の街の出身の人って、ネイティブが英語とフランス語らしい。フランス出身の団員がその人とフランス語で話してたので、あとからそのフランス人にすごいねーおもしろいねーと言ったら、理解はできるけど話し方はずいぶん違うので、強い方言のようなもので、聞き取るのに努力しないと分からない時もあると。

今の若者言葉なんて、私今日本に帰っても全然理解できないだろうしな。たったの6年でこれだもの。

今更後に引く気はないし、
どっか歪んでいても、無理をしてるとしても、
ここに残って音楽を続けたいという思いは変わらない。
ただ、無我夢中で6年間やってきたことで得たことと、
それと引き換えに失ったこともあるのかもしれないと、
自分の力だけで今ここでこうしているわけではないと、
そういうことを考える時期が来ているのかもしれない。

山根美代子先生の訃報は最近になってやっと聞いた。
彼女なしには私は今フランクフルトにいない。
今から7年以上前。
レッスンの時に、先生にドイツで誰かいい先生を知りませんかと聞いた。そのときは「今の世代の人たちは知らないわねー。」と言われたのだが、それから考えていてくれたらしくしばらくして携帯(!)に先生から電話。そこで生まれて初めてForchertの名前を聞いた。
屋外で風が強くて、全然分からなくてつづりを何度も言ってもらった。

あるレッスンの時に先生はゴールドベルクのベートーベンのソナタのバイオリン譜をどっさりコピーして持ってきてくれた。
すごい量だった。コピーするだけでもすごい時間がかかったはず。

そんなことをたくさん思い出した。
よくしてもらったのになんとも恩知らずだった。
せめて年賀状でも出しておけばよかった。
自分のことばっかり考えていた。
これからのことばっかり考えていた。

そんなことを思う2008年の始まり。
2007年は無我夢中でラストスパートを突っ走ってゴールした年。
2008年は、その中で忘れていたことを思い出す年にしたい。


  
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