skajaの日記
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小池真理子『欲望』を読んだ。 たまたま何かの映画を見ようと思って、映画館を調べたら映画版の『欲望』が上映中で、流れでトレイラー広告を見て、ちょっと気になっていたの。(結局映画は何も見なかった。) 先日、本屋で時間を潰している時に急に思い出して、原作の文庫本を購入。
筋については特に書きませんが、とても静かで美しくて悲しい物語でした。エピソードとしてはけっこう激しい部分もあったんだけど、なぜか「静か」と感じたのね。凛として。それは映画の宣伝を見たときも思ったんだけど。映画版もそんな感じだったらいいな。 主人公やその他の登場人物に強く共感するでもなく(主人公類子の職業には興味があったけど)、憧れるわけでもなく、三島由紀夫が好きなわけでも、時代背景が懐かしいわけでもないのにすっと馴染んだのは何故だろう。 なんというか、私は「欠乏感を抱えながら生きる」人の話が好きだな。「沢山のものを持っているけど何だか満たされない」ではなく、肉体的あるいは精神的に決定的に「欠けている」と感じている人間の話が。それも度が過ぎると逆に自己陶酔みたいに感じてうんざりなのだが。 それは「自分も決定的に欠けている部分がある」と感じながら生きているせいだと思うけど。世間一般に「普通」と思われているのに、どうしてもできないことがある。「普通」と考えられているのは知ってはいるけど、自分がそれに当てはまるとは思えない。ああそうか、自分はその部分が「欠けている」「ちょっといびつな」人間なんだな、と。普段はそんなことは意識せずに朗らかに生きているし、劣等感も感じないんだけど(だって自分はそういう人間でしたありようがないのだから)、やっぱりちょっとしたひっかかりはあるの。 だから「何かが欠けている」と感じながら生きる人には妙に安心する。親近感を持ってしまう。そう、共感しないけど親近感は持つんだな。
そんなわけで、久々に素敵な本をにめぐり合ったと思いました。ああ、この屈託の無いシンプルな表現。でも「この本好き」としか表現しようがないよなぁ。映画も見たいです。
skaja

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