逗子発・おさんぽ日和
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 『萬狂言−夏公演−』

和泉流狂言:野村萬家一門の夏の本公演を観に出かけた。
2001年1月から年4回ペースで行われている萬狂言の本公演。私は今年の冬・春公演に都合で行くことが出来なかったので、昨年10月以来の本公演鑑賞となった。狂言自体を観るのも4ヶ月ぶりのこと。

今回の夏公演は一門の若手狂言師(今年で31歳):野村晶人さんの襲名披露公演も兼ねたちょっと特別なものになっていた。伝統芸能の世界とは切り離せない襲名という制度。この野村萬家一門では2000年春に筆頭の野村万蔵師が萬を襲名したことを含め一挙に4人が襲名し、観ている側も戸惑ってしまった。しかも今まで慣れ親しんだ名前が変わることは、ファンにとってはおめでたいことだとわかっていても寂しいものでもある。今回の晶人さんの場合も本名である「あきひと」から「扇丞(せんじょう)」と言ういかめしく重々しい名前に変わるので、しばらくは慣れないだろう。ちなみに当主:万之丞さんは2005年1月に8世万蔵を襲名する。

今日はその晶人改め扇丞さんが『金岡(かなおか)』という曲で襲名披露をした。250番程ある狂言の曲の中でも、「一人前の狂言師として認められる為の曲」(『釣狐』)とか、「ある程度の経験を積んだ狂言師が必ず挑戦する曲」(『花子』)など特別な曲があり、この『金岡』もそんな曲の一つ。そういう特別曲のシテ(主役)を初めて勤めることを「○○を披く(ひらく)」と言い、重く扱っている。
正確には今回の扇丞さんの場合は故郷:石川県金沢の地で5月に『金岡』を初演し披きを終えてしまった為、再演という感じなのだけれど・・・。

「絵師である夫の金岡(シテ)が家を空けたまま戻らず京の街を狂い歩いていると聞いた妻が心配して夫を探しに出かける。やっと見つけた夫にその訳を聞くと「絵を描きに出かけた宮中で見かけた美しい女中が忘れられずこのようになってしまった」という。それを聞いた妻は「女は化粧次第でいくらでも変わるもの。得意の腕を振るって私の顔をその女中のように彩ってみては?」と勧めるが、所詮そう上手くいくはずもなく、途中で夫は絵筆を放り出し妻を突き飛ばしてしまい、怒った妻に追いかけられる」という、何とも狂言らしいおおらかな内容のこの『金岡』。

実際に妻役の役者さんの顔に筆で白や紅の絵の具で彩色をするのが視覚的に面白く、また珍しい曲。小歌を謡いながらもの狂おしい恋心などをうまく表現しなければならない難しさなどが重い曲のゆえんで、これが上手いと惚れちゃうくらい格好良く見える。今日の扇丞さんも(*^^*) 

この曲以外にも、人間国宝である萬師の至芸を見ることが出来た『伯母ヶ酒』や、大人数でにぎやかに繰り広げられる『髭櫓(ひげやぐら)』など、なかなか密度の濃い狂言会だった。でも最近この本公演で大好きな万禄さまがシテをやることがないのがかなり寂しい。いっそのこと彼の現本拠地である福岡まで行きたいくらい・・・。

次回の秋公演は10月。この公演では特別曲の中でも秘曲の『釣狐』を、一門のお弟子さんである小笠原匡さんが披くことになる(実際は5月に彼の現本拠地:大阪で初演しているのだけれど)。小笠原さんも大好きな狂言師さんなので今からとても楽しみだ。

素敵な舞台の後はビールが本当に美味しいです♪

−−−過去の今日のこと−−−

2003年07月19日(土)

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