| 2006年09月17日(日) |
『おなかがすいたね(仮題)』 |
えーと…そのー…。 ごめんなさい。できごころです。
こんばんは、でもですね。あのですね。すっごく楽しかったです。もえぎです。 気分転換のつもりだったのですよ。 そしたら外来語なしのこういう文体書くの久し振りで、やたら楽しくて。 あれよあれよとうきうきおもしろ気分で書いてましたら、こうなりました。 勢いです。あとノリです。それと前田家と上杉軍への愛です。 まさかBASARAで書こうとは。この二者がなければありえなかったでしょう。 ノリと勢いだけで書いているので、まだまだ描写不足とか多々ですが。 『楽しんで書けた』という点においては最近では珍しいほど高得点です。 ああ。楽しかった。そして少しすっきりしました。 わけわからん方向で癒してくれたBASARAにこっそりの感謝を込めて。 BASARAな短文、アホ話でどん。
『おなかがすいたね(仮題)』(戦国BASARA2。まつたけ忍法帖その後)
迷子の果てに、松茸巡る激戦終えて日が暮れて。おなかもすいたし夜になったしで、全国食材探し行脚の旅に出ている前田軍は、春日山城に一夜の宿をお世話になることとなりました。ついさっきまでわあわあ合戦状態にあったわりに、なんともなごやかな話の流れではありますが、どちらの陣営も特に気にはしていないようです。上杉側が鷹揚なのか前田側がのんびり屋なのか、悩むところですが、恐らくは両方です。 干戈を交えたにも拘らず、それぞれの軍の殿同士は、膝を突き合わせて談笑しておりますし、そのうつくしきつるぎや奥方さまは厨でてきぱきと働いておられます。どうやら松茸やら宿のお礼やらを兼ねて、まつが夕餉の支度に腕をふるっているようです。つるぎはどうやら指示されたわけではなく、自らの意志でお手伝いを買って出た模様。厨には普段沢山の端女が忙しく立ち働いておりますが、この宵ばかりはまつの独壇場です。けれど仕事を奪われて、まつを憎々しく思うものはおりませんでした。あんなにも凛呼とした美しい奥方に、『今宵、夕餉はまつめがこしらえますゆえ、皆様はごゆるりとお過ごしくださいませ』などと丁寧に、嫣然と微笑まれては、逆らえるわけがないのです。 それに。今、厨にいなくてすむことを、端女たちはこっそり感謝したいくらいでした。なにせこの夜は、どういうわけだか、当主たる謙信その人が、厨の土間をあがってすぐの囲炉裏に、ゆったりと陣取っているのですから。 何とも不思議な雰囲気をお持ちである上杉家の当主さま。その独特の美しさは、家中のものであっても、なかなかに近付きがたいものであります。やんごとなさすぎてどきどきしてしまうのです。そのような方が、物珍しげにかまどやらくどやらを眺めながら、よその国の殿さまと親しげに話をしておられるのです。どうやら、前田の殿さまはいつも奥方さまがお料理されるのを間近でわくわくしながら見ておられるそうで、この夜もその習慣に従ったようです。上杉殿も一緒にどうかと誘われて、何やら楽しそうだとでも感じられたのでしょう。えんりょなくと微笑まれ、共に料理が出来上がるのを、すぐ側で待つこととなりました。謙信さまに見つめられながら、端女たちは仕事などできるわけがなく、皿を割ったり鍋を焦がしたりして動揺してしまうのが目に見えています。誰も敢えて口には出しませんでしたが、彼女らは心の奥でひたすら前田の奥方さまに感謝していたのでした。 とまれこうまれ。そんな夜の、ごはんのおはなし。
「なるほど…しょくざいをもとめて、とうほんせいそうしておられるのか」 「ああ。今頃家では、慶次が腹を空かして待っておるはずなのだ」 「おやおや。けいじにはこくなことですね」 顔なじみである若き風来坊が、へにゃりと倒れてしまっているのではと想像し、謙信はくすりと淡い笑みを浮かべました。そんな謙信の反応に、もしも自分がご飯を待ちわびている慶次の立場ならば、とでも考えたのでしょう。利家は一瞬甥っ子に対し申し訳なさそうな顔をしましたが、それも一瞬のことでした。 「待つのならば、せっかくなのだし、究極に美味い食材を持って帰ってやった方が慶次も喜ぶだろう。まあ、まつの飯は何でも美味いのだが!」 「ふふ。あいかわらずうるわしきこと」 太陽のごとく、にっかと晴れやかに笑う客人に、ついつい口の端を緩めてしまいます。血の繋がりはないとはいえ、この底抜けに明るい叔父と甥は実によく似ています。共にあると、相手の警戒をすんなりと解いて、快い春めいた心地にさせてしまうのです。寒い寒いこの地において、時折ひょこりと遊びに来ては、途端に桜でも舞うように華やかな空気をもたらす慶次の存在は、何とも心楽しく喜ばしいものでありました。 最近は、厳しい叔母に捕まって、なかなか前田領から出てこられないのでしょう。めっきり顔を見せません。北の地は、そろそろ長い冬を迎えます。一旦雪に道を閉ざされてしまえば、なかなかやってくることもできなくなります。その前にもう一度会っておきたいものだと思い、そんな願いがつい口をついて出てしまいました。 「かがへもどられましたら、けいじに、またかすがやまへくるようにとおつたえください」 「勿論!こころえ…」 「なりませぬ!!」 言伝を快く了承しようとした利家の回答を遮ったのが何なのか、最早言うまでもありません。つい先程まで、熱心にかすがへお料理を教えていたはずの、まつの声でありました。さも楽しげに、ややおぼつかない手つきのくのいちを助けてやっていたといいますのに、またも甥っ子がふらふらしてしまいそうな言伝を受けるわけにはならないと、全力で阻止を試みたようです。 「犬千代さま。漸く慶次を連れ帰ることかないましたのに、遊びに行くことを奨励しては元も子もありませぬ」 「う…あー…はい」 理路整然と返されて、反論することもできません。殿は一瞬忘れておいででしたが、前田夫妻が甥を連れ戻すのに散々苦労させられたのは、まだまだ記憶に新しいところでしたから。夫の言葉に満足したのか、良妻はにっこり微笑むと、お料理の支度に戻りました。『松茸の石突を取ってはなりませぬよ』『そ、そうなのか?』『はい。栄養たっぷりな上、香りの元にござりますれば』『…生えているのは、沢山見かけるのだが。食べようとしたことがないんだ』『まあなんと!もったいないことにござりまする』などなど。わいわいと賑やかに会話を繰り広げながら。 その側で、こそこそと殿二人は声を抑えてちょっぴりだけ相談しておりました。 (……ことづてはこんなんなようですね) (う、上杉殿。某、こっそりまつに内緒で言っておくから) (あなや。それはよろこばしきこと。びしゃもんてんのごかごのありますよう、いのっておきます) (毘沙門天がまつに勝ってくれれば良いのだが…)
やんごとなき殿御らの秘密会議は、ふいに漂ってきたかぐわしい香りによって打ち切られることとなりました。甥の教育に関して、愛妻にきっぱりと叱られ、ややしょげていた風だった利家が、急激に元気一杯になります。目を輝かせて、蓋を開けられほくほくと湯気をあげている大釜へ視線を飛ばしました。 「松茸ご飯だ!」 「はい。最北端で頂いたお米と、上杉殿から頂いた松茸で作った、炊きたてでござりまする!」 歓喜の声を受けて、作った側のまつも楽しそうに笑顔で答えます。大きなしゃもじで丼に山のように盛ってゆくまつの手元を、びっくりした様子でつるぎは見ていますが、前田の殿はこの大きさが標準であるようです。かすがはおそるおそる主の椀によそうと、他の料理と共に、まつと並んで持って行きました。 それぞれの主の傍らに腰を落ち着けると、ゆっくりとした、穏やかな談笑が始まります。まつお手製松茸の土瓶蒸しを、酌でもするようにかすがは謙信の差し出したお猪口に注いでゆきます。その際、何を言うでもなく、ただ見つめてくれている主君の様子に、彼女は天にも昇る幸せ心地で陶然とするのでした。更に『よくまえだどののおくがたをたすけていましたね』などとねぎらいの言葉などかけられてしまえば、雪白の頬はあっという間に薔薇色に染まります。ついでに周囲の空気も薔薇が咲き誇ります。そんな主とくのいちをよそに、戦国最強夫婦の名を欲しいままにしている万年新婚夫婦は、よその国だろうがなんだろうがお構いなしに仲良く寄り添いあっているのです。勿論笑顔を忘れずに。 何ともなごやかで、且つあまったるい雰囲気にむせ返りそうな夕餉に、誰もが大満足であったのですけれど。あることが謙信には物足りなく感じられました。さて、いいだすべきかいなかと迷っていると、他愛のない会話の中で、ぴょこんと利家の零したある一言が、切っ掛けとなりました。見ていて胸がすくほど、全身全霊で美味しそうに松茸ご飯を頬張っていた前田の殿が、ほっぺについていたご飯粒を奥方に取ってもらいながら発した言葉でした。 「松茸ご飯も美味いが、某やっぱり松茸料理は焼き松茸が一番好きだ!」 「ほほう、それはまた…なんともしゅこうによさそうですね」 酒豪で知られる軍神が、にこりと呟きました。確かに、このように素晴らしい食事に舌鼓を打つことができるのは僥倖ですが、そうなるとやはり欲しくなるのが酔いというもの。せっかく他国の殿と会って話す機会を得られたのですから、共に盃を交わしたくなるのは当然のことでもあります。まあ。ただ飲みたいだけ、というのもありましょうが。 酔いを欲していたのは謙信だけではなく、利家も同様のようでした。二人は共犯者めいて視線を交わし、結託して朱塗りの大盃を求めようとしました。 「まつー!上杉殿もご所望のようだし、焼き松茸を頼むー!」 「つるぎよ。たるをあけてきてはくれませんか。それと、わたくしのさかずきをふたりぶん」 至極ご機嫌なお願いに対するお言葉は。
「なりませぬ!!」 「いけません!!」 ものの見事な撃墜でございました。綺麗に重なった、賢妻と美神の声音は、まるであらかじめ打ち合わせでもしていたようにぴったりでした。まさかこうも揃ってだめだと言われるなんて、軍神の才知でさえも予期できなかった様子です。二人のびっくりしてきょとんとなっている殿へともたらされた言い分は、実に的を射たものでありました。 「これ以上松茸を使っては、慶次のぶんがなくなってしまいまする!」 「謙信さま、あまりお酒を召されるとお体に毒です…!」 かたや甥への思いやり。かたや殿への思いやり。こうも心のこもった意見を受けては、殿たちも己の主張を通すわけにもいきません。特に、忠実な忍ときたら、万が一主君の体に何かあったらと、考えただけで恐ろしくなってしまったのでしょう。うっすら涙さえ浮かべて懇願してくるのですから、流石の謙信もやや慌ててしまいます。 「あなたさまが倒れられたら、かすがは、かすがは……!」 「ああ。わたくしのうつくしきつるぎよ、わかりました。こよい、さけはひかえましょう」 「謙信さま……!!」 「ですから、なくのはもうおよしなさい。おまえのなみだもうつくしいが、なによりもうつくしいそのひとみをくもらせてはなりません」 「ああ、ああぁぁぁ……!」 ひたり、と隙間なく寄り添いあってはまたも満開の薔薇に包まれている主従の隣では。 「犬千代さまはいつも慶次に甘いですのに、まさかお忘れになるだなんて」 「うーむ。何せ某はまつの飯ならいくらでも食えてしまうからなあ。つい」 「ふふ。まつはうれしゅうございます」 「帰ったら、皆で一緒にたらふく食おう!」 「はい、犬千代さま。心得ましてござりまする」 「全員揃って食べるのも幸せだが、まつと二人で食べるのも幸せだー!」 などと。向かい合ってはにっこりとして。こっちもこっちで相当に百花繚乱でございました。
薔薇やら桜やら。とにかく花が咲き乱れて。夕餉は美味しく。空気は甘く。酒はなくとも雰囲気だけで酔ってしまいそうな、春日山の幸福な夜は、こうして過ぎてゆくのでございました。 戦国の世に満ち溢れる天下無双な恋の嵐に、びしゃもんてんのかごぞある。
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