| 2005年04月05日(火) |
『合言葉と9体のふたご』 |
今日から攻殻セカンドの地上波放送がはじまりなのですねえ。 まあ、首都圏のみしかうつらないので(多分)関係無いあたりが切なすぎますが。わーん。
こんばんわ、そのお祝いというわけでもないのですけれど。もえぎです。 懲りもせずにまた攻殻話書いてますよこの人。しかもタチコマしか出てませんし。 流石に九機全部書くのは大変でした。書き分けが……! セカンド十五話の『機械たちの午後』の後のお話のつもりです。 理系でないのでタチコマンズの構造とか全然分かってないあたりどうしようもないですが。 それにしても櫻井さんシナリオのこの破壊力はどういうことでしょう。 わたしがこんなに攻殻に傾いてしまっているのも、ひとえにこの方の影響。 櫻井さんの書かれる脚本のことごとくがわたしにとっておっそろしくツボなのです。 女性的…とまでは言いませんが、中性的な印象を受けます。 機械やアンドロイドといった、生命のない存在、それに女の子や女性。 そういった人たちの描き方がとても繊細で、見ていて快く。 且つ戦闘シーンや謎解き、そういうときのどきどき感は計り知れません。 心底からどきどきするのです。苦しいくらい、どきどきするのです。 ああでも特に女の子の描き方の快さときたら……! 男の人独特の、自己顕示感がないのです。 嫌味の無い可愛らしさとか、美しさ。そういった描き方がべらぼうにお上手なのです。 それに―…うん。とっても、やさしい。やさしい書き方なので、すっかり、うれしい。
徐々に、わたしは、戻ってきている? 下書きなしの構想練った上で叩きつけて三時間くらいで完成しました。 集中力は戻ってきているようですね。けれどわたしもそうかはちょっと不明。 吐き気とか、頭痛とか。気分の悪さはなかなか消えてはくれませんけれども。 これさえ現実逃避の果ての、愚かな所業なのやもしれませんけれど。 わたしはゆっくり、こうするしかないようなのです。
それにしても月曜に病院で処方されたおくすり群に今更ちょっとめげそうです。 むしろ泣きそうです。わたしこなぐすりがアホほど苦手ですのに。 渡された三種類のおくすりのうち二つがこなぐすりだなんて!(涙) 一個は良いのですよ。ええ。量もそんなに多くないので、カプセルにうつしかえてます。 しかし問題なのはもう一個。 量がやったら多いうえにとんでもなく苦いときたものです。 余りの多さに、カプセルうつしかえるのが嫌になりました。あきらめました。 でもだからといってこのままではとてものむことが出来ません。 水に溶かして一気飲みというのも試してみたのですが、余りの苦さに一口目で挫折。 ワガママといわれようとも苦いのは嫌。というか駄目。 ゆえに、わたしは奥の手に訴えました。 小さい頃からこなぐすり嫌いなわたしのため、母が考案した手段。 こなぐすり・イン・アイスクリーム! 急いで近所でアイスを買ってきて、スプーンにひとさじ、すくいます。 そのアイスの上に、さらさらこなぐすりを乗せます。更にその上を、アイスで蓋をします。 で。そのまま口の中へ。 昔っからこなぐすりはこれで対処していました。 まさか大人になってもこのままだとは思いませんでした(笑)
しかし敵もさるもの。一筋縄ではいきませんでした。 本気で量が多いのですこのこなぐすり。 ひとさじひとさじ手間と度胸がいるこの方法では、えらく時間がかかりまして。数十分程。 口の中が冷たくきーんとしてきても、まだまだ残っている有り様で。 結局嫌になったわたしは、力技に出ました。 こなぐすりを一包み、コップにあけます。 そこにカルピスの原液をどっぽどっぽ注ぎます。注ぎまくります。 すると次に、ほんのちょっとだけお湯を入れたら掻き混ぜます。 特濃カルピスこなぐすり入りが完成したら、息を止めて一気飲み。 ―…現在この方法を採用しています。 これなら苦さは克服出来ますから。ある程度までは。健康に悪そうですけれど。 うう、こうでもしなければあの苦さは消えてくれないのです。 もしこれでも駄目なら、ここへはちみつを投入するところでした。 けれど、この方法は自分の部屋でないと用いることが出来ません。 お出かけした際、外でご飯を食べるとき。三食食後に飲むおくすり。 これをどう対処したら……まさかカルピス原液持ち歩くわけにもいきませんし。 最後の手段は「おくすりのめたね」ですが、流石にそれはどうかと思います。 いくらわたしでもあれに頼るわけには……!(笑) そんなこんなで強引に拍手のお返事にうつらせて頂きます。
>三月十七日 ・0時の方 今日の日付がいつだか声を大にして言ってごらんなさいもえぎさん。 も…申し訳ありません……。最早平伏してお詫びを申し上げるしか。 と、申しますか。まさか攻殻話に反応が頂けるとは思いもしませんでして。 お返事が遅れ倒したことはひたすらお詫びするよりないのですけれど。 あんな趣味に走ったお話を、楽しんで頂けたのならとても嬉しいです。 ちょっと照れ気味なスナイパーを想像して頂けたらと思います(笑)
>四月五日 ・一時の方 ……ありがとうございます。 自分でも、昨日の日記は書いてからこれどうなんだと思いましたけれど。 お客様を不快にさせてしまう可能性がとても高かったものですから。 でも。書かずにはいられなかったのです。もう我慢が出来なかったのです。 サイトを閉めるかどうかをもう少し考え続けようと思います。 おずおず伸ばす指は、それでもやはりまだ伸ばされているのです。
『合言葉と9体のふたご』(攻殻機動隊。タチコマ全機集合!)
電子の歌もさやさやと。滑り流れて零れ落ち。 きゃわきゃわ賑やか機械の子らの、はてさて今日の議題はなあに?
『う〜〜〜〜ん…』 公安9課のハンガーで、一機のタチコマが腕組みをして何やら考え込んでいる。しかも音声出力装置を用いて外部にもたらされる彼の声は、大層むつかしげに漏れ出るようなもので。その姿に、そしてその声に。つまりは彼の発す情報を、好奇心の権化たるタチコマたちはいち早く感知し、次々とわらわら集まり始めた。 『なに、なに〜?どうしたの?』 『そんなアナクロな思考体勢取っちゃってさ。その姿勢を維持することにより、お前が現在直面しているであろう問題を解決する速度が速まるとは、とても思えないんだけどな』 『そうだねぇ』 『いつもの「しょくーん!」ってのはどうしたんだよ』 『ねえねえ、なあに〜?』 瞬く間に、ハンガーの一角が青い機体で埋まってゆく。先の、考え込んでいるタチコマの周囲に全てのタチコマが集結し、どうしたどうしたと騒ぎ立てる。合計九機。一機であっても賑やかしいタチコマであるというのに、全機が一箇所で喋り始めるのだから、そのやかましさといったらただごとではない。 しかしこんな光景は日常茶飯事で。彼らのメンテナンスを担当している鑑識たちも、最早叱る気力さえないらしく、ラボの向こう側で作業をしながら盛大な溜め息をつくのが精一杯だった。 ただ遠く、一声聞こえてくるのは、プロトのよく通る声で。『余りうるさくしすぎてはいけないよ』というのだけだった。それにタチコマたちは、『はあーい!』と元気に手さえ振りながら答えるのだった。 さてさて。そんなこんなで。最初のタチコマがゆっくりと腕組みをほどきはじめて。
『うぅーん…』 『そのうなり声はもう聞いたよ』 『僕らはその不可解なうめきの原因の開示を要求するー!』 『そうだ、そうだ』 『早く話してよう。その気がないなら、早く並列化させてよう』 『……あのね』 盛んに騒ぎ立てられながらも沈黙を守っていた件のタチコマが、遂に重々しく口を開いた。彼に口はないのだけれど、口を開いた。ぽつりと放たれた鏑矢に、あれほどやいやい言っていた八機のタチコマがぴたりと黙る。漸く明かされようとする秘密の正体に、誰もが聞き耳を立てているのだ。彼らに耳なんてありはしないのだけれど。 暫し、もじもじとマニピュレーターを落ち着かなさげに絡ませていたタチコマは、ゆっくりと語り始めた。 『僕、この間バトーさんたちとスプリング8に行ってきたでしょ』 『あ〜!きみだけメンテが済んでて、連れてって貰えたあのときかあ』 『その言い方には語弊があるね。あの後、全員並列化されたんだから、ある意味において、僕らは全員スプリング8に行ったことになるよ』 『しぃーっ。話の腰折らないの。せっかく話し始めてくれたんだから、その辺りは目を瞑ってがまんがまんっ』 『でも、僕らのアイボールセンサーに瞼なんてないよぅ?』 『だから話の腰折るなって。で、それから?』 『うん。それでね』
バトー専用機であるタチコマは、促されて更に話を続ける。赴いたスプリング8で起こった爆発事件、すぐさま判明する犯人。空港で抵抗もなく、あっけなく確保された対象をティルトローターで護送したこと。その場にいるタチコマの誰もが、並列化されたため知っている事件のことを軽く説明して。 実際に事件に関わったタチコマであるタチコマな彼は、ここまで語ると溜め息一つし、苦悶の影を振り払うかのようにして、アイボールをくるりと大きく一回転させた。 『この事件。この事件の後から、どうも僕の中で処理出来ずに沈殿してく、ある一つの単語があるんだ』 『別にたいした事件じゃなかったろう?きみのチェーンガンはおろか、バトーさんや少佐のセブロも、トグサくんのマテバさえ、一発も使われてないんだし』 『弾丸の補充記録ないもんね。改ざんの形跡もなーしっ』 『で?で?その単語って?』 『うーん…それはね』 清冽な電子の流れ。決して間違うことのない完璧な数字の羅列。けれど、その。煩悶の只中にあるタチコマが、またも悩み深げにくるりと動かしたアイボールの彼方。彼自身にも、どうにも感知出来ない何かが、ニューロチップの何処かでぱしん、と一つ爆ぜたような。
『「おとうさん」』
『お父さんん〜〜?』 『御父さん。明治末期の国定教科書に使われて以後広まった語。子供が親しみと敬意を込めて父親を呼ぶ語。子供以外の者が子供の立場でその父親を指して言うことがある』 『御父様。主屋にいるからの称。父の尊敬語。宮中、宮家、公家で用いる。「御孟様」「御申様」の字を用いた。おもうさん』 『dad。親愛の情を込めた呼び方で、特に口語ではfatherよりもよく使われる。家庭の中で父親を指すとき、または呼びかけののときは、通例無冠詞で、書くときは大文字で始める。父親が子供との会話で自分を指して使うこともある。パパ、おやじ。小児語にはdaddyがあり…』 『あああ違う違う!そういう字引的な意味合いじゃないんだ!』 最初にお父さんと呟いたタチコマが、頭を抱えて今にも地団駄踏みかねない様子で激しくかぶりを振る。それと同時にアイボールもぐりゅんぐりゅん苛立たしそうに動くと、さももどかしげに続ける。 『そんな情報なんて僕もとっくに検索したさ!言葉の持つ意味を多角的な視野で分析、解読を試みたよ!でもそんなんじゃないんだ、そんなんじゃ、この何ともいえない模糊とした…霧と靄がないまぜになったような感覚を振り払うことが出来ないんだ!』 『あのう、もしかしたら、なんだけどう』 またもがやがや賑やかしくなってきた場を、それこそ水を打ったように静まり返らせるささやかな声が小さく響いた。急に周りの中止を一身に浴びて、少し後ずさりしそうになりながらも、何とかそれを押しとどめて、言う。 『それは、その情報が僕らにとって不必要と判断されて、削除されちゃったからじゃあないかなあ』 おそるおそるの意見に寄せられた反応は、とても彼らが並列化を義務づけられている機械とは思えないほど、多種多様なものだった。
『ばっかだなあ!削除されちゃってる項目に、どうして気付いたりするのさ』 『該当データがないってことは知らないってことだもんね』 『じゃあ消去漏れってこと?わあ、鑑識の人たちの職務怠慢だ〜』 『きみのバグってのが一番妥当だと思うけど。個性の裏返しだねえ』 『でも待って。あの事件の犯人って…誰か覚えてる?』 またも。しん、と。静まり返る。暫く誰もが沈黙し、その間誰もが己の思考をフルに稼動させた。0と1からなる彼らは存在したときから論理的な存在。なのに誰もが、ずっと目の前にあった矛盾に気付かずにいた。 『そういえば…無事解決した、他愛もない事件なのに』 『中心にいるべき犯人のデータが存在しないよ?』 『どうしてこんなに単純な欠落に気付かなかったんだろう』 『削除されていたから』 『でも削除されているのなら何故気付いたんだ?』 『もしかしたらその情報に「おとうさん」って単語が何らかの形で連関しているのかしらん…』 『データの残滓みたいなものなのかなあ』 『直接的には結びつかないけれど、かといって無関係とは言えないものとして』 『―…ああ。でも。でも、確かにそれがこの感覚の根源的発端なのだろうけれど』 吐息のように言葉を漏らすと、最初のタチコマが天を仰ぐ。それはかつて、彼が、とてもとても大切な人を護ろうとしたとき、神様に祈ったときのようだった。 『あの後、9課に帰ってきたとき、バトーさんが言ったんだ。僕に向けてじゃない。小さく呟いたのを、僕が音拾っただけで。でも、こう言ったんだ』 そのときの様子を再現する。酷く、沈鬱な面持ちで、一体誰に向けて思った言葉なのか、彼にはよく分からなかったけれども。重々しく、強い、決意みたいなものをまとった低い声は誓いめいて。 『「あんたが戻って来れるまで、俺がこいつらの『お父さん』だ」』 格納庫に繋がれて、次々とセンサーをオフにされてゆく中で。彼の思考はかろうじてその声を捉え、そして同時に腕をそっと優しく撫でられることで、ニューロチップで何かの撃鉄が起こされた。
『……調べてみよう?』 『そうだね。いくら、僕らにとって不要な情報だからって、削除されたからって』 『僕らがもう一度その情報を探して、学習しちゃえば良いんだよ』 『また消されちゃうかもしれないけど……』 『本当に不必要な情報なら、もっと徹底的に削除されてあるべきものだもんね』 『こんなに明確な疑問点を、僕らが見過ごすわけないじゃない〜』 『もしかしたら少佐が、僕らが気付くように、わざと情報の残滓をおいといてくれたんじゃあ…』 『ようし!じゃあ皆で調べてみよう!』 『お〜!』 『ね。ね。でもさ』 勝ち鬨めいた声をあげ、文字通り一体となって士気を高めていたタチコマたちの中で、ふと一機があることに気付いて悪戯っぽい声を出した。それは今にもわくわく、くすくすしたものが零れ落ちそうに、うきうきとしたものだった。 『バトーさんが僕らの「お父さん」って、何やらうずうず嬉しい感じしない?』 一斉検索がかけられかけていたスプリング8の事件のことは、この一言により、暫し、吹き飛んでしまった。
『バトーさんがお父さんっ?バトーさんが僕らのお父さんっ!』 『音も似てるよね、バトーさんとお父さんって!』 『そういう有機的な表現って余り趣味じゃあないんだけど…この込み上げてくる陶然としたものはなんだろう』 『じゃあ僕らバトーさんの息子なんだね!仮に僕らの性別を男としたら!』 『わあいじゃあじゃあ、バトーさんとキャッチボールしたりするんだあ!』 『トグサくんにも自慢出来るよー!えっへん!』 『九機いるんだもん、野球チームが作れるよ!』 『大家族だー!』 『あれえ?でも…「お父さん」がいるってことは……その対となる「お母さん」は?』 ふいに投げかけられた疑問に、その場が瞬間的に凍りつく。水を打ったのを通り越して、刹那的絶対零度がもたらされる。賑やかに、やかましく熱を帯びて盛り上がっていた計画の数々を瞬時に停止させるほど、その提起が与えた影響は底知れなかった。 タチコマたちはとても優秀。だからすぐさま、答えをはじき出した。誰も口には出して言えないけれど。とても言えないけれど。『お父さん』がバトーさんなら、『お父さん』の対義語たる『お母さん』の位置に存在すべきなのは。そんなの、公安9課における唯一の女性を考えたら。 氷の冷厳さ。鋼のしなやかさ。そしてその中にあるほのかな優しさを宿す、けれども勿論とびきり厳しいスパルタ必至の『お母さん』ときたら――辿り着いた答えを述べる勇気を持ち合わせているタチコマは生憎そこにはいなかった。 厳しく優しく厳しいママのことには、敢えて誰も触れないようにして。何かに追い立てられるかのようにタチコマたちは次々と堰を切ったように喋り始める。 それを現実逃避と誰も気付かない。 『ば、バトーさんがお父さんなら課長はおじいちゃんだねえ!』 『そ、そだね!肩たたきとかするんだよね!で、盆栽壊したりするんだ!』 『んと、え、えと。じゃあサイトーさんはおにいちゃんがいいなあ!』 『バトーさんの連れ子なんだねきっと!』 『イシカワさんは近所のおじちゃんで、ボーマくんは保父さんかな!』 『トグサくんとこからはよく肉じゃがのお裾分けとか貰うんだよね!』 『え〜と、え〜と…パズさんわあ……』 『プロトくんはいとこだかはとこだかなんかなんだよ!』 『そ、そういうことなんだね、うん!』 この後も、強迫観念に突き動かされたであろうタチコマたちのご近所付き合い予想図は延々続いたが、遂に余りのやかましさのため鑑識たちによって全機が格納庫に収められた。これにて事態は収拾がついた。けれど。最初のタチコマだけは。 思考を情報に沈める前に、くるり、ともう一度、アイボールを動かして、遥かを見上げた。彼のAIが漂っているであろう、遠い宇宙に思いを馳せて。腕に残る、微か過ぎるやさしいぬくもりを、そっと傍らに。 『きっと…また、みつけだすね。……おとうさん』
因みに後日。タチコマたちの間で、『誰が最初に少佐へ向かって「お母さん」と言うことが出来るか大会』という度胸試しが繰り広げられたというのは、ここだけのお話。
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